科学

若年女性における糖分入り飲料の摂取と、早期発症大腸がんリスクの関連性

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前回の研究まとめ「若年層における大腸がんの増加…」でもお伝えしたように、近年、50歳未満で発症する「早期発症大腸がん(early-onset colorectal cancer: EO-CRC)」の増加が世界的に報告されています。

 

この傾向の背景には、食生活の変化や生活習慣の影響があると考えられており、特に、糖分入り飲料(sugar-sweetened beverages: SSBs)の消費量が増加していることが注目されています。 

  

米ハーバード大学をはじめ、独のマックス デルブリュック分子医学センターらが主導した研究から、成人期および思春期のSSB(甘い飲み物)の摂取が大腸がんのリスク増加と関連していることが明らかになりました。

 

研究の内容を以下にまとめます。

 

参考研究)

Sugar-sweetened beverage intake in adulthood and adolescence and risk of early-onset colorectal cancer among women(2025/04/26)

 

 

研究の背景

 

アメリカ合衆国では、2000年までの出生データ分析においてSSBの消費が大幅に増加し、特に50歳未満の若年層でその傾向が顕著であることが問題視されています。

 

しかし、SSBの摂取とEO-CRCとの関連性については、これまで十分に検討されていませんでした。

 

本研究は、成人期および思春期におけるSSBの摂取が、若年女性のEO-CRCリスクにどのように影響するかを明らかにすることを目的に実施されました。

  

 

研究方法 

本研究は、1991年から2015年までの「Nurses’ Health Study II」のデータを用いた前向きコホート(プロスペクティブ)研究です。

 

対象は、18歳から22歳の時点でSSBの摂取量に関する情報を提供した女性で、追跡期間中にEO-CRCを発症した症例を分析しました。

 

SSBの摂取量は、食事頻度質問票を用いて評価され、1日あたりの摂取回数に基づいて分類され、食事以外の生活習慣や家族歴などの要因も考慮されました。

 

 

主な結果 

本研究 Table2:Sweetened beverage intake in adulthood and risk of early-onset colorectal cancer を参考に作成

※1回=1サービング≒約200mlの摂取

 

1. 成人期のSSB摂取とEO-CRCリスクの関連性 

成人期において、1日あたり2回以上のSSBを摂取していた女性は、週に1回未満の摂取者と比較して、EO-CRCのリスクが2.2倍高いことが示されました。

 

2. 思春期のSSB摂取とEO-CRCリスクの関連性 

思春期(13歳から18歳)において、1日あたり1回以上のSSBを摂取していた女性は、週に1回未満の摂取者と比較して、EO-CRCのリスクが1.3倍高い傾向がありました。

この関連性は、成人期のSSB摂取と独立して存在していました。

 

3. 他の要因との関連性 

SSBの摂取とEO-CRCリスクの関連性は、BMI、運動習慣、喫煙、アルコール摂取、家族歴などの他の要因を調整した後も有意に残りました。

また、人工甘味料入り飲料や果汁100%のジュースの摂取とは、EO-CRCリスクとの有意な関連は認められませんでした。

 

 

考察 

1. SSB摂取とEO-CRCリスクの関連性の意義

本研究の結果は、SSBの摂取がEO-CRCのリスク増加と関連していることを示しています。

特に、思春期のSSB摂取が成人期のリスクに影響を与える可能性が示唆されました。

これは、若年期の食習慣が将来の健康に長期的な影響を及ぼすことを示す重要な知見です。

   

2. 生物学的メカニズムの可能性

SSBの摂取がEO-CRCリスクを高める生物学的メカニズムとしては、血糖値の急上昇やインスリン抵抗性の増加、炎症反応の促進、腸内環境の変化などが考えられます。

これらの要因が、腸管の細胞増殖や腫瘍形成に影響を与える可能性があります。

 

3. 公衆衛生上の示唆 

本研究の結果は、若年層におけるSSBの摂取制限が、EO-CRCの予防に寄与する可能性を示しています。

特に、思春期からの健康的な食習慣の形成が、将来の大腸がんリスクの低減につながると考えられます。

公衆衛生政策として、SSBの摂取制限や健康教育の強化が求められます。

 

 

研究の限界 

本研究にはいくつかの限界があります。

 

まず、対象が看護師である女性に限定されており、一般人口への一般化には注意が必要です。

 

また、食事の評価が自己申告に基づいているため、報告バイアスの可能性があります。

 

さらに、観察研究であるため、因果関係を確定することはできません。

 

しかし、長期間の追跡と詳細なデータ収集により、信頼性の高い結果が得られています。

 

 

結論 

本研究は、成人期および思春期におけるSSBの摂取が、若年女性のEO-CRCリスクの増加と関連していることを示しました。

 

特に、思春期のSSB摂取が将来のリスクに影響を与える可能性が示唆されました。

 

これらの結果は、若年層におけるSSB摂取の制限が、EO-CRCの予防に重要であることを示しています。

 

 

まとめ

・成人期および思春期のSSB(甘い飲み物)の摂取は、若年女性のEO-CRCリスクの増加と関連している

・特に思春期のSSB摂取が将来の大腸がんリスクに影響を与える可能性がある

・若年層におけるSSB摂取の制限が、EO-CRCの予防に重要である

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