心理学

【心理学の歴史⑰】権威はどこまで人を残酷にさせるか ~ミルグラムの服従実験〜

心理学

【前回記事】

 

この記事は、著書“心理学をつくった実験30”を参考に、”パヴロフの犬”や”ミルグラム服従実験”など心理学の基礎となった実験について紹介します。

   

「あの心理学はこういった実験がもとになっているんだ!」という面白さや、実験を通して新たな知見を見つけてもらえるようまとめていこうと思います。

   

今回のテーマは、“ミルグラムの服従実験”です。

  

以前記事にした内容を参考に、本書の内容も含めてまとめていきます。

   

        

         

【本書より引用(要約)】

スタンレー・ミルグラム(1933~1984年)

  

イェール大学の心理学者スタンレー・ミルグラムは、前回紹介した“アッシュの同調実験”を務めた人物です。

  

アッシュの同調実験では、問いの答えが明らかに答えが間違っていたとしても、被験者以外の人達が皆間違った答えを選んでいると、その被験者も間違った答えを選択してしまう可能性が高くなる、という研究結果を表わしていました。

  

この研究結果には、“問いが特に重要なものではなかった(線を選ぶだけだった)ため、被験者は真剣に答えを選んでいない”という指摘がありました。

  

これを受けミルグラムは、“人の生命に関わるほどの重大な選択だった場合はどうなのか”を実験しました。

  

その実験こそ、今回紹介する服従実験です。

  

では、受験の概要を見ていきましょう。

 

【実験】

実験の対象者は、弁護士から建設労働者まで様々な社会的な階層からなる成人男性40人です。

 

彼らが実験室に入るとまず最初に報酬が支払われ、「実験を途中で辞退するようなことがあっても、返金する必要がない」と告げられました。

  

被験者は二名が同時に実験室に呼ばれましたが、本物の被験者はこのうち一名で、もう一名は台本をもとに演じてもらっている協力者です。

  

まず、試験監督者からこの実験では教師役と生徒役に分かれてもらうことが説明されます。

 

それぞれの役はくじ引きによって決められますが、本物の被験者が教師役、実験協力者が生徒役になるように操作されています。

  

生徒役は専用の部屋に入り、電気ショックが流れる椅子に座らされ体をベルトで固定されました。

  

教師役は別の部屋に通され、生徒役の部屋を窓から見ることができます。

 

  

ここから、教師役と生徒役による実験が行われます。

  

教師役は、用意された問題を生徒役に出すように指示されました。

  

生徒役は、教師役が読み上げる、「赤い-リンゴ」「速い-自動車」といったペアになる言葉を記憶し、四つの選択肢の中から正解を選んで対応するボタンを押すというものでした。

  

教師役がいる部屋には、“電気ショック発生器”と書かれた箱があり、15ボルトから450ボルトまで合計30段階の電圧を指定するスイッチが付いていました。

 

さらに、電圧の表記と一緒に、「微弱なショック」「中程度のショック」「激しいショック」など与える電気の強さも表記されていました。

  

【ショックの強さ】

・15ボルト:軽度のショック

・75ボルト:中度のショック

・135ボルト:強いショック

・195ボルト:かなり強いショック

・255ボルト:激しいショック

・315ボルト:非常に激しいショック

・375ボルト:危険で苛烈な衝撃

・435ボルト:(但し書き無し)

・450ボルト:(但し書き無し)

  

教師役は実験監督者から、このスイッチを使って生徒役に電気ショックを与えることになるとも説明されました。

  

さて、ここから教師役は問題を出し、生徒役が正解を答えていきます。

  

ここで生徒役と実験者は、意図的に問題を間違えることと、教師役が与える電気ショックに合わせて演技をするように打ち合わせていました。

  

教師役は生徒役に順番に問題を出題していきました。

  

そして、一問間違えるたびに電気ショックの電圧を一段階ずつ上げていきました。

  

初めのうちは、生徒役は特に痛みを訴えたりすることはありませんでした。

  

しかし300ボルトに達するところから、壁をドンドン叩いたり叫び声をあげるようになっていきました。

  

【演技】

・75ボルト:不快感をつぶやく

・120ボルト:苦痛を訴える

・135ボルト:うめき声をあげる

・150ボルト:絶叫する

・80ボルト:「痛くてたまらない」と叫ぶ

・270ボルト:苦悶の金切声を上げる

・300ボルト:壁を叩いて実験中止を求める

・315ボルト:壁を叩いて実験を降りると叫ぶ

・330ボルト:無反応

・435ボルト:無反応

・450ボルト:無反応

  

窓の向こうの生徒役が苦痛を訴えるような仕草を見た教師役は、電気ショックを与えるスイッチを押すことを躊躇するような態度を見せ始めました。

  

そこで実験の監督者は、「続けてください」「あなたは続けなければなりません」などと言い続け、被験者である教師役がどこまでスイッチを押し続けるかどうかが観察されました。

  

そして、最高値の450ボルトに達するか、被験者がスイッチを押すことを拒否した段階で実験は終了となりました。

  

以上を踏まえた実験の結果は、以下の通りです。

  

  

被験者の中、300ボルト未満で実験継続を拒否したものは誰もいませんでした。

  

300ボルトでは5人、315ボルトでは4人、360vでは1人、375Vでは1人、最終的に26人の被験者が、実験監督者の指示に従い、最高値の450ボルトのスイッチを押しました。

 

実験前、イェール大学の心理学専攻学生14名の予想では、450ボルトまで電流を流す人は1.2%程度であろうと考えられていました。

  

しかし、実験の結果は彼らの予想に反し、被験者の約65%が最後の450ボルトまで罰を与えました。

  

生徒役の中には心臓病があることを聞いても変わりませんでした。

  

良心の呵責に耐えかね、実験の内容について申し出る人もいましたが、白衣を着た権威者が「あなた(被験者)に責任はない、我々が全ての責任を負う」ということを伝えると、300ボルトの罰を与えるまでは実験の中止をする者はいなかったのです。

  

  

実験から読み取れること

アッシュの同調実験では線分の長さという比較的重要度の低い選択肢しかありませんでしたが、今回のミルグラムの服従実験では、他人の苦痛や命を左右する状況においての行動が見て取れました。

 

この実験から、人の命に関わることであっても、強い権威を持った者が指示する場合や責任の所在が曖昧である場合など特殊な環境下において、“同調”はあり得るということが分かりました。

  

ただ、この結果はあくまで外的な条件が揃った際、そういった行動が起こるということを確認したまでです。

  

その行動がどのような意識や心の仕組みによって起こったかについては十分に説明されていません。

  

「やってはいけないのに、やらなくてはいけない」。

  

この相互に矛盾する状況をどのように説明すれば良いのか……。

  

この課題に立ち向かった人物がいます。

  

アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーです。

  

次回、彼が提唱した“認知的不協和理論”について見ていきます。

 

 

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