1エクストラバージンオリーブオイル(EVOO)は、長年にわたり心血管疾患の予防に有益な「健康的な油」として広く認識されてきました。
しかし今回の研究では、植物性食品中心の食事においては、オリーブオイルの摂取量が必ずしも追加的な健康利益をもたらさない可能性が示唆されています。
特に、脂質の摂取量やその質が、代謝や血管機能に複雑な影響を及ぼすことが明らかになりました。
本研究は、食事全体のバランスが健康に与える影響の重要性を改めて浮き彫りにしています。
以下に研究の内容をまとめます。
参考研究)
研究の概要

本研究は、ランダム化クロスオーバー試験(同一被験者が異なる条件を順に体験する試験)として実施されました。
研究では、全食品ベースの植物性ビーガン食(加工食品を極力避けた植物中心の食事)において、オリーブオイルの摂取量を変化させた場合の心血管・代謝指標への影響が検証されています。
参加者は40名で、平均年齢は約64歳、BMIは約30と、肥満傾向の中高年が中心でした。
研究方法
参加者は以下の2つの食事条件を交互に体験しました。
・高オリーブオイル食
・低オリーブオイル食
いずれも共通して、「全食品ベースの植物性食」が基本となっています。
ここでいう「全食品」とは、果物や野菜、全粒穀物の中でも精製度が低く自然に近い食品を指したものです。
また、砂糖や精製油などは最小限に抑えられています。
主な結果①:オリーブオイル≠健康に良い
本研究で特に重要なポイントは以下の通りです。
Recipe for Heart Health: A Randomized Crossover Trial on Cardiometabolic Effects of Extra Virgin Olive Oil Within a Whole‐Food Plant‐Based Vegan Dietより 【用語】
・H2L=高→低EVOOの順で食事介入
・L2H=低→高EVOOの順で食事介入
① オリーブオイルの摂取量による大きな差は限定的
高オリーブオイル群と低オリーブオイル群の間で、心血管リスク指標における明確な優位差は限定的でした。
これは、従来の「オリーブオイル=健康に良い」という単純な理解に対して、再考を促す結果です。
むしろ、低オリーブオイル群の方が LDLコレステロールの値が減っていたことが示されました。
オリーブオイルを多く摂取したからといって、健康にメリットがあるのかが不明ということが言えます。
また、オリーブオイルを全く摂取しない場合と比較しても、健康への効果に大きな差異がない可能性も推定されます。
② 食事全体の質が最も重要
最も大きな改善は、オリーブオイルの量ではなく、「植物性中心の食事そのもの」によってもたらされた可能性があります。
つまり、脂質の種類よりも、食事全体の構成の方が、健康への影響が大きいと考えられます。
③ 体重や代謝への影響
研究対象者は平均BMIが30前後と肥満傾向にありましたが、
植物性食への切り替えにより、体重や代謝指標の改善が示唆されています。
ただし、これがオリーブオイルの影響か、食事全体の変化によるものかは明確に区別できません。
主な結果②:高オリーブオイルで炎症増加
また、植物性食に切り替えること自体で多くの指標は改善するが、オリーブオイルを増やすと一部の脂質・炎症マーカーが悪化方向に動く可能性があることが示唆されました。
Recipe for Heart Health: A Randomized Crossover Trial on Cardiometabolic Effects of Extra Virgin Olive Oil Within a Whole‐Food Plant‐Based Vegan Dietより
コレステロール関連の指標
【Total Cholesterol(総コレステロール)】
・H2L(高オリーブ油→低オリーブ油) → 低下
・L2H(高オリーブ油→低オリーブ油) → 上昇
オリーブオイル増加で総コレステロールが上昇
【HDL-C(善玉コレステロール)】
・L2Hで大きく上昇
一見良さそうだが、HDLの上昇=必ずしも病気のリスク低下ではない
【Triglycer(中性脂肪)】
・L2Hで上昇傾向
脂質摂取量増加の影響が出ている可能性が指摘
【ApoB(アポリポタンパクB)】
・H2L → 低下
・L2H → 上昇
動脈硬化リスクの重要指標(LDL粒子数の指標)
オリーブオイル増加で動脈硬化リスクが悪化方向
【Lp(a)(リポタンパク(a))】
遺伝的に強い心血管リスク因子
・H2Lで大きく低下
低脂質植物食の強い改善効果が示唆
糖代謝・炎症マーカー
【Glucose(血糖)】
・L2Hで上昇
高脂質化によりインスリン感受性が低下した可能性が指摘
【hs-CRP(高感度CRP)】
体内の炎症を知らせるマーカー
・L2Hで上昇
オリーブオイル増加で炎症がやや増加
【IL-6(インターロイキン6)】
炎症性サイトカイン(免疫シグナル分子)
・L2Hで低下(やや複雑な結果)
一部の炎症経路は改善している可能性あり
炎症反応自体が単純ではないため、注意が必要
腸内・代謝関連
【TMAO(トリメチルアミンN-オキシド) 】
腸内細菌由来の動脈硬化関連物質
・H2Lで低下
・L2Hで上昇
低脂質植物食で腸内環境が改善した可能性
【Fructosamine(フルクトサミン)】
過去2〜3週間の血糖指標
・H2Lで低下
短期的な血糖コントロール改善
グラフからのまとめ
・低オリーブオイル食の方が多くの心血管指標で改善
・高オリーブオイルは脂質・炎症の一部を悪化させる可能性
・本質は「油」ではなく「食事全体(植物性・低加工)」
このグラフから得られる重要な解釈は、植物性の食事そしてオリーブオイルの有益性です。
研究では、各種バイオマーカー改善の主因は「植物性食」と考えられています。
・H2L(油を減らす) → 改善
・L2H(油を増やす) → 悪化
というパターンが一貫して見られ、 改善の中心は「低脂質・植物性食」であり、オリーブオイルではない可能性が高いと見ることができます。
従来の研究ではオリーブオイルは有益とされており、メディア並びに医師によるSNSや動画発信でもメリットが強調されています。
そんな、一般的な認識に対しこの試験では、「少なくとも追加的なメリットは明確ではない」という結果になっています。
これは、既存のメタ解析でもオリーブオイルの摂取を増やしても血中脂質にほぼ影響しない(効果はごく小さい)と報告されており、整合的な部分もあります。

また、IL-6など一部の指標は改善、HDLは上昇クロスオーバー特有の「持ち越し効果」も考えられるためすべての指標が一方向に変化しているわけではない点は、研究結果との振れとして留意すべきところでもあります。
ここまでをまとめると、「全食品ベースの植物性食は強い改善効果を持つが、そこにオリーブオイルを追加しても、むしろ一部のリスク指標は悪化する可能性がある」と結論づけることができます。
本研究の重要な示唆

この研究から確認されたことは、「単一の食品ではなく、食事全体の構成が健康を左右する」という考え方です。
オリーブオイルは確かに不飽和脂肪酸を多く含む健康的な脂質ですが、過剰摂取、他の食品とのバランスによって、その効果は変化する可能性があります。
また、本研究にはいくつかの注意点があります。
まず、参加者数が40名と比較的小規模である点です。
期間が比較的短い点や特定の年齢層(高齢者中心)に寄っている点もあるため、 すべての人に同じ結果が当てはまるとは限らないことにも留意点です。
さらに、オリーブオイル単体の影響と、食事全体の影響を完全に分離することは難しく、因果関係には一定の曖昧さが残ります。
生活における注意点
本研究を踏まえると、日常生活において意識すべきポイントは以下の通りです。
まず、「健康に良いとされる食品」だけに注目するのではなく、食事全体のバランスを見直すことが重要です。
例えば、オリーブオイルを多く摂ることよりも、野菜や全粒穀物、豆類を中心とした食事に切り替える方が、より大きな健康効果をもたらす可能性があります。
また、脂質はエネルギー密度が高いため、過剰摂取は体重増加につながる可能性があります。
そのため、たとえ健康的とされる脂質であっても、摂取量には注意が必要です。
個人的な考えではありますが、キャノーラ油やパーム油、菜種油と比較した場合には炎症の程度が抑えられるため、それが炎症の低下と錯覚させられているのではないかとも推測できます。
自分はオリーブオイルも摂取しないようにしていますが、この考えに日の目が当たる日も近いかもしれません。
まとめ
・オリーブオイルの摂取量だけでは健康効果は大きく変わらない可能性がある
・植物性中心の食事そのものが心血管リスク改善に寄与する可能性が高い
・単一の食品ではなく、食事全体の質が最も重要である



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