科学

運動だけでは防げないリスク 〜超加工食品が筋肉に与える影響〜

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便利で手軽な超加工食品は、現代の食生活に欠かせない存在として多くの人々に親しまれています。

 

しかし、シカゴ – 北米放射線学会(RSNA)の年次総会で発表された研究では、これらの食品が筋肉内脂肪の増加や筋肉の質に悪影響を及ぼす可能性があることが明らかになり、この影響は運動を行っていても完全には回避できないことが指摘されました。

 

筋肉の健康を維持するためには何が必要なのか、そして私たちの食生活をどのように見直すべきなのか。

 

本記事では最新の研究結果を基に、超加工食品がもたらすリスクと健康的な筋肉を守るためのアプローチをまとめていきます。

 

参考)

How Ultra-Processed Foods Can Hurt Your Muscle Health—Even If You Work Out(2024/12/13)

Eating High-Processed Foods Impacts Muscle Quality(2024/12/04)

 

 

超加工食品とは?

 

超加工食品は現状、科学的に定義されていません。

一般的には、保存期間を延ばしたり、味を強化したりするために多くの添加物が加えられるなど、本来の素材に対して様々な加工を施した食品を指します。

 

例)

• ソーダやスポーツドリンクなどの甘味飲料

• 加工肉(ホットドッグ、ベーコンなど)

• スナック菓子(ポテトチップス、クッキーなど)

• 冷凍食品(冷凍ピザ、冷凍パスタなど)

 

これらの食品には、砂糖、塩、保存料、人工着色料、香料などが多く含まれており、カロリー密度が高い一方で栄養価が低いことが特徴です。

 

これを前提とし、こういった食品が体内でどのように悪影響を及ぼすのかについて、研究の内容を見ていきます。

 

 

研究の概要:筋肉内脂肪の増加との関係

 

この研究は、変形性膝関節症(OA)の発症リスクと超加工食品の関係を調べる目的で行われた「変形性関節症イニシアチブ」のデータを利用して実施されました。

 

調査対象は以下の通りです。

• 対象者:666人(膝関節症のリスクがあるが痛みや放射線学的兆候はなし)

• 平均BMI:27(過体重)

• 手法:参加者は食事頻度アンケートに回答し、MRIで太ももの筋肉の質を評価

 

研究者は、太ももの筋肉内脂肪(筋繊維の間や筋繊維束の間に蓄積する脂肪)の割合を調査し、これが超加工食品の摂取量とどのように関連するかを解析しました。

 

【結果】

1. 超加工食品の摂取量と筋肉内脂肪の増加

超加工食品の摂取量が多いほど、筋肉内の脂肪量が増加していることがMRI画像で確認されました。

これを示す指標としてGoutallierグレード(筋肉内の脂肪と健康な筋肉組織の比率)が使用され、摂取量が多いほどグレードが悪化していました。

 

2. 超加工食品が原因かどうか

この関連性は、体重(BMI)、摂取カロリー、年齢、性別、運動量などを調整した後でも有意であることが判明しました。

つまり、体重や運動習慣に関わらず、超加工食品そのものが筋肉内脂肪の増加に寄与している可能性があります。

 

3. 慢性疾患のリスク増加

筋肉内脂肪の増加は、変形性膝関節症(OA)、2型糖尿病、肥満といった慢性疾患のリスクを高めることが以前から示されています。

今回の研究は、超加工食品がこれらの病気の発症リスクを高めるメカニズムの一部を明らかにしました。

 

 

限界と今後の課題

この研究は超加工食品と筋肉との間に重要な知見を提供しましたが、いくつかの注意点も存在します。

  

1. 因果関係は不明

この研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではありません。

例えば、超加工食品の摂取が直接筋肉内脂肪を増やしたのか、他の要因が関与しているのかは分かっていません。

 

2. 食事データの信頼性

参加者の食事頻度は自己申告に基づくため、正確性に欠ける可能性があります。

実際の摂取量との誤差があるかもしれません。

 

3. 筋肉内脂肪の測定方法

MRIでの測定は定量的な方法としては十分ではない場合があります。

より精密な測定方法が求められます。

  

 

筋肉を健康に保つためにできること

 

超加工食品の摂取を減らすだけでなく、以下のような習慣が筋肉の健康維持に役立つとアドバイスされています。

 

1. 運動習慣を取り入れる

筋力トレーニングや有酸素運動は、筋肉量を増やし、筋肉内脂肪を減らす効果があります。

特に、定期的な運動は変形性膝関節症の予防にもつながります。

 

2. バランスの良い食事を心がける 

砂糖や塩分が少なく、栄養価の高い食品を選ぶことが好ましいです。

• 果物や野菜

• 全粒穀物

• ナッツや種子

 

3. 食生活を見直す 

超加工食品を完全に排除するのは難しいかもしれませんが、摂取量を減らすことが重要です。

外食よりも自炊をする機会を増やし、新鮮な食材を使用することで加工食品の摂取を自然と減らすことができます。

  

 

まとめ

・超加工食品の摂取は筋肉内脂肪の増加と関連し、運動能力や健康に悪影響を及ぼす可能性がある

・これらの影響は体重や運動習慣に関係なく見られ、慢性疾患のリスクも高まる

・健康な筋肉を維持するためには、超加工食品を減らすこと、運動習慣を持つこと、バランスの取れた食事を心がけることが重要

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