血管に強い圧力がかかる高血圧。
塩分の過剰摂取や肥満、飲酒や喫煙、腎臓の障害など様々な原因がありますが、特に食事が原因となる高血圧は、多くの人が知らずのうちにやっている悪習慣です。
塩分の摂取によって血液内の塩分濃度が高まると、血管に水分送り出して濃度を薄めようとします。
その際、血管に通常よりも大きな圧力がかってしまうことが、いわゆる塩分摂取による高血圧です。
高血圧状態が長く続くと、血管が張り詰めた状態になったり、血管を構成している細胞が傷ついたりします。
それらを修復しようとする過程で、血管が太くなったり硬くなったりします。
血管の柔軟性が失われると、心筋梗塞や脳梗塞などの血管疾患に陥りやすく、死に直結する病きを引き起こす可能性が高まります。
そんな悪者にされやすい高血圧ですが、運動などによって血管内の圧力が高まることは、実は良い効果をもたらすことが最近の研究で明らかになってきました。
今回のテーマとして以下にまとめていきます。
参考記事)
・Vigorous Exercise May Protect Your Brain If You Have High Blood Pressure(2024/06/26)
参考研究)
・Effect of vigorous-intensity physical activity on incident cognitive impairment in high-risk hypertension(2024/06/06)
運動による高血圧の利点
2024年6月に米ウェイク・フォレスト大学が発表した研究結果から、50歳以上における身体活動(運動)は、血圧の低下、心臓機能の改善、認知機能低下を遅らせるなど、多くの利点がある可能性が報告されました。
研究では、米国の成人9,361人のデータセットが使用されました。
対象者は全員50歳以上の非糖尿病で、高血圧や心血管疾患のリスクが高い傾向がありました。
活発な身体活動としてカウントされる基準は人それぞれですが、ここでは一般的な基準である、脈が乱れて息が切れるレベルの運動を行った場合としています。
例として、ジョギングは活発な身体活動とし、軽めのウォーキングなどはカウントされません。
この前提のもと、週に少なくとも1度でも活発な身体活動(vigorous physical activity =VPA)を行っている場合、認知機能低下のリスクが減ることが示されました。
軽度の認知障害または認知症の発症割合で比べると、活発な運動をしていないグループの発症率が11.7%なのに対し、活発な運動を行ったグループでは発症率が8.7%と有意な差が示されました。
全体として参加者は70.0(±9.2)歳、うち34.5%が女性で、59.4%が白人、59.3%が少なくとも週に1回、活発な運動を行っていると報告されました。(高VPAグループ)。
また、低VPAグループの参加者は 次のような傾向がありました。
・女性
・喫煙者である可能性が高い
・教育に関わる時間が少ない
・BMIが高い
・CKD(慢性腎臓病)の有病率が高い
・降圧薬をより多く使用している可能性が高い
その後の追跡調査においても、高い身体活動を行っていた高齢者は、認知力の低下に関する行動が少ないことが示されました。(下図参照)
しかし、運動の保護上の利点は、75歳を超えるとそれほど強くないようです。
研究の第一人者であるカジブエ氏は、「予想よりも多くの高齢者が運動に従事していることは喜ぶべきニュースである。また、運動の重要性を認識している高齢者は、より高い強度で運動する傾向があることを示唆している」と述べています。
この研究での注意点は、対象者それぞれが独自に異なった運動を行っている点です。
詳しい運動の内容まで評価されていないため、どういった激しい運動が認知機能の低下防止や、認知症の予防に繋がるのかは明らかではありません。
しかし、同大学の以前の研究で、身体運動と認知症のリスクの低下との間に強い関連性があることは確認されており、運動が血圧の管理にも役立つこともわかっています。
研究チームは、この関係をさらに詳しく分析するため、より詳細に運動を記録し、より幅広い被験者(高血圧のない被験者を含む)を対象とした研究を行っていくとしています。
いくつになっても、運動による恩恵は大きいようです。
こういった予防医学が発達すれば、薬に頼らず認知症の進行を遅らせる方法が見つかるかもしれませんね。
この研究は、 Alzheimer’s & Dementia: The Journal of the Alzheimer’s Associationにて詳細を確認することができます。
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