近年、グルテンフリー食品の人気が高まっており、健康的なライフスタイルの一環として、グルテンを含まないパンやパスタ、シリアルなど、食品の選択肢が増えています。
一方、クレムソン大学による最新の研究によると、グルテンフリー食品は必ずしも健康的な選択肢ではないことが明らかになりました。
この研究では、グルテンフリー食品は一般的に糖分やカロリーが高く、タンパク質や食物繊維、その他の必須栄養素が少ないことが判明しました。
さらに、専門家は、特別な理由がない限り、グルテンフリー食品を選ぶべきではなく、できるだけ自然な食品を摂取することが健康に良いと指摘しています。
では、なぜグルテンフリー食品がこれほどまでに人気を集めているのでしょうか?
本当に健康のために避けるべきものなのでしょうか?
本記事では、最新の研究結果をもとに、グルテンフリー食品の栄養価と健康への影響について解説します。
参考記事)
・Study Shows Gluten-Free Diets May Not Be the Health Boost You Think(2025/03/04)
参考研究)
・Gluten-free Diet, a Friend or a Foe, an American Perspective(2025/03/04)
グルテンフリー食品の人気と誤解

グルテンフリー食品は、もともとセリアック病(グルテンに対する自己免疫疾患)や小麦アレルギー、グルテン過敏症の人々のために開発されました。
これらの疾患を持つ人々にとっては、グルテンの摂取が消化器系の不調や炎症、栄養吸収障害を引き起こすため、完全に避ける必要があります。
アメリカでは、セリアック病の人は人口の約1%、グルテン過敏症の人は最大6%と推定されています。(Non-celiac gluten sensitivity: All wheat attack is not celiacより)
※日本人におけるデータはこちらの記事にて解説しています
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これは決して小さな数字ではありませんが、それ以外の人々がグルテンフリー食品を選ぶ必要はあるのでしょうか?
実際、ある調査によると、グルテン過敏症の診断を受けていないにもかかわらず、約22%の人が「健康に良い」という理由でグルテンフリーの食生活を試していることが分かりました。(Determinants of gluten-free diet adoption among individuals without celiac disease or non-celiac gluten sensitivityより)
参考記事では、「グルテンフリーが体重管理や糖尿病予防、認知機能の向上、骨の健康促進に役立つという誤解が広まっている」としています。
このような誤解が生まれた理由の一つとして、健康や美容に関する情報を発信するメディアやインフルエンサーの影響が考えられます。
また、グルテンやその代謝の過程で生まれるグリアジンやグルテンペプチド、それら作用するメカニズムなどを知らずに発信している場合がほとんどです。
※メカニズムの参考記事
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また、クレムソン大学の分子育種学の准教授であるSachin Rustgi氏は、「グルテンを避けることで体重管理ができる、糖尿病のリスクを減らせるといった主張には、科学的根拠がない」と指摘しています。
つまり、グルテン不耐症などを起因とする消化管疾患の治療には有効なものの、巷で言われているような、体重管理や糖尿病予防などへの効果は不明ということです。
研究:グルテンフリー食品と通常の食品の栄養価を比較
これまでにもグルテンフリー食品の栄養価に関する研究はありましたが、多くはアメリカ国外で行われていました。(An investigation into the nutritional composition and cost of gluten-free versus regular food products in the UKより)
そこで、Rustgi氏らは、アメリカ市場に出回っているグルテンフリー食品と、同じメーカーのグルテンを含む製品を比較する研究を行いました。
【対象となった食品】
種類:
• 焼き菓子(クッキー、マフィン、ケーキなど)
• スナック類(チップス、クラッカーなど)
• 調理済み食品(冷凍食品、レトルト食品)
• 朝食用食品(シリアル、パンケーキミックスなど)
分析項目:
• カロリー含有量
• 糖分含有量
• 食物繊維含有量
• タンパク質含有量
• 価格
この比較の結果、グルテンフリー食品には以下の特徴があることが分かりました。
【グルテンフリー食品の特徴】
1. 糖分が約5%多い
• 特に焼き菓子は、グルテンを含む製品よりも糖分が多く含まれていた
2. カロリーが高い
• グルテンフリー食品の平均カロリーは100gあたり377.88キロカロリーであり、通常の製品(352.02キロカロリー)よりも高い結果となった
3. タンパク質が少ない
• グルテンを含む製品のタンパク質含有量は1.24~76.67gだったのに対し、グルテンフリー製品は0~32.5gだった
• 特にトルティーヤ、パンケーキ・ワッフルミックス、種入りパン、ヌードルなどの一般的なグルテンフリー食品は、グルテンを含む類似品の半分以下のタンパク質量だった
なぜグルテンフリー食品は栄養価が低いのか?
グルテンフリー食品の多くは、小麦粉の代わりにコーンスターチ、コーンフラワー、米粉などを使用しています。
これらの原料は、炭水化物が多く、タンパク質が少ないため、グルテンを含む食品よりも栄養価が低くなりがちです。
一方で、グルテンフリー食品の食物繊維含有量は、グルテンを含む食品よりも平均22%高いことが分かりました。
これは、イヌリンやアマランサスなどの食物繊維が添加されているためだと考えられます。
健康のために本当にグルテンフリー食を選ぶべきか?
セリアック病や小麦アレルギー、グルテン過敏症の人は、当然ながらグルテンを避ける必要があります。
しかし、それ以外の人にとっては、グルテンフリー食を選ぶことで健康に悪影響を及ぼす可能性もあると専門家は警告しています。
管理栄養士のHalle Saperstein氏は、「グルテンを避けることで、健康的な食生活に必要な栄養素が不足し、栄養欠乏症や消化器系の問題、さらには体重増加につながる可能性がある」と述べています。
また、Weill Cornell Medicineの管理栄養士Shonali Soans氏は、「食品が健康的かどうかは、グルテンの有無ではなく、原材料と加工方法による」と指摘しています。
まとめ
・グルテンフリー食品は糖分・カロリーが高く、タンパク質が少ない傾向がある
・特別な理由がない限り、グルテンフリー食品よりも自然食品や全粒穀物を選ぶ方が健康的
・加工食品を選ぶ際は、添加物や精製糖を避け、栄養バランスを考慮することが重要
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