科学

摂取カロリーを減らすと寿命が延びるが、リスクも隠れている

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間欠的ファスティング、16時間断食、プチ断食食……などなど、食事(カロリー)を摂取するタイミングを減らすことで健康的になろうという取り組みは様々あります。

 

食事の量を減らしたり、食事を控えることは、寿命を延ばすための効果的な方法かもしれませんが、注意すべき条件があります。

 

アメリカの大規模な動物実験により、カロリー制限や断続的な断食がマウスの寿命を延ばす効果が確認されました。

 

しかし、単に摂取カロリーを減らすだけではなく、体重の減少や代謝の変化が健康リスクをもたらす可能性があることも明らかになりました。

 

この研究は、寿命に関わる重要な要因として、遺伝の影響が代謝を上回ることを示唆しており、食事制限による寿命延長のメカニズムについて再考する必要性を提起しています。

 

また、人間の健康維持においても、単純な体重管理だけではなく、遺伝や代謝のバランスを考慮することの重要性が示されています。

 

以下に、今回のテーマとして取り上げていきます。

 

参考記事)

Eating Less Can Extend Lifespan But There’s a Hidden Catch, Scientists Say(2024/10/15)

 

参考研究)

Dietary restriction impacts health and lifespan of genetically diverse mice(2024/10/09)

  

  

摂取カロリーを減らすと寿命が延びるが……

  

アメリカ(Calico Life Sciences LLC)による1,000匹近いマウスを対象とした大規模な動物実験の結果、食事制限による代謝の変化や体重減少が、健康に悪影響を及ぼす可能性があることが示唆されました。

   

これまでの多くの研究によって、食事制限がサルやショウジョウバエ、マウス、線虫など様々な動物の寿命を延ばすことが一貫して示されています。

 

しかし、ヒトにおける臨床研究は倫理的な問題によって実施が難しく、同じことが人間にも当てはまるのかどうかははっきりしていません。

 

極端なカロリー制限ではない方法、例えば医師の専門家のも管理とで断食を使った観察的調査では、食事制限による恩恵が、早死にするリスクを減らす可能性があることが示唆されています。

 

また、体重や体脂肪の減少、心血管代謝リスクの低減が寿命延長に大きく寄与している可能性があります。

 

しかし、これらの変化が直接的に寿命延長に結びついているかどうかは、調査対象のサンプル数や調査期間が限られているため、明確にはなっていません。

 

研究者たちは、960匹の遺伝的に多様なメスのマウスに対し、カロリー制限の程度や断続的な断食の影響を評価しました。

 

その結果、適度に空腹な状態を保つことで、寿命がわずかに延びるという過去の研究結果が裏付けられました。

 

特にカロリーを大幅に制限されたマウスは、生後6か月の時点から18か月の時点までに体重の約4分の1を減らしたのに対し、通常の食事をしたマウスは体重が約4分の1増加しました。

 

注目すべきことに、大幅にカロリー制限されたマウスは、平均で約9か月長生きし、これは通常の食事をしたマウスに比べて3分の1以上の延命効果となりました。

 

 

カロリー制限によるリスク

 

平均値だけを見ると、カロリー制限を受けたマウスの寿命は延びたように見えますが、各グループ内には大きなばらつきがありました。

 

特に大幅なカロリー制限を受けたマウスの中には、他のマウスよりも早く死んでしまったものも多く、カロリー制限のメリットを享受できないグループも一定数確認できました。

 

Dietary restriction impacts health and lifespan of genetically diverse mice より

 

・対象:食事制限をした960匹のメスのマウスと寿命との関係(⚪︎ヶ月)

AL=自由(188匹)

1D=週に1日の断食(188匹)

2D=週に2日連続の断食(190匹)

20%=摂取基準より20%のカロリー制限(189匹)

40%=摂取基準より40%のカロリー制限(182匹)

 

この結果から、カロリー制限グループの中で体重を維持できたマウスほど、長生きする傾向がありました。

 

一方、40%のカロリー制限は、筋肉量の減少や免疫系の変化が見られ、感染リスクが増す可能性が示されました。

 

また、断続的な断食は高体重のマウスに対しての効果が低く、2日間の断食は赤血球に悪影響を与えることが確認されました

 

これは、代謝の調整がカロリー制限による寿命延長の主要な要因ではない可能性を示唆しています。

 

研究者たちは、寿命の長さを決める上で遺伝が非常に重要な役割を果たしていると報告しています。

 

また、ストレスの多い状況であっても体重を維持できたマウス、および白血球の割合が多く、赤血球のサイズのばらつきが少ないマウスは、長生きする可能性が高いことも示されました。

 

つまり、ストレスに強く、しっかりとした体格を持つマウスは、厳しい環境の中で生き残りやすく、結果的に長生きする傾向が見られるということです。

 

しかし、なぜ断食やカロリー制限が一部のマウスの寿命を延ばすのか、その確信には至っておらず、今後も研究が必要な複雑な問題です。

 

これまで考えられていたよりも、体重減少や代謝とは別の要因が関与している可能性が高いのではないかと研究者らは推測しています。

 

この研究結果は、マウスと人間の生理学的な違いを考慮しつつも、私たちが自分の食事、健康、そして寿命について考えるきっかけになるかもしれません。

 

 

まとめ

・カロリー制限や断食でマウスの寿命が延びるが、代謝変化や体重減少が健康リスクを伴う場合がある

・長寿の鍵は代謝よりも遺伝要因が強く影響する

・研究は、健康維持と食事制限のバランスを見直す必要性を示唆している

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