【前回記事】
この記事では、山口謠司氏が著した“面白くて眠れなくなる日本語学”より、個人的に興味深かった内容を紹介していきます。
著書内で語りきれていない点などもの補足も踏まえて説明し、より雑学チックに読めるようにまとめていく積もりです。
今回のテーマは“平安時代からある絵文字文化”です。
平安時代からある絵文字文化
絵文字と言えば、英語で“Emoji”として定着するほど知られた日本の特徴的な文化です。
実際はEmojiの“E”は絵という意味ではなく、“emotional”のEではありますが……。
文章の最後に絵文字があることでちょっとクスッとくるような表現ができたり、相手を労る気持ちを伝えたりすることができたりと何かと便利で、自分もよく使用します。
そんな絵文字ですが、実は大昔から使われていたことが分かっています。
今からおよそ1000年前、平安時代中期の歌人・文人である藤原公任(ふじわらのきんとう)が編纂した“葦手歌切(あしでうたぎれ)”にはこう記されています。
葦手歌切
「あさみどりいとよりかけて白露を たまにもぬけるはるのやなぎか」
この文章の「あさみどり(浅緑)」の“あ”を見てみると、まるで葦の葉のようなものが描かれています。
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「たまにもぬける(珠にも抜ける)」の“ぬ”も葦の葉をイメージした文字となっています。
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「はるのやなぎか(春の柳か)」の“の”は雲をイメージしたもの、“や”は鶴のような鳥をイメージしたものになっています。
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こんなに昔の頃から文字を生き生きさせて使っていたのですね。
大河ドラマ“光る君へ”にも登場する藤原公任
藤原公任は、2024年~放送の大河ドラマ“光る君へ”において町田啓太がその役柄を演じます。
幼い頃から文化人として優れた才能を発揮した人物とされ、藤原道長にもその才能を認められていました。
故事“三舟の才(さんしゅうのさい)”では、道長が選び抜いた名人が、和歌の舟、漢詩の舟、音楽の舟に乗せる際、公任だけは「どの船に乗っても良い」と道長のお墨付きを貰ったそうな。
公任は和歌の舟に乗り、「小倉山 嵐の風の 寒ければ 紅葉の錦 着ぬ人ぞなき」と詠んで絶賛されました。
その後公任は「それだけ好評なら、短歌の舟ではなくもっと難しい漢詩の舟に載って詠えば良かった」と謎の余裕を見せつけてくるという……。
このことから“漢詩・和歌・管弦の三つの才能を兼ね備えていること”を三船の才(三舟の才)と言うようになったようです。
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