ジュースで1.85倍、アルコールで2.51倍:飲料と痛風との関係を調べた大規模疫学調査

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痛風といえば、「ビールをはじめとしたアルコールの飲み過ぎ」や「肉類や魚介類などのプリン体の摂り過ぎ」が原因であると長年考えられてきました。

   

しかし、清涼飲料水などに広く使用されている果糖ブドウ糖液糖の過剰な摂取もまた、アルコールに匹敵する強力な痛風のリスク要因であることが近年の研究で明らかになっています。

  

今回紹介する研究は、ハーバード大学をはじめとする研究グループによって発表された、大規模な前向きコホート研究です。

 

この研究は、大規模な対象者を長期間追跡調査した信頼性の高い疫学データに基づいており、医学界における科学的根拠の信頼性が極めて高い論文として位置づけられています。

   

研究から、砂糖や果糖ブドウ糖液糖が含まれた清涼飲料水を頻繁に摂取する男性は、ほとんど飲まない男性と比較して痛風を発症するリスクが有意に高くなり、1日に2回以上飲む場合にはそのリスクが1.85倍にまで跳ね上がることが示されました。

  

これら嗜好品との付き合い方を考え、不要な病気を遠ざけるきっかけになることが期待されます。

  

以下に研究の内容をまとめます。

 

参考研究)

Lack of association between dietary fructose and hyperuricemia risk in adults(2010/03/01)

  

  

研究が実施された背景

痛風は、血液中の尿酸(体内の細胞や食べ物に含まれるプリン体が分解されてできる老廃物)の濃度が高くなりすぎ、それが関節内で結晶化して激しい炎症を起こす疾患です。

 

かつて痛風予防といえば、アルコールの制限や高プリン体食の回避が主軸とされてきました。

 

しかし、20世紀後半から現代にかけて、欧米を中心に痛風の患者数は急増していました。

 

この時期は、ちょうど食生活の中で清涼飲料水の消費量が急激に伸びた時期と重なっています。

 

清涼飲料水の多くには、安価で甘味度が高い果糖ブドウ糖液糖が大量に使用されています。

 

果糖ブドウ糖液糖に含まれる果糖(フルクトース)は、体内で分解される際に独自の代謝経路を辿り、尿酸の産生を即座に促進することが生化学的に知られていました。

 

しかし、日常的な清涼飲料水の摂取が、実際に人々の痛風発症リスクをどれほど高めているのか、そして王道のリスク要因であるアルコールと比べてどのような影響をもたらすのかについて、大規模な疫学データを用いた検証が求められていました。

 

そこでハーバード大学の研究チームは、世界最大規模の追跡データを用いてこの解明に挑みました。

 

 

対象:痛風でない46,393人の男性医療従事者

本研究では、Health Professionals Follow-up Study(医療従事者追跡研究)と呼ばれる米国の大規模調査データが活用されました。

 

対象となったのは、研究開始時点(1986年)で痛風の既往歴がない46,393人の男性医療従事者です。

  

研究チームは、対象者の食生活や生活習慣に関する詳細な質問票を用いて、12年間(1986年から1998年まで)にわたり彼らを定期的に追跡調査しました。

 

分析の際には、痛風のリスクに影響を与える他の要素、具体的には年齢肥満度を表すBMI高血圧の有無アルコール摂取量総カロリー摂取量肉類や魚介類などのプリン体摂取量といった研究の結果に影響を与えてしまう別の要因を統計手法を用いて厳密に調整・排除しました。

 

特に重要な点として、「アルコールの摂取量」による影響を統計的に取り除いた(調整した)上で解析を行っているため、この研究で示された清涼飲料水のリスクは「お酒を飲むかどうか」とは独立した、果糖そのもののリスクであることが証明されています。

 

 

明らかになった研究結果

 

12年間にわたる追跡期間中に、対象となった46,393人のうち755人が新たに痛風を発症しました。彼らの飲食習慣と痛風発症率を分析した結果、以下のような非常に明確な事実が浮き彫りとなりました。

 

【清涼飲料水の摂取頻度とリスクの上昇】

砂糖や果糖ブドウ糖液糖が入った清涼飲料水を飲む頻度が高くなればなるほど、痛風を発症する危険性が段階的に高まることが確認されました。

 

具体的には、清涼飲料水を飲む頻度が月1回未満の男性を基準(1.00)とした場合、週に5回から6回飲む男性のリスクは1.29倍、1日に1回飲む男性のリスクは1.45倍、そして1日に2回以上飲む男性のリスクは1.85倍にまで達しました

 

  

【ダイエット清涼飲料水との明確な違い】

一方で、人工甘味料を使用したダイエット清涼飲料水に関しては、頻繁に摂取していても、痛風のリスクは上昇しない(リスク比 0.95)という結果も得られました。

 

この事実は、清涼飲料水による痛風リスクの上昇が、水分補給の量やその他の添加物によるものではなく、砂糖や果糖ブドウ糖液糖に由来する「果糖そのもの」が原因であることを強力に裏付けるものです。

 

   

【果物や果汁100%ジュースの影響】

清涼飲料水だけでなく、果糖を多く含む果物や果汁100%ジュースの摂取についても調査が行われました。

 

その結果、オレンジジュースやリンゴ、オレンジなどを大量に摂取する習慣も、痛風リスクの上昇と有意に関連していることが示されました。

 

例えば、オレンジジュースを1日に2杯以上飲む男性は、月1杯未満の男性と比べて痛風リスクが1.81倍となっていました。

  

  

アルコールと果糖ブドウ糖液糖の比較

 

痛風予防において最も関心が高い「アルコールとの比較」について、一連の研究および生化学的メカニズムから詳しく解説します。

  

同研究チーム(Hyon K. Choiら)が2004年に発表したアルコールに関する同規模のコホート研究データと今回の論文を比較すると、長期的な痛風の発症リスクとしては「アルコールの過剰摂取」の方がやや高い数値を示しています。

   

・アルコールの過剰摂取: 1日にアルコールを50g以上(ビールでロング缶2本程度)摂取する男性のリスクは、不摂取の人と比べて2.51倍。

    

・清涼飲料水(果糖)の過剰摂取: 1日に2回以上(350ml缶のジュースを2本程度)飲む男性のリスクは、月1回未満の人と比べて1.85倍。

 

数値の上ではアルコールが上回るものの、「甘いジュースを毎日2回飲むことによるリスク(1.85倍)」は、毎日グラス1〜2杯のワインやウイスキーを飲むお酒のリスクに匹敵する高さであり、痛風においては清涼飲料水がアルコールに次ぐレベルで極めて有害であることが分かります。

 

    

代謝メカニズムの比較(どうやって尿酸を増やすか)

アルコールと果糖は、どちらも体内で尿酸値を上げますが、その攻め方に違いがあります。 

 

【果糖(果糖ブドウ糖液糖)の代謝】

① 肝臓のケトヘキソキナーゼが無制限に果糖を処理する

② 細胞内のエネルギー(ATP)が急速に消費・枯渇する

③ 枯渇したATPが分解され、短時間で爆発的に尿酸が「産生」される(即効性の尿酸スパイク)

  

【アルコールの代謝】

① アルコール代謝の過程でATPが消費され、尿酸が「産生」される

② アルコール分解で生じる「乳酸」が、腎臓からの尿酸の「排泄」を強力にブロックする

③ ビールなどの場合、飲み物自体に含まれる「プリン体」が直接体内に入る

 

つまり、一気に飲んだ瞬間に尿酸値をガツンと跳ね上げる「爆発的な生産力」は果糖ブドウ糖液糖が勝り、体内に尿酸を長く留め置く「排泄阻害と蓄積の力」はアルコールが勝るという特徴があります。

 

 

曖昧な点と本研究の限界

本研究は非常に高い信頼性を持つエビデンスですが、要約内容やデータの解釈においていくつか曖昧な点や限界が存在することも事実です。

   

まず、この調査の対象者は「米国の男性医療従事者」に限定されています。女性や、生活習慣・遺伝的背景が異なる日本人などのアジア人に対して、全く同じ数値(リスク1.85倍など)がそのまま当てはまるかどうかについては曖昧さが残ります。

 

なお、Hyon K. Choi氏らは2010年に女性を対象とした研究も行っており、女性では清涼飲料水1日2回以上で痛風リスクが2.39倍になると報告しています。

  

また、本研究ではリンゴやオレンジなどの果物の摂取も痛風リスクの上昇と関連していました。

 

しかし、果実そのものには食物繊維やビタミンCが豊富に含まれており、ビタミンCには尿酸の排泄を促す好ましい作用もあります。

 

そのため、「果物を食べること自体が清涼飲料水と全く同じレベルで健康に有害であるか」については議論が分かれるところであり、果物の適量摂取に関するリスク評価にはやや不確実性が含まれます。

 

 

研究を踏まえた生活における注意点

 

痛風の予防や尿酸値のコントロールを目指す場合、従来の「ビールを控える」「プリン体の多いレバーやタラコを控える」といった対策だけでは不十分です。

 

本研究の成果を踏まえ、私たちが日々の生活で意識すべき重要な注意点は以下の通りです。

  

まず最も重要な行動は、「果糖ブドウ糖液糖」が表記された清涼飲料水や甘い缶コーヒー、スポーツドリンクの日常的な摂取を控えることです。

 

液体として摂取された果糖は腸管から極めて速やかに吸収されるため、肝臓で急激な尿酸スパイク(一瞬で尿酸値が跳ね上がる現象)を引き起こします。

 

普段の水分補給は、水や麦茶、無糖の茶類、あるいはブラックコーヒーなどに切り替えることが非常に有効です。

 

また、「健康に良さそう」というイメージから無糖ではない果汁100%ジュースやスムージーを大量に飲んでいる方も注意が必要です。

 

固形の果実であれば食物繊維によって吸収が穏やかになりますが、ジュースに加工された液体状態では清涼飲料水と同様に果糖が急激に吸収されてしまいます。

 

果物を楽しむ際はジュースではなく、生の果実をそのまま適量食べる工夫が推奨されます。

  

お酒を飲む習慣がある方は、アルコール自体が持つ尿酸の排泄阻害作用と、割材に含まれる果糖ブドウ糖液糖の尿酸産生作用が重なることで、リスクが相乗的に悪化する危険性を認識しておく必要があります。

 

ジュースや甘い清涼飲料水で割ったカクテルやサワー類を避け、無糖の炭酸水や水で割ったお酒を選ぶことが望ましいと言えます。

   

   

まとめ

・砂糖や果糖ブドウ糖液糖を含む清涼飲料水の摂取頻度が高い男性は、痛風の発症リスクが最大1.85倍に高まることが示された

・アルコール(特にビール)は尿酸の排泄阻害と産生促進で約2.5倍のリスクを持ちますが、清涼飲料水の果糖も肝臓での急速なATP消費によってそれに匹敵する高リスクをもたらす

・痛風の予防にはビールやプリン体の制限だけでなく、ジュースや清涼飲料水による「果糖の過剰摂取」を避ける生活習慣が不可欠

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