お茶は世界中で親しまれている飲み物ですが、その健康効果については近年ますます多くの研究が行われています。
今回、中国農業科学院茶葉研究所のMingchuan Yang氏らの研究チームが発表したレビュー論文では、お茶、特に緑茶の摂取が心血管疾患、肥満、糖尿病、一部のがんの予防に役立つ可能性があることが改めて確認されました。
さらに、お茶には脳の健康を守る作用や高齢者の筋肉量低下を防ぐ可能性も示されています。
一方で、市販のボトル茶やタピオカティーなどの加工飲料には糖類や人工甘味料、保存料が含まれていることが多く、これらが本来のお茶の健康効果を弱める可能性も指摘されました。
研究チームは、最も健康効果が期待できるのは伝統的な方法で淹れた新鮮なお茶であり、加工度の高い茶飲料は必ずしも同じ恩恵をもたらさない可能性があると結論付けています。
以下に研究の内容をまとめます。
参考記事)
・Tea can improve your health and longevity, but the way you drink it matters(2026/06/09)
参考研究)
・Beneficial health effects and possible health concerns of tea consumption: a review(2025/11/13)
お茶の健康効果が注目される理由

お茶は、チャノキ(Camellia sinensis)という植物の葉から作られ、数千年にわたり薬用や嗜好品として利用されてきました。
お茶が健康によいと考えられている最大の理由は、豊富なポリフェノールを含んでいるためです。
ポリフェノールとは、植物が持つ抗酸化作用を持つ成分群の総称です。体内で発生する活性酸素による細胞障害を抑える働きがあると考えられています。
特に緑茶には、カテキン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、フラボノイドなどの生理活性物質が豊富に含まれています。
今回のレビューでは、実験研究だけでなく、人を対象とした疫学研究やコホート研究の結果も幅広く検討されました。
コホート研究とは、多数の人を長期間追跡して生活習慣と病気の発症との関連を調べる研究手法です。
心血管疾患リスクを下げる可能性

今回のレビューで最も多くの科学的根拠が集まっていたのは心血管疾患への影響でした。
心血管疾患とは、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、高血圧などの病気を指します。
研究によると、緑茶を習慣的に飲む人では血圧の改善やコレステロール値の改善が見られることが報告されています。
特にLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の低下や血管機能の改善が確認されており、これらが心血管疾患リスク低下に関与している可能性があります。
また複数の大規模コホート研究では、お茶を日常的に飲む人ほど全死亡率が低くなる傾向も報告されています。
全死亡率とは、特定の病気に限らず、あらゆる原因による死亡率を意味します。
ただし、レビュー論文で紹介された研究の多くは観察研究であり、「お茶を飲んだから寿命が延びた」と断定できるわけではありません。
お茶をよく飲む人は、食生活や運動習慣など他の健康的な生活習慣を持っている可能性も考えられます。
肥満や糖尿病への効果
肥満や二型糖尿病の予防についても、多くの研究結果がまとめられました。
緑茶カテキンには、エネルギー消費の増加、脂肪酸酸化の促進、血糖値の改善などの作用がある可能性が示されています。
脂肪酸酸化とは、脂肪をエネルギーとして利用する過程のことです。
肥満者を対象とした研究では、緑茶カテキンの摂取によって体重や体脂肪率の減少がみられた例も報告されています。
また、糖尿病についてはインスリン感受性の改善が期待されています。
インスリン感受性とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンに体がどれだけ反応しやすいかを示す指標です。
インスリン感受性が高いほど血糖コントロールは良好になります。
しかし、研究結果は必ずしも一貫しているわけではありません。
効果が確認された研究もあれば、有意な改善が見られなかった研究も存在するため、現時点では補助的な役割として考えるのが妥当でしょう。
認知症予防や脳の健康への期待
近年注目されているのが、お茶と脳の健康との関係です。
今回のレビューでは、お茶を習慣的に飲む人ほど認知機能低下の発生率が低い傾向があることが紹介されました。
認知機能とは、記憶力、判断力、注意力、学習能力などを含む脳の働き全般を指します。
特に高齢者では、定期的なお茶の摂取がアルツハイマー病関連バイオマーカーの減少と関連している研究も報告されています。
バイオマーカーとは、病気の状態を示す生物学的指標のことです。
研究者らは、お茶のポリフェノールが神経細胞を酸化ストレスから守ることによって脳を保護している可能性があると考えています。
ただし、この分野もまだ発展途上です。
認知症予防効果を断定するには、さらに長期間の介入研究が必要とされています。
高齢者の筋肉量維持にも役立つ可能性
加齢による筋肉量の減少は、健康寿命を短くする大きな要因です。
この状態はサルコペニアと呼ばれています。
サルコペニアとは、加齢に伴う筋肉量や筋力の低下を指します。
レビューによると、茶カテキンは筋肉の炎症や酸化ストレスを抑制することで、筋肉量の維持に貢献する可能性があります。
実際に高齢者を対象とした研究では、筋力の維持、身体機能の改善、歩行能力の向上などとの関連が報告されています。
超高齢社会を迎える日本においても非常に興味深い知見といえるでしょう。
がん予防効果はどこまで期待できるのか
お茶とがん予防の関係についても多くの研究が行われています。
今回のレビューでは、一部のがんについてリスク低下との関連が示されました。
しかし、がんに関する研究結果は病気の種類によってばらつきがあります。
動物実験や細胞実験では有望な結果が多数報告されていますが、人間を対象とした研究では必ずしも一致した結果が得られていません。
そのため、「お茶を飲めばがんを予防できる」と結論付けることは現時点ではできないというのが科学的に最も正確な表現です。
ボトル茶やタピオカティーには注意が必要

また、今回の分析で特に注目されたのが、市販の加工茶飲料に関する問題です。
研究者らは、ボトル茶やタピオカティーなどの製品には、砂糖、人工甘味料、保存料、香料などが含まれている場合があると指摘しています。
これらの添加物は、お茶本来の健康効果を相殺する可能性があります。
特に砂糖を多く含む飲料は肥満や糖尿病リスク上昇との関連が知られています。
つまり、「お茶だから健康によい」と単純に考えるのではなく、その製品の成分表示を確認することが重要です。
研究チームは、健康効果を期待するのであれば、できるだけ新鮮に淹れた伝統的なお茶を選ぶ方が望ましいと述べています。
農薬やマイクロプラスチックの懸念も
レビューでは、お茶に含まれる可能性のある汚染物質についても言及されています。
具体的には、農薬残留物、重金属、マイクロプラスチックなどが挙げられています。
ただし研究者らは、通常の飲用量であれば重大な健康リスクをもたらす証拠は現時点で十分ではないと説明しています。
一方で、長年にわたり大量摂取する場合の影響については、さらなる研究が必要だとしています。
鉄やカルシウムの吸収を妨げる可能性
お茶には多くの利点がありますが、注意すべき点もあります。
茶ポリフェノールは非ヘム鉄の吸収を妨げる可能性があります。
非ヘム鉄とは、主に植物性食品に含まれる鉄分のことです。
そのため、ベジタリアン、鉄欠乏傾向の人、妊婦などでは、お茶を飲むタイミングに配慮した方がよいかもしれません。
また、一部の研究ではカルシウム吸収への影響も指摘されています。
ただし、通常の摂取量で大きな問題になるかどうかについては、まだ結論が出ていません。
研究から見えてきたこと

今回のレビューは、過去に行われた多数の研究結果を体系的にまとめる研究です。
そのため新しい実験結果を示したものではありませんが、現在得られている科学的知見を総合的に評価できるという利点があります。
今回の総括からは、緑茶を中心とした伝統的なお茶の習慣が、心血管疾患や代謝疾患、認知機能低下の予防に役立つ可能性が高いことが示されました。
一方で、加工度の高い茶飲料については同じ効果を期待できない可能性があり、今後さらなる研究が求められています。
私たちの日常生活では、「お茶を飲むこと」だけでなく、「どのようなお茶を選ぶか」が重要になりそうです。
健康のためにお茶を取り入れるのであれば、甘味の少ない、あるいは無糖の新鮮なお茶を選ぶことが望ましいでしょう。
ただし、お茶だけで病気を予防できるわけではありません。
バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠と組み合わせてこそ、その恩恵を最大限に活かせると考えられます。
今回の研究は、お茶を健康的な生活習慣の一部として活用する価値を改めて示したものといえそうです。
まとめ
・緑茶を中心とする伝統的なお茶は、心血管疾患や糖尿病、認知機能低下の予防に役立つ可能性がある
・ボトル茶やタピオカティーなどの加工茶飲料は、糖類や添加物によって健康効果が弱まる傾向が示された
・お茶は健康的な飲み物だが、鉄分吸収への影響や汚染物質の問題など、注意すべき点も存在する

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