「認知症予防には運動が効果的」という研究は、過去にも様々な大学の調査から報告されています。
ジョンズホプキンス大学の研究によると、週35分の中程度から高強度の運動を行うと、認知症のリスクが41%低下することが分かりました。
また、週にわずか数分の運動でも脳の健康を守る効果があるとされています。
特に注目すべきは、足腰の筋力が低下した高齢者でも少しの運動で認知症予防に効果が期待できるという点です。
少しの運動を続けることで脳の健康を守れる可能性があるというのは、多くの人の希望と言えます。
今回はそんな運動と認知症に関する研究がテーマです。
参考研究)
・Moderate-to-Vigorous Physical Activity at any Dose Reduces All-Cause Dementia Risk Regardless of Frailty Status(2025/01/15)
研究の概要と分析方法
本研究では、89,667人の成人を対象に、平均4.4年間のデータが分析されました。
参加者の中央値年齢は63歳で、彼らの活動量は手首に装着する専用の活動量計で記録されました。
その結果、運動量に応じて認知症リスクが大きく異なることが明らかになりました。

週36~70分の運動:認知症リスクが60%低下
週71~140分の運動:認知症リスクが63%低下
週140分以上の運動:認知症リスクが69%低下
わずか35分の運動でも大きな効果があり、運動量が増えるほどリスクの低下が見られることが分かりました。
これまでの研究でも、運動が脳の健康を保つ重要な要素であることが示唆されていましたが、今回の研究によりその関連性がさらに強く支持されました。
虚弱な高齢者にも効果が期待できる
この研究のもう一つの重要な発見は、虚弱な高齢者であっても、少量の運動で認知症リスクを低減できる可能性があるという点です。
ジョンズホプキンス大学の疫学者Amal Wanigatunga氏は、「1日わずか5分の運動でも、認知症のリスクを減らせる可能性がある。」と述べています。
これは、運動習慣がない人でも、少しずつ体を動かすことで健康への良い影響を得られることを意味します。
たとえば、短い散歩を日課にするだけでも効果があるかもしれません。
また、高齢になってからでも運動を始めることで、長年の運動不足の影響を逆転させることができることも、過去の研究で示されています。
運動は単に筋力を向上させるだけでなく、脳の構造にも変化をもたらす可能性があるのです。
なぜ運動が認知症予防に役立つのか?

今回の研究では、運動と認知症リスクの低下の間に明確な関連性が見られましたが、運動がどのようにして脳を保護するのかについては、さらなる研究が必要です。
しかし、これまでの研究では、運動が脳の特定の領域を活性化し、神経細胞の成長を促進することが示されています。
特に、学習や記憶を司る「海馬」と呼ばれる脳の部位が、運動によって大きくなることが報告されています。
また、運動は血流を促進し、脳に十分な酸素と栄養を供給することで、神経細胞の健康を維持する助けとなる可能性があります。
これにより、加齢による脳の萎縮や神経細胞の損傷を遅らせることができると考えられます。
認知症予防のために今日からできること
研究者たちは、どんな年齢でも、どんな健康状態でも、少しの運動が脳の健康に良い影響を与えると強調しています。
日常に取り入れやすい運動習慣としては、以下のようなものが紹介されています。
短い散歩を習慣化する(例えば、食後に10分歩く)
家の中でも体を動かす(テレビを見ながら軽いストレッチをする)
階段を使う機会を増やす(エレベーターではなく階段を使う)
特に、一度に長時間の運動をする必要はなく、こまめに体を動かすことが重要です。
たとえば、5分の運動を1日に数回行うだけでも、脳に良い影響を与える可能性があります。
まとめ
・週35分の運動で認知症リスクが41%低下することが研究で確認された
・虚弱な高齢者でも、少量の運動を行うことで認知症予防に効果が期待できる
・運動は脳の構造を変え、血流を促進することで健康を維持する可能性がある
コメント