科学

ストレスを抱える女性は脳卒中リスクが高い

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ヘルシンキ大学による新たな研究から、慢性的なストレスが若年層の脳卒中リスクを高める可能性があることが明らかになりました。

 

ただし、この影響は女性に限られるようです。

 

研究者たちは、女性は仕事、介護、その他の責任を同時にこなすことが多く、持続的なストレスにさらされやすいためではないかと考えています。

 

ストレスが直接脳卒中を引き起こすわけではないものの、高血圧や炎症を促進し、不健康な生活習慣を助長することで脳卒中リスクを高める可能性があると専門家は指摘しています。

 

以下に研究についてまとめていきます。

 

参考研究)

Association Between Self-Perceived Stress and Cryptogenic Ischemic Stroke in Young Adults(2025/03/05)

 

 

研究の概要

 

本研究は、18歳から49歳の若年層において、高いストレスレベルが脳卒中リスクを上昇させることが確認されました。

 

ただし、この関連は女性にのみ見られ、男性には認められませんでした

 

研究者たちはこれまでにもストレスが心血管系に負担をかけることを明らかにしてきましたが、若年層の脳卒中リスクの増加要因として、特に女性に影響を与える可能性があることを示したという点が、今回の研究の注目すべき発見です。

 

「この結果は、長期的な心理的ストレスが血管機能障害を引き起こす可能性を示しており、脳卒中予防のためのストレス管理の重要性を強調している」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の血管神経科医のLauren Patrick氏は述べています。

 

では研究の方法と結果について見ていきます。

 

 

研究の方法と結果

研究では、18歳から49歳の虚血性脳卒中患者426人(うち約半数が女性)と、同年代・同性で脳卒中を発症していない426人を比較されました。

 

参加者は、過去1カ月間のストレスレベルに関するアンケートに回答し、脳卒中を経験したグループには発症前のストレス状況についても追加質問が行われました。

 

その結果、脳卒中を経験したグループは、経験していないグループに比べてストレスレベルが顕著に高いことが判明しました。

   

年齢と性別毎に分けたストレスレベルの比較(Association Between Self-Perceived Stress and Cryptogenic Ischemic Stroke in Young Adultsより)

脳卒中を発症した人の46%が中程度から高レベルのストレスを報告(脳卒中を経験していないグループでは33%)

中程度のストレスを抱えた女性は脳卒中リスクが78%増加し、高ストレスの女性はさらに6%リスクが高まることが示された

一方、男性のストレスレベルと脳卒中リスクには関連が見られなかった

  

ただし、研究チームは「この研究はストレスと脳卒中の関連性を示したものの、因果関係を証明したわけではない」と指摘しています。

 

 

ストレスが脳卒中リスクを高める理由

ストレスが脳卒中に与える影響については、いくつかの仮説が立てられています。

 

ヘルシンキ大学の医学博士であるNicolas Martinez-Majander博士は、以下の点を挙げています。

 

急性または短期的な血圧の急上昇

ストレスによる心拍リズムの異常

慢性炎症の促進

 

さらに、ストレスが不健康な生活習慣(喫煙、運動不足、偏った食事、アルコールや薬物の使用)を助長し、それが心血管系に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。

 

 

なぜ女性の方が影響を受けやすいのか

この研究では男性にストレスと脳卒中リスクの関連は見られませんでしたが、過去の研究では一般的に男性にもストレスと脳卒中の関連が認められています。(Association of Psychosocial Stress With Risk of Acute Strokeより

 

今回の研究で女性のリスクが特に高くなった理由について、Martinez-Majander博士は「女性は仕事、家庭、育児など多くの役割を同時にこなすことが多く、慢性的なストレスを感じやすい状況にある」と説明しています。

 

スタンフォード大学医学部の血管神経科医Christina Mijalski氏も、「社会全体でこの問題に注目し、育児支援や健康促進のためのリソースを提供する必要がある」と指摘しています。

 

さらに、男性は女性に比べて自分のストレスを過小評価しやすい傾向があることも要因の一つとして考えられます。

 

 

ストレス管理と心血管の健康維持

Martinez-Majander博士は、今回の研究がストレス管理の重要性を認識するきっかけになればよいと述べています。

 

完全にストレスをなくすことは難しいですが、可能な限り管理することで、脳卒中リスクを抑えられる可能性があります

 

まず、自分のストレスレベルを把握することが重要です。ストレスの兆候としては、

 

慢性的な不安や不眠

頭痛の頻発

高血圧の発症

倦怠感や集中力の低下

 

これらの症状が続く場合、脳卒中の警告サイン(突然の手足のしびれ、言葉のもつれ、めまい、視界の変化、激しい頭痛)にも注意を払う必要があります

 

また、ストレスが健康にどのような影響を与えているのか気になる場合は、かかりつけ医に相談することを推奨します。

 

医師は、高血圧や糖尿病などの身体的リスク要因を特定し、ストレス管理の方法について助言できるからです。

 

ストレス管理の具体的な方法として、Patrick博士は以下の対策を推奨しています。

 

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨する週150分の運動を習慣化する

瞑想やヨガ、マインドフルネスを取り入れる

気軽にできるリラックス方法(散歩や料理の時間を楽しむなど)を実践する

 

Mijalski博士は「最も大切なのは、ストレスが過度に蓄積し、対処が困難になったときに専門的な支援を求めること」と強調しています。

 

 

まとめ

・慢性的なストレスは若年層の女性において脳卒中リスクを高める可能性がある

・ストレスは血圧の上昇や炎症を引き起こし、不健康な生活習慣を助長することでリスクを増大させる

・ストレス管理には運動、マインドフルネス、適切な医療機関での相談が重要

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