歴史

英国発祥の白色磁器製法〜ボーンチャイナ〜

歴史

 

透明感のある美しい白、光沢のあるつるっとした手触り、それに裏付けられた確かな歴史……。

 

磁器には特有の美しさがあります。

 

かつてはその美しさ故に、白い金とも揶揄された白色磁器。

 

現代ではこれといった特徴のない白い磁器を、特別なものとして捉えることはほとんどないと思います。

 

今では製法が確立され、ある程度の技術があればなんとでもなってしまうからです。

 

かつてのヨーロッパでは、白い磁器を作るために各国がしのぎを削っていました。

 

とある国では、本来必要とする素材が見つからず、それまで知られていた製法とは異なった方法で磁器を作る術を発見しました。

 

今回は、そんな異なった製法で作られた白色磁器“ボーンチャイナ”についてのお話です。

 

ボーンチャイナ(BONE CHINA)という磁器の種類を聞いたことはありますか?

 

骨灰磁器とも称され、ヨーロッパで磁器が作られるようになってから広く利用される白色磁器です。

 

チャイナという名称から、中国産の磁器か何かと感違いしてしまう方もいますが、実際は製法の名前なだけであり特に関係はありません。

 

 

ボーンチャイナの誕生

 

ボーンチャイナの歴史において、その名の起源を辿ると中国に行きつきます。

 

17世紀に入り、中国の景徳鎮を代表とする磁器がヨーロッパで人気を博したことで、王侯貴族が買い集めるほどの一大ブームを引き起こしました。

 

当時、磁器を表す言葉が定まっていなかったため、白色に輝く磁器を“チャイナ”と呼ぶようになりました。

 

これがボーンチャイナにおける“チャイナ(CHINA)”の語源です。

 

ではボーン(BONE)の語源はなんでしょう?

   

ボーンは書いて字の如く“骨”を表しています。

 

 

1710年にドイツのマイセンが白磁の製造方法を確立したことによって、ヨーロッパにおいても磁器を生産できる体制が整いました。

 

極秘であった白磁の焼成技術は、エージェントデュ・パキエによってオーストリアに流出、その後フランス、イタリアなど周辺各国も次々と磁器を製造することができるようになりました。

 

しかし、海を隔てたイギリスでは、磁器を作るための方法はわかっていたようですが、素材である“カオリン”を入手することができず、磁器焼成において各国に遅れをとっていました。

 

ある時、元肖像画家のトーマス・フライが、動物の骨を焼いて灰にしたものを原料に混ぜて焼くと、乳白色かつ透明感のある焼き物ができることを発見します。

 

これが、ボーンチャイナの“ボーン(BONE)”の語源です。

 

彼は、1748年ロンドンのボウ窯にてこの製造方法の特許を取得。

 

こうしてボーンチャイナの原型がつくられていきます。

 

ウェッジウッド グレンミストシリーズ ボーンチャイナ

 

 

ボーンチャイナと牛骨

通常、動物の骨を磁器に混ぜて焼く際、骨の中の鉄分が変質し、完成した磁器に黒ずみを残してしまいます。

 

牛骨の場合は、鉄分がほとんどなく、リン酸三カルシウムが豊富なため、白い陶器を作るのに適しています。

 

牛の骨灰と粘土、釉薬を加えて焼くことで、透明感のある美しい白磁が出来上がります。

 

牛骨が25〜30%含まれたものはボーンチャイナ、50%以上含まれたものはファインボーンチャイナと呼ばれます。

    

 

ボーンチャイナと磁器の違い

ボーンチャイナは磁器の一つに数えられますが、はっきりとした違いもあります。

 

それは成分焼成方法です。

 

【成分】

通常の磁器は、白さを出すために“カオリン”を使います。

 

対して、ボーンチャイナは、上の項でお話した通り、“牛骨”を使います。

 

イギリスでは素地に骨灰が35%以上含まれているものをボーンチャイナと区別しますが、日本では30%以上の者を指すなど、国によって企画が異なります

 

 

【焼成方法】

磁器とボーンチャイナでは焼成の仕方に違いがあります。

 

磁器は、酸素の多い“還元炎”を使い、およそ1,300℃の高温で焼き上げます。

 

ボーンチャイナは、酸素の少ない“酸化炎”を使い、およそ1,000~1,150℃と少し低い温度で焼き上げます。

 

磁器の1,300℃付近で焼くと、顔料によっては下絵付け時の塗料が壊れて発色が悪くなってしまうことがあります。

 

対して、ボーンチャイナはやや低い温度で焼成するため、磁器よりも多彩な顔料を選ぶことができる利点があります。

 

また、ボーンチャイナもガラス質のコーティング剤(釉薬)を塗りますが、一度目は釉薬を使わず高温で焼き上げ、二度目で釉薬をかけて焼き上げます。

 

この工程とリン酸カルシウム密の化学反応によって整った結晶構造ができ、磁器に比べておよそ2倍の強度を持つことができます。

 

 

まとめ

・ボーンチャイナ=ボーン(骨)+チャイナ(当時で磁器を表す言葉)

・トーマス・フライがボウ窯にて特許を取得

・磁器との違いは成分と焼成方法

  

以上、ボーンチャイナの発祥についてのまとめでした!

  

磁器の歴史に大きな影響を与えた製法であり、現在でもウェッジウッド、スポード、ロイヤルクラウンダービー、日本ではナルミ、ノリタケなど著名なメーカーが主力製品として作り続けています。

  

もし、メーカー品の磁器を使い機会があったら、裏面の製造方法を覗いてみてください。

 

いつもとは違う感覚で磁器を見ることができるかもしれません。

 

  

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