朝食を食べない習慣は、ダイエットや時間の節約を目的として広く実践されています。
かつては自分も朝食を抜いて、昼食から摂取するという習慣をしばらく続けたことがあります。
特に近年は、16時間断食などの間欠的断食法が注目されていることもあり、朝食を抜くことが健康に良いのか悪いのかについて、多くの議論が行われています。
最新の研究や専門家の見解によると、健康な人が時々朝食を抜くこと自体は必ずしも有害ではありません。
しかし、朝食を習慣的に抜くことで、血糖値の調節機能や代謝機能に負担がかかり、特に糖尿病予備群や二型糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの代謝異常を持つ人では悪影響が大きくなる可能性があることが示されています。
また、朝食を抜くことで、その後の食事で血糖値が急上昇しやすくなる現象も報告されています。
参考記事)
・What Happens to Your Blood Sugar When You Skip Breakfast?(2026/06/26)
朝食を抜くと、体は血糖値を維持するために働く

朝食は英語で「Breakfast」と呼ばれますが、これは「断食(fast)を終える(break)」という意味を持っているのはご存知の方も多いかと思います。
この言葉の通り、朝食は一晩続いた絶食状態を終了させる重要な食事です。
朝食を抜くと、体は血糖値を正常範囲に維持するために、さまざまな代償機構を働かせます。
内分泌代謝専門医のRekha Kumar氏は、「食事を摂らない状態が続くと、膵臓から分泌されるインスリンが減少し、その代わりにグルカゴンというホルモンの働きが強くなる」と説明しています。
グルカゴンは、肝臓に蓄えられているグリコーゲンを分解し、血液中へのブドウ糖放出を促すホルモンです。
これによって、血糖値そのものは正常範囲に保たれますが、その維持のために身体は通常よりも大きな負担を受けることになります。
さらに、長時間の空腹状態では、遊離脂肪酸(NEFA:非エステル化脂肪酸)が血液中に増加します。
遊離脂肪酸とは、脂肪組織から放出される脂質成分のことで、エネルギー源として利用されます。
しかし、この状態が慢性的に続くと、インスリン抵抗性の発症につながる可能性があります。
インスリン抵抗性は、インスリンが十分に分泌されていても細胞が反応しにくくなる状態であり、二型糖尿病の重要な原因の一つです。
脳のエネルギー供給が不足する可能性がある
脳は非常に大量のエネルギーを消費する臓器であり、通常はブドウ糖を主要なエネルギー源として利用しています。
登録栄養士のKelly Candela氏によると、長時間食事を摂らない場合、一部の人では以下のような症状が現れることがあります。
・集中力低下
・頭がぼんやりする感覚
・イライラ
・頭痛
・倦怠感
これらは一般的に「脳のエネルギー不足」によって引き起こされると考えられています。
空腹状態が長く続くと、体は脂肪を分解してケトン体を産生します。
ケトン体とは、糖質が不足した際に脂肪から作られる代替エネルギー源です。
ケトン体は脳のエネルギーとして利用できますが、人によっては認知機能の低下や「ブレインフォッグ(頭がぼんやりする感覚)」を引き起こすことがあります。
ただし、この影響には個人差が大きく、長期間のケトジェニックダイエットに適応した人では必ずしも同様の症状が出るとは限りません。
朝食を抜くと昼食後の血糖値が大きく上昇する

近年の研究では、朝食を抜くことで、その後の昼食や夕食後の血糖値上昇が通常より大きくなる現象が懸念されています。
Kelly Candela氏によると、健康な成人でも朝食を1回抜いただけで、昼食後の血糖値上昇が40〜50%高くなる場合があると報告されています。
その理由としては、インスリン分泌の準備が整っていないこと、肝臓からの糖放出が継続していること、インスリン感受性が一時的に低下していることなどが考えられています。
ただし、この数値については研究条件によって差があり、すべての人に同じ程度の血糖上昇が起こることが確定しているわけではありません。
空腹感が強まり、結果的に体重増加につながる可能性
朝食を抜くと、一日を通じた空腹感が増加することが複数の研究で示されています。
長時間の絶食後には、グレリン(食欲刺激ホルモン)の増加、血糖値が急上昇、インスリン分泌量の増加が起こります。
その結果、甘いものが欲しくなる、高脂肪食品を選びやすくなる、食べ過ぎにつながる傾向も示唆されています。
一方で、朝食を抜いても総摂取カロリーが増えない人も存在するため、「朝食を抜く=太る」と断定することはできません。
研究結果は現在も一致していない部分があります。
朝食を抜くことは体内時計を乱す可能性がある
私たちの体には、約24時間周期で働く概日リズム(サーカディアンリズム)があります。
概日リズムとは、睡眠や体温、ホルモン分泌、代謝などを調節する体内時計システムのことです。
ニューヨーク大学グロスマン医学部の内分泌専門医Gillian Goddard氏によると、人間の代謝は時間帯によって変化します。
一般的に、朝はインスリン感受性が高い、午後になるにつれて低下する、夜間にはさらに低下することが知られています。(Dawn Phenomenonより)
つまり、人間の体は本来、朝に糖質を処理しやすいよう設計されている可能性があります。
そのため、朝食を抜くことは、この生理的な代謝リズムと逆行する可能性があると考えられています。
特に影響を受けやすい人たち
専門家によれば、以下の人々は朝食欠食の影響を受けやすい可能性があります。
・糖尿病予備群
・二型糖尿病患者
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者
・更年期移行期の女性
・朝に高強度運動を行う人
特にPCOSでは、女性ホルモンであるエストロゲンの変動がインスリン感受性に影響を及ぼします。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、排卵異常や男性ホルモン過剰を特徴とする女性の内分泌疾患であり、インスリン抵抗性を伴うことが少なくありません。
Rekha Kumar氏は、女性ではホルモン変化によって血糖値やストレスホルモンであるコルチゾールへの反応性が高まるため、朝食を抜いた際の影響がより大きくなる可能性を指摘しています。
血糖値を安定させる朝食とは
専門家は、血糖値の急上昇を防ぐため、以下の栄養素をバランスよく摂取することを推奨しています。
・タンパク質(約25g)
・良質な脂質
・水溶性食物繊維
・低〜中GIの炭水化物
具体例としては、以下が推奨されています。
・卵や全粒穀物
・ギリシャヨーグルトやベリー類
・納豆や玄米
・オートミールやナッツ
・豆類を含む食事
「流行の食事法」ではなく、「自分の体の反応」を重視

今回紹介された知見は、「朝食は全員が食べるべき」という単純な結論を示しているわけではありません。
むしろ重要なのは、自分自身の代謝状態や生活リズムに合わせて食事時間を調整することです。
健康な人では、時々朝食を抜くことが大きな健康被害につながる証拠は十分ではありません。
しかし、血糖値異常や代謝疾患を持つ人、朝に強い空腹感や倦怠感を感じる人では、規則的な朝食摂取が健康維持に役立つ可能性があります。
特に間欠的断食を実践している人でも、体内時計に合わせた食事時間を意識することで、その効果を最大化し、副作用を減らせる可能性があります。
日々の食習慣は個人差が非常に大きいため、「流行の食事法」ではなく、「自分の体の反応」を観察しながら調整していくことが重要だと言えるでしょう。
まとめ
・朝食を抜くと、血糖値維持のために体がより大きな負担を受ける可能性がある
・朝食欠食は、その後の食事で血糖値が急上昇する原因になる場合がある
・特に糖尿病予備群、二型糖尿病、PCOS、更年期女性では、規則的な朝食摂取が有益となる可能性がある

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