科学

お茶の抽出が水中の有害金属を除去する可能性

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お茶を淹れるという日本人に馴染みのある行為が、水に含まれる有害な重金属を除去するのに役立つかもしれません。

 

ノースウェスタン大学による研究によると、鉛やカドミウムといった重金属が茶葉やティーバッグに吸着することで、飲料水中の有害物質が減少することが明らかになりました。

 

さらに、研究チームは抽出時間が重金属の吸着に大きな影響を与えることを発見し、より長くお茶を抽出することで除去効果が高まると指摘しています。

 

この方法は、家庭用の浄水フィルターや高度な水処理技術の代替にはなりませんが、世界中で広く普及しているお茶を活用した手軽な水質改善法として期待されています。

 

今回は、このお茶が持つ浄水効果の可能性をテーマとして研究をまとめていきます。

 

参考記事)

Brewing Tea Can Remove Toxic Metals From Water, Study Suggests(2025/03/06)

 

参考研究)

Brewing Clean Water: The Metal-Remediating Benefits of Tea Preparation(2025/02/24)

Tea Consumption and Health Outcomes: Umbrella Review of Meta-Analyses of Observational Studies in Humans(2019/06/19)

 

 

お茶が持つ浄水効果とは?

  

これまで、お茶を飲むことが死亡リスクの低下、心血管疾患の予防、二型糖尿病のリスク軽減など、健康にさまざまなメリットをもたらすことは、多くの研究で明らかにされてきました。

 

そして今回、新たにお茶が水を浄化する可能性が示されました。

 

研究結果から、茶葉やティーバッグが重金属を吸着し、水から取り除く能力があることを確認しました。

 

食品科学研究所「Corvus Blue LLC」のKantha Shelke博士は、この研究には直接関与していませんが、「お茶を淹れることで受動的に重金属への曝露を減らすことができる可能性がある」と評価しています。

 

また、お茶は世界中で広く消費されているため、「ライフスタイルを変える必要がなく、特別な技術も不要で、公衆衛生の観点からも大きな意味がある」と指摘しています。

 

 

お茶はどの程度の重金属を除去できるのか

  

この研究を主導したノースウェスタン大学のVinayak P. Dravid博士は、環境汚染物質を除去する特殊なスポンジの研究を行っており、その過程で「ティーバッグもフィルターのように働くのではないか?」という仮説を思いつきました。

 

そこで研究チームは、重金属(クロム、亜鉛、銅、アルミニウム、鉛、カドミウム)を含む水溶液を作成し、さまざまな種類の茶葉や異なる市販のティーバッグを用いて以下の条件で実験を行いました。

 

お湯の温度は沸騰未満に設定

抽出時間は数秒から24時間まで変化させて検証

茶葉のサイズやティーバッグの素材による吸着能力の違いを分析

 

その結果、一般的なカップ1杯(ティーバッグ1つを3〜5分抽出)で飲料水中の鉛を約15%除去できることが判明しました。

 

また、ティーバッグの材質によって吸着能力が異なることも確認されました。

 

コットンやナイロン製のティーバッグは、金属をほとんど吸着しない

セルロース製のティーバッグは、重金属を効果的に吸着する

細かく砕かれた茶葉(特にブラックティー)は、金属イオンをより多く吸着(表面積が広いため)

 

特に、抽出時間の長さが金属除去の能力に大きく影響することが判明しました。

 

Shindel博士は、「2分と4分、4分と10分といった抽出時間による差は、お茶の種類の違いよりも重要な要素だ」と述べています。

 

また、過去の研究では茶葉自体に重金属が含まれている可能性が指摘されていました。

 

しかし、今回の研究では、重金属が茶葉に吸着し、水には溶け出さないことが確認され、一つの安心材料となりました。

 

Shelke博士はこの研究を画期的だと評価し、「お茶を飲むことで受動的に重金属の摂取を減らせる可能性があることを示した」と述べています。

 

 

研究の限界と今後の課題

Shelke博士は、「この研究は重要な第一歩だが、課題も残されている」と指摘しています。

 

指摘された点は以下の通りです。

  

• 実験で使用されたのは脱イオン水であり、実際の水道水とは異なる可能性があること

• 水道水にはカルシウム、マグネシウム、銅などのイオンが含まれ、吸着に影響を与える可能性があること

• 調査対象の茶葉やティーバッグの種類が限られていること

異なる抽出方法(中国茶の長時間抽出、インドのチャイの煮出し法など)との比較が必要であること

 

Shelke博士は、「さまざまな淹れ方を比較すれば、お茶が重金属とどのように作用し、ろ過能力を高めるのか、より深く理解できるだろう」と述べています。

 

すでに浄水システムを使用している人にとっては、お茶を淹れるだけで水を浄化するのは非効率かもしれません。

 

しかし、何百万人もの人々が少しずつでも重金属を減らせば、全体的な健康リスクの低下につながる可能性があるとShindel博士は述べています。

 

Dravid博士は、「将来的には、スポンジのような機能を持つ茶葉が登場するかもしれない。」と語っています。

 

 

まとめ

・お茶を淹れることで、水中の有害金属(鉛・カドミウムなど)を除去できることが判明

・抽出時間が長いほど吸着効果が高く、特にセルロース製のティーバッグや細かい茶葉が効果的

・今後の研究では、実際の水道水での実験や、異なる淹れ方との比較が必要

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