超加工食品は心臓病と早期死亡リスクを高める? 欧州心臓専門家らが警鐘

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現代の食生活では、手軽さや保存性を重視した「超加工食品(UPFs:Ultra-Processed Foods)」が急速に広がっています。

 

冷凍食品、スナック菓子、加工肉、甘味飲料、インスタント食品など、多くの製品が私たちの日常に深く入り込んでいます。

 

しかし近年、こうした食品の摂取量が多い人ほど、肥満や糖尿病だけでなく、心臓病や早期死亡のリスクが高まる可能性があることが、複数の研究から示されるようになってきました。

  

今回、ヨーロッパの循環器専門家グループは、超加工食品の摂取が心血管疾患リスクを高める可能性が高いとする臨床コンセンサス声明を発表しました。

 

研究者らは、超加工食品が「単にカロリーや糖分が多い食品」というだけではなく、食品添加物や加工工程そのものが健康に悪影響を及ぼす可能性があると指摘しています。

 

また専門家らは、医師が患者の食生活を確認する際に、運動や喫煙歴だけでなく、「超加工食品をどれくらい食べているか」を日常診療で確認すべきだと提言しています。

 

さらに、栄養成分だけで食品の健康性を判断する従来の考え方では不十分であり、「どれだけ加工されているか」という視点も重要になると強調されています。

 

以下に研究の内容をまとめます。

 

参考記事)

Ultra-processed foods linked to higher risk of heart disease and early death(2026/05/10)

 

参考研究)

Ultra-processed foods, lifestyle management, and cardiovascular diseases: A clinical consensus statement of the European Society of Cardiology Council for Cardiology Practice and the European Association of Preventive Cardiology of the European Society of Cardiology(2026/05/06)

   

  

欧州の専門家グループが発表した臨床声明

今回の声明は、European Society of Cardiology の「Council for Cardiology Practice」と、European Association of Preventive Cardiology が共同でまとめたものです。

 

研究を主導したのは、イタリアのインスブリア大学のProfessor Luigina Guasti氏を中心とする研究グループで、ミラノ大学やLUM大学も参加しています。

  

この声明は新たな単独研究というより、これまで世界中で蓄積されてきた研究結果を総合的に評価し、臨床現場でどう活用すべきかを示した「コンセンサス文書」です。

 

コンセンサス声明とは、複数の専門家が既存研究を検討し、現時点で妥当と考えられる医学的見解をまとめたものを指します。

 

 

超加工食品とは何か

 

超加工食品」という言葉は近年よく使われるようになりましたが、その定義は一般にはまだ十分浸透していません。

 

超加工食品とは、工業的な加工工程を何段階も経て作られた食品のことです。

 

単なる加熱や冷凍ではなく、精製された成分、人工香料、乳化剤、保存料、着色料などが加えられている点が特徴です。

 

乳化剤とは、水と油のように本来混ざりにくい成分を均一に混ぜるための添加物です。

 

具体例としては以下のような食品が挙げられます。

 

・清涼飲料水

・菓子パン

・ポテトチップス

・加工肉

・インスタント麺

・冷凍ピザ

・市販スイーツ

・エナジードリンク

  

一方で、野菜、果物、豆類、魚、卵などの「未加工または最小限加工食品」は、超加工食品とは区別されます。

 

研究者らによれば、近年の欧州では超加工食品の消費割合が急増しているといいます。

 

特にオランダでは総摂取カロリーの61%、イギリスでは54%が超加工食品由来とされました。一方で、スペインは25%、ポルトガルは22%、イタリアは18%と比較的低水準でした。

 

この違いには、伝統的な地中海食文化の影響もあると考えられています。

 

地中海食とは、野菜、果物、魚、オリーブオイル、全粒穀物などを中心とした伝統的な食事パターンです。

 

 

心疾患リスクとの関連

 

今回の声明で特に注目されたのは、超加工食品と循環器疾患との関連です。

 

研究者らによると、超加工食品を最も多く摂取している人は、最も少ない人と比べて、心疾患リスクが最大19%高くなる可能性があるとされています。

 

さらに、心房細動リスクが13%上昇、心血管疾患による死亡リスクが最大65%上昇する可能性も示されました。

 

心房細動とは、心臓の拍動リズムが乱れる不整脈の一種で、脳梗塞リスクとも関連する疾患です。

 

また研究者らは、超加工食品が直接的あるいは間接的に、以下のような状態を悪化させる可能性があると述べています。

 

・肥満

・二型糖尿病

・高血圧

・脂質異常

・慢性腎疾患

 

脂質異常とは、血液中のコレステロールや中性脂肪のバランスが崩れた状態を指します。

 

こうした疾患は、いずれも動脈硬化や心血管疾患の重要な危険因子です。

 

 

なぜ超加工食品は危険視されるのか

研究者らは、超加工食品の問題点は「糖分や脂肪が多いこと」だけではないと説明しています。

 

Dr. Bonaccio氏は、超加工食品には以下の特徴があると述べています。

 

・糖分、塩分、不健康な脂肪が多い

・食品添加物を多く含む

・加工中に汚染物質が生じる場合がある

・食品本来の構造が変化している

 

研究者らは、これらの要素が複合的に作用し、体内で慢性的な炎症を引き起こす可能性があると考えています。

 

慢性炎症とは、体内で弱い炎症反応が長期間続く状態で、動脈硬化や糖尿病、がんなどとも関連が指摘されています。

 

さらに、超加工食品は腸内細菌叢にも影響を与える可能性があります。

 

腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)とは、腸内に存在する細菌群の集合を指し、「腸内フローラ」とも呼ばれます。

  

腸内環境が乱れると、免疫機能や代謝調節にも悪影響を及ぼす可能性があります。

  

また、食品の「柔らかさ」や「食べやすさ」が過食につながる可能性も指摘されています。

 

例えば、超加工食品は咀嚼回数が少なくても短時間で大量摂取しやすく、満腹感が得られにくい場合があります。

 

 

「栄養が良ければ安全」とは限らない

Ultra-processed foods, lifestyle management, and cardiovascular diseases: A clinical consensus statement of the European Society of Cardiology Council for Cardiology Practice and the European Association of Preventive Cardiology of the European Society of Cardiologyより

  

今回の声明で特に興味深い点は、研究者らが「栄養成分だけでは健康性を判断できない」と強調している点です。

  

従来の栄養指導では、カロリー、脂質、糖質、塩分などが主な評価対象でした。

 

しかし研究者らは、たとえ栄養成分表上は良好に見えても、超加工食品である時点で健康リスクを持つ可能性があると述べています。

 

つまり、「低脂肪」「高タンパク」「食物繊維入り」と表示された商品でも、加工度が極めて高い場合には注意が必要だという考え方です。

 

この点は、現在の食品マーケティングや健康食品市場にも大きな影響を与える可能性があります。

 

ただし因果関係はまだ完全には証明されていない一方で、研究者らは今回の証拠には限界もあると認めています。

 

特に、現在までの研究の多くは「観察研究」です。

 

観察研究とは、人々の生活習慣を追跡して関連性を調べる研究方法です。

 

このタイプの研究では、結果が間接的な関連性を明らかにするに留まり、他の要因を排除することができません。

 

超加工食品を多く食べる人」が、同時に運動不足や睡眠不足、経済状況、喫煙など他の健康リスクも抱えている可能性があります。

 

そのため、超加工食品そのものが直接原因であることを完全に証明するのは難しい面があります。

 

研究者ら自身も、長期間の介入試験がまだ不足していると述べています。

 

介入試験とは、特定の食事や治療を実際に行って、その効果を比較検証する研究です。

 

つまり現時点では、「超加工食品と心疾患には強い関連がある」一方で、「どの成分や加工工程がどの程度影響しているのかは完全には解明されていない」という段階だといえます。

 

 

医師にも求められる新たな食事指導

今回の声明では、一般市民だけでなく医療従事者への提言も行われています。

 

研究者らは、医師が患者を診察する際に、運動習慣、喫煙、飲酒、栄養状態だけでなく、超加工食品の摂取状況も確認すべきだとしています。

 

また政府や公的機関に対しても、食品表示の改善、食事ガイドラインの更新、消費者教育などを進める必要があると提言しました。

 

特に、食品表示については「栄養成分」だけでなく、「加工度」を消費者が分かりやすく把握できる仕組みが求められる可能性があります。

 

 

私たちは何に注意すべきなのか

 

今回の声明は、「すべての加工食品が危険」と断定しているわけではありません。

 

現代社会では、保存技術や食品加工そのものが食中毒防止や栄養供給に役立っている側面もあります。

 

しかし研究者らは、極端に加工された食品への依存が進みすぎている点を問題視しています。

 

特に、忙しさから食事の多くをインスタント食品や市販スナックに頼る生活が続く場合、知らないうちに健康リスクが蓄積している可能性があります。

 

重要なのは、「完全排除」ではなく、未加工または最小限加工食品の割合を増やすことだと考えられます。

 

例えば、野菜や果物を増やすことや加工肉の摂取量を減らすこと、甘味飲料を控えることなどが挙げられます。

 

家庭調理を増やすといった小さな変化でも、長期的には健康維持に役立つ場合が多いです。

  

現代の食品環境では、超加工食品を完全に避けることは難しいかもしれません。

  

しかし、「便利さ」を優先しすぎることで、長期的な健康への影響を見落としてしまう可能性があります。

 

特に、健康的に見える商品でも高度に加工されている場合があるため、広告や栄養表示だけに頼らず、食品そのものの加工度にも目を向けることが重要です。

 

また、今回の研究は「少量でも直ちに危険」という意味ではなく、「長期間にわたる高頻度摂取」が問題視されている点にも注意が必要です。

 

日々の食事全体のバランスを意識しながら、できる範囲で自然に近い食品を取り入れていくことが、将来的な健康維持につながる可能性があります。

 

  

まとめ

超加工食品の大量摂取は、心疾患や早期死亡リスク上昇と関連する可能性が示された

研究者らは、栄養成分だけでなく「加工度」にも注目すべきだと提言している

ただし現在の証拠の多くは観察研究であり、因果関係の完全な証明にはさらなる研究が必要

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