世界では毎年100億kgものコーヒー廃棄物が発生していると言われています。
コーヒーの出涸らしを乾燥させて消臭剤にしたり、発酵させて肥料にしたりと様々な工夫も可能ですが、一般的な使用量と比べて大量消費していくカフェや工場などではそうもいきません。
今回は、そんな廃棄するしかなかったコーヒーの残りカスについての研究を紹介します。
参考記事)
・Scientists Discover Amazing Practical Use For Leftover Coffee Grounds(2023/09/04)
参考研究)
・Transforming spent coffee grounds into a valuable resource for the enhancement of concrete strength(2023/09/sciencedirect)
コーヒーの残りかすが強度の高いコンクリートの材料に
ロイヤルメルボルン工科大学の研究者らは、炭化させたコーヒーかすを加工して混ぜ合わせることで、30%強度の高いコンクリートを製造できるという研究結果を報告しました。
RMIT大学のラジーブ・ロイチャンド氏は、「(コーヒー豆などの)有機廃棄物の処分の行方は、気候変動の原因となるメタンや二酸化炭素などの温室効果ガスを大量に排出するため、環境上の課題となっている」と述べ、廃棄物や処理の問題点を指摘しています。
建設市場は世界的に取引が盛んである、資源を大量に消費するコンクリートへの需要も増え続けています。
こういった建設資材の需要増加によって、世界中では天然砂の採取が続けられています。
今回の研究の成果は、廃棄物を活用することで砂の持続可能性を見出し、天然資源の保護に繋がるとして注目を浴びています。
本来、コーヒーかすのような有機素材は、建築材料の強度を弱める化学物質を漏出させるため、コンクリートに直接添加することはできません。
そこで研究チームは、コーヒーかすを350℃以上に加熱し、酸素を遮断しすること有機分子が分解する方法をとりました。
これによってバイオ炭と呼ばれる多孔質で炭素が豊富な炭ができ、この炭はセメントの構造と結合し溶け込むことができるようになります。
また、コーヒーかすを500℃で熱分解することも試みたが、得られたバイオ炭の粒子は300℃ほど強くはありませんでした。
研究者たちは、このセメント製品の長期的な耐久性を評価する必要があると注意を促しています。
研究チームは現在、凍結融解サイクル、吸水性、摩耗、その他多くのストレス条件下で、コーヒーとセメントのハイブリッド素材がどのように機能するかをテストしています。
また、木材、食品廃棄物、農業廃棄物など、他の有機廃棄物からバイオ炭を作ることにも取り組んでいます。
RMIT大学のエンジニア、シャノン・キルマーティン氏は、「私たちの研究はまだ初期段階ですが、これらの発見は、埋立処分される有機廃棄物の量を大幅に削減する革新的な方法を提供するものである」と述べています。
まとめ
・加熱処理された使用済みコーヒーかす(SCG)は、コンクリートの有機化合物を溶出する
・350℃~500℃で熱分解したSCGは、セメントマトリックスと強い結合を形成する
・350℃で熱分解したSCGで砂を15vol%置換すると、コンクリート強度が約30%向上する
・オーストラリアで生産される75,000トンの廃SCGの100%が構造用コンクリートに利用できる。
大規模な廃棄物にも応用可能な研究ですね。
今後、この素材が耐久試験をクリアした暁には、環境保全に大きく貢献することになるでしょう。
場合によってはその他の生ゴミなども同様に活用できる可能性もあるとして期待されています。
以上!コーヒーの残りかすの活用方法についての研究まとめでした。
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