科学

テストステロン値が低い男性は早期に死亡する可能性が高い(西オーストラリア大学)

科学

男性ホルモンとして有名なテストステロン。

 

主に男性の睾丸で作られ、筋肉の維持・増加や性欲の向上、闘争心の刺激など男性らしさに関係のある物質として知られています。

 

韓国の宦官(去勢され、後宮に仕える役職)の81人を調べた研究では、宦官らの平均寿命は70.0±1.76年で、同様の社会経済的地位の非去勢男性の寿命よりも14.4〜19.1年長かったことが分かっています。

 

グエン王朝の宦官

 

この結果から、宦官の寿命が短いのはテストステロンなどの男性ホルモンの影響によるものではないかと考えられていました。

 

しかし、Annals of Internal Medicineに発表された最新の研究は、これらの発見に疑問を投げかけるものになっています。

 

以下に、その研究についてまとめていきます。

 

参考記事)

Surprising Study Finds Men With Low Testosterone More Likely to Die Early(2024/05/17)

 

参考研究)

Associations of Testosterone and Related Hormones With All-Cause and Cardiovascular Mortality and Incident Cardiovascular Disease in Men: Individual Participant Data Meta-analyses(2024/05/14)

 

 

テストステロンが低い被験者は寿命が短い

 

西オーストラリア大学のチームが主導したメタアナリシス(複数の研究を統合して分析すること)では、テストステロンの値と寿命が関係する11件の研究が分析されました。

 

男性(24109人)を少なくとも5年間追跡したところ、テストステロンレベルが最も低い参加者は死亡する可能性が高いことが判明しました。

 

この研究における死亡は様々でしたが、分析をさらに深く掘り下げると、そのほとんどが心臓病によるものであることが分かりました。

 

テストステロン値が低いと勃起不全になる可能性が高いことが知られていますが、このホルモンの値が低いと心疾患のリスクも高くなるという相関性が見られるのが興味深いです。

 

通常、テストステロンの値は男性の年齢とともに低下し、30歳からは毎年約 1% ずつ減っていくとされています。

 

これは主に、睾丸のテストステロンを生成する能力が徐々に衰え、ホルモンを生成する信号が減少することによるものです。

 

ただし、慢性疾患などの他の要因によってこの低下が加速される可能性もあります。

 

 

卵が先か鶏が先か

 

ではテストステロン値の低下が病気を引き起こすのか、病気を引き起こしているからテストステロン値が下がるのか。

 

本研究では、テストステロン値の低下が死亡リスクの増加を直接引き起こすかどうかを解明できないとしています。

 

少なくとも、テストステロンは病気によって低下するため、基礎疾患を発見する手助けになります。

 

また、前立腺がん患者にはテストステロンレベルを大幅に下げる薬が投与されます。

 

この治療法は前立腺がんの改善にもかかわらず、患者の心臓発作や脳卒中のリスクを高めます。

 

したがって、テストステロンの低下は病気のマーカーである可能性がありますが、ある程度、将来の病気の発症やおそらくは死に関係する要因でもあることは明らかです。

 

テストステロンの値が低いことは良くないことであることが分かりましたが、レベルがどの程度が「低い」状態であるかを判断するのは複雑です。

 

テストステロンを単独で測定しても、その人にとって適切なレベルがどの程度なのかの全体像が得られない可能性があります。

 

ある人にとっては低いものでも、別の人にとっては低いとは限りません。

 

研究者は、さまざまな集団の多くの人のテストステロンの平均値を使用して正常範囲を確立しました。

 

しかし、母集団全体でこれらの一般化を行うのは難しく、多くの場合、これらの傾向を示すためにより個別化された判断が必要と考えられています。

 

今回のメタ分析は、男性の死亡リスクの増加は、主にテストステロン値が非常に低い場合に明らかであることを示唆しています。

 

このことから大切なのは、テストステロンの正常な題を判断するのではなく、現在、テストステロン値を下げるような行動をするべきではないということです。

 

テストステロンを維持するための筆頭として挙げられるのは、「運動」です。

 

運動によって大きな筋肉を動かすことは、テストステロンをはじめとした男性ホルモンの増加にもつながります。

 

筋力トレーニングでなくても、1日10分から20分の散歩(早歩き)を継続的に行うことでもその値が上昇します。

 

逆に、下げる行為としては、肥満などの生活習慣病に関わる行動や、ストレスを溜めることなどが挙げられます。

 

総じて、やはり食と運動か健康的なホルモンバランスを保つための習慣であるということですね。

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