健康に良い油脂の代表として、フィッシュオイル(魚油)とオメガ3脂肪酸は、しばしば同列に語られることがあります。
しかし実際には厳密に同じではありません。
フィッシュオイルは確かにオメガ3を豊富に含む食品・サプリメントとして広く利用されていますが、オメガ3脂肪酸という栄養素そのものを指す言葉ではありません。
さらに、オメガ3脂肪酸は動物性食品だけでなく、植物性食品にも含まれており、医療用に処方される高濃度タイプが存在することも知られています。
このような多様な供給源があるため、どれを選ぶことがより健康に良いのかを理解するためには、両者の違いとメリットを整理する必要があります。
今回のテーマはそんな油の違いに関する記事のまとめです。
参考記事)
・Fish Oil vs. Omega-3: Which Is Better For You?(2025/12/11)
参考研究)
・Advances in therapeutic applications of fish oil: A review(2024/02/19)
フィッシュオイルとオメガ3の違いとは何か

まず押さえておくべき点として、フィッシュオイルはオメガ3を含む「油」ですが、オメガ3は特定の脂肪酸を指す栄養素そのものです。
オメガ3は多価不飽和脂肪酸の一種で、体内では合成できない「必須脂肪酸」として知られています。
オメガ3脂肪酸には主に以下の3種類があります。
• EPA(エイコサペンタエン酸)
• DHA(ドコサヘキサエン酸)
• ALA(α-リノレン酸)
EPAとDHAは主にサーモン、サバ、マグロなどの魚介類、またはフィッシュオイルサプリメントに含まれます。
一方、ALAは亜麻仁油、キャノーラ油、大豆油、チアシード、くるみなどの植物性食品に多く含まれています。
また、フィッシュオイル以外にもオメガ3を含むサプリメントは複数あり、代表的なものとして以下が挙げられます。
• コッドリバーオイル(タラ肝油)
• クリルオイル
• アルガルオイル(ベジタリアン向け)
• フラックスシードオイル(亜麻仁油)
魚介類にアレルギーがある人でも摂取できるサプリメントが存在するため、選択肢は多様です。
さらに、Lovaza(ロバザ)やVascepa(ヴァスケパ)といった処方薬もあり、心疾患患者に医師が勧める場合があります。
フィッシュオイルはEPAとDHAを豊富に含むだけでなく、ビタミンA・ビタミンDなどの栄養素も含まれています。
一部の研究では「魚油由来のオメガ3のほうが植物由来のオメガ3よりも栄養価が高い可能性がある」と指摘されていますが、これは研究によって見解が異なるため、断定的ではありません。(PURLs: Does fish oil during pregnancy help prevent asthma in kids?より)
オメガ3がもたらす健康効果(フィッシュオイルを含む)

オメガ3脂肪酸の効果は多岐にわたり、心臓、血圧、脳、炎症など幅広い領域に影響を及ぼすことが示されています。
ただし、心臓に関する研究結果は一致していない部分があり、効果の大きさには議論があります。
心疾患リスクを下げる可能性
複数の研究によって、オメガ3脂肪酸は心臓病、心筋梗塞、脳卒中などのリスクを低減する可能性が示されています。
特に、高用量のEPAのみを含むサプリメントのほうが、EPAとDHAの混合タイプよりも心疾患に対して強い効果を持つ可能性が指摘されています。
ただし、具体的な効果量に関しては研究によって差が大きく、完全に一致した結論には達していません。
血圧を下げる作用
オメガ3脂肪酸は、1日2〜3グラムの摂取で血圧を下げる効果があるとされています。
さらに、心疾患リスクが高い人では3グラム以上の摂取がより大きな効果を示すこともあり、医学的監督のもとで使用されることがあります。
妊娠期の免疫サポート
妊娠中のオメガ3脂肪酸摂取により、乳児の免疫機能が改善し、喘息リスクが低下する可能性を示した研究があります。
ただし、妊娠中のサプリメント利用は安全性に関する研究がまだ十分ではないため、食品からの摂取が推奨されています。
脳機能の改善
オメガ3脂肪酸の摂取は、記憶力、学習能力、思考力、脳血流を改善する可能性があります。
特にDHAは脳の構成成分として重要で、アルツハイマー病などの神経疾患のリスク低下に寄与する可能性も示唆されています。
気分の改善
オメガ3脂肪酸はうつ症状、意欲の低下などの「モチベーション関連の症状」を改善する効果があるとされ、抗うつ薬との併用でさらに改善が見られることがあります。
炎症の抑制
EPAとDHAは抗炎症作用を持ち、慢性的な炎症や痛みを軽減する可能性があります。
特に関節リウマチの炎症緩和に有効性が示された臨床試験もあります。
推奨摂取量

一般的な推奨量は、EPAとDHAの合計で1日250〜500mgとされています。
心疾患のリスク低減を目的とした場合、最大で3000mg(3g)まで増量されることがありますが、必ず医師の監督下で摂取することが前提です。
食事から摂取する場合、週に1〜2回(約100〜120g)の魚を摂ることで必要量を満たすことができます。
アメリカ心臓協会(American Heart Association)は、週2回の脂の多い魚の摂取を推奨しています。
副作用と注意点
オメガ3脂肪酸は通常3g/日までであれば安全とされていますが、以下の副作用が起こることがあります。
• 魚のような後味
• 汗の悪臭
• 頭痛
• 嘔吐
• 便秘または下痢
• 関節痛
• 胸やけ
• げっぷ
また、ナッツ由来のオメガ3脂肪酸ではごく稀にアレルギー反応が起こる可能性があります。
また、オメガ3脂肪酸は以下の薬剤と相互作用を起こす可能性があります。
• 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬):ワルファリン、クロピドグレルなど
• 血糖降下薬:併用で血糖値が下がりすぎる可能性
• NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):出血リスクが上昇する可能性
服薬中の人は、必ず医師に相談することが重要です。
まとめ
・フィッシュオイルはオメガ3脂肪酸の供給源であり、オメガ3脂肪酸そのものではないため両者は厳密には異なる
・オメガ3脂肪酸にはEPA・DHA・ALAがあり、魚由来のEPAとDHAは特に研究が進んでいるが、その健康効果には研究間で差があり、断定できない部分がある
・適量の摂取は心臓、脳、妊娠、炎症などの健康維持に役立つ可能性があるが、薬との相互作用や副作用にも注意が必要

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