科学

飲み物から摂る糖が二型糖尿病リスクを高める?新たな国際研究で明らかに

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糖分の摂取と健康の関係については、長年にわたって議論が続いてきました。

 

中でも二型糖尿病との関連性は、一般にもよく知られた問題です。

 

しかし、すべての糖分が同じように体に悪影響を及ぼすのでしょうか。

 

砂糖の摂取源によって、二型糖尿病のリスクには大きな違いがある」ということが明らかになりました。

 

アメリカ・ブリガム・ヤング大学による、世界中の50万人以上の成人を対象とした健康データの分析から、飲料からの糖分摂取は、食べ物から摂取するよりも、代謝に与える悪影響が大きいことが判明しました。

 

以下に研究の内容をまとめます。

 

参考記事)

One Key Way of Consuming Sugar Could Spike Your Diabetes Risk(2025/05/30)

 

参考研究)

Dietary Sugar Intake and Incident Type 2 Diabetes Risk: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies(2025/03/18)

 

 

飲料からの糖分摂取が糖尿病リスクを上げる仕組み

研究チームは、日常的な糖分摂取のうち、どのような形で糖を摂取しているかによって、二型糖尿病の発症リスクがどのように異なるのかを詳しく分析しました。

 

具体的には、果糖(fructose)ショ糖(sucrose)遊離糖(free sugars:はちみつなど自然に存在する糖)添加糖(added sugars)総糖分(total sugars)に加えて、清涼飲料水やスポーツドリンク、果汁飲料などの糖分入り飲料(sugar-sweetened beverages)を対象としています。

 

その結果、次のような傾向が明らかになりました。

Dietary Sugar Intake and Incident Type 2 Diabetes Risk: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Cohort Studiesより

• ショ糖や総糖分の摂取は、むしろ二型糖尿病のリスクと逆相関を示す可能性がある

• 果糖や添加糖については、明確な関連性が認められなかった

• 一方で、糖分入り飲料を1日1杯増やすごとに、二型糖尿病のリスクが25%上昇

• 果汁飲料でも、1日1杯あたり5%のリスク上昇が確認された

 

このように、糖の種類や摂取方法によって、健康への影響が大きく異なることが科学的に示されたのです。

 

 

糖質=悪ではない?重要なのは「どう摂るか」

  

この研究の結果は、従来の「砂糖=健康に悪い」という一般的な認識に一石を投じるものです。

  

研究を主導したブリガム・ヤング大学の栄養科学者Karen Della Corte氏は、次のように述べています。

  

本研究は、糖の摂取源と二型糖尿病リスクとの間に明確な用量反応関係(dose-response relationship)を初めて示した点に意義がある。ソーダや果汁から“飲む”糖分の摂取は、“食べる”糖分よりも健康に悪影響を与えることが明確になった

  

つまり、同じ量の糖分であっても、飲料として液体の形で摂取する方が、血糖値やインスリン分泌に対する影響が大きくなる可能性があるのです。

 

これは、液体の糖分が体内に素早く吸収され、血糖値を急上昇させるからだと考えられています。

 

これにより、膵臓からインスリンが大量に分泌され、長期的にはインスリン抵抗性が進行する可能性が高まります。

 

 

果物と果汁の違い:繊維の有無がカギ

特に興味深いのは、果汁飲料のリスクが実際の果物の摂取とは大きく異なるという点です。

 

研究チームは、その理由として「果汁飲料は糖分が多く、食物繊維を含まないため、血糖値への影響が清涼飲料水と似ている。一方で、果物は食物繊維を多く含むため、血糖値の上昇が緩やかになる」と説明しています。

 

つまり、果物を丸ごと食べる場合は、繊維質や他の栄養素が同時に摂取されるため、糖分の吸収が遅くなり、血糖コントロールに有利になるということです。

 

これは、乳製品や全粒穀物など他の糖質食にも当てはまり、栄養密度の高い食品の中に糖が含まれている場合は、血糖への影響が緩和されるという点が注目されています。

 

 

糖尿病リスクは「量」より「質」?新たな食事指針への示唆

この研究結果は、将来的な栄養ガイドラインに対しても大きな示唆を与えています。

  

従来は、「糖質は極力避けるべき」という一律の考え方が主流でしたが、今後は「糖の種類」や「糖を含む食品の質・組成」まで踏み込んで考慮する必要があると研究者たちは主張しています。

  

2023年にも、総糖分の摂取量と二型糖尿病リスクの関連性を調べた研究があります。

 

その研究ではリスクの増加がBMI(体格指数)との関連が強く、糖そのものというよりは、糖の過剰摂取による体重増加が間接的に代謝に影響を与える可能性があるという結果が出ています。

 

Associations between Total and Added Sugar Intake and Diabetes among Chinese Adults: The Role of Body Mass Indexより

    

今回のDella Corte氏の研究でも、BMIや総エネルギー摂取量を調整した上でも、糖分入り飲料のリスクは有意に残ったことから、飲料による糖分摂取が独立した危険因子となる可能性が指摘されています。

   

   

まとめ

・清涼飲料水や果汁飲料など、液体として糖分を摂取することは、二型糖尿病のリスクを大きく高める可能性がある

・果物や乳製品など栄養価の高い食品に含まれる糖分は、逆に血糖コントロールを助ける可能性がある

・今後の栄養指針では、「糖の量」ではなく「糖の摂取源と食品の質」に着目する必要がある

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