心理学教育歴史

【歴史を変えた心理学⑨】ピアジェと発達心理学

心理学

【前回記事】

 

この記事では著書“図鑑心理学”を参考に、歴史に影響を与えた心理学についてまとめていきます。

 

心理学が生まれる以前、心や精神とはどのようなものだったのかに始まり、近代の心理学までをテーマとして、本書から勉強になった内容を取り上げていきます。

  

今回のテーマは「ピアジェと発達心理学」についてです。

   

    

  

ジャン・ピアジェとは

ジャン・ピアジェ(1896~1980年)

  

ジャン・ピアジェは、新生児から青年期までの知能の発達を科学的に明らかにしたスイスの心理学者です。

  

1896年8月9日、彼は大学の中世文学の教授であるアーサー・ピアジェとレベッカ・ジャクソンの間に長男として生まれました。

 

彼は自然科学、特に生物に対して強い関心をもっており、11歳になる頃にはアルビノのスズメに関する短い論文を書くほどでした。

 

その後も生物に関する研究を続けたピアジェは、1918年にヌーシャテル大学で動物学の博士号を取得しました。

 

この頃、思春期についての論文(adolescence work=思春期の仕事)も仕上げており、その後の彼の方向性を決める大きなきっかけになっていきます。

 

スイスのチューリッヒ大学に入学すると、精神分析に興味を持つようになりました。

 

1学期を終える頃には、彼はスイスからフランスのパリに移動し、科学、論理、心理学の研究に没頭することになります。

 

パリにいる間、ピアジェはアルフレッド・ビネーやセオドア・サイモンらと協力しながら、子どものために開発した知能テストを使用してIQなど評価していました。

 

アルフレッド・ビネー(1857~1911年)

 

アルフレッド・ビネーは、現在では有名な知能指数(Intelligence Quotient=IQ)を測定するテストを開発した人物です。

 

1890年代初期の心理学では、その人が行った業績知能指数の高低を測る指標の一つと考えられていました。

 

しかし、ビネーはそういったあやふやな指数でIQを測ることに疑問をもっており、知能を数量化する方法を研究した結果、現在のIQテストの原型を生み出しました。

 

ピアジェは、子どもたちに対して知能テストを行っているうちに、特定の間違いが同じ年齢の子たちに頻発することに気づきました。

 

彼は、幼い子どもたちが年長の子どもや大人とは異なる認知プロセスを持っている可能性を検討し始めました。

 

これの発見は、彼が“発達心理学”を理論付ける大きなきっかけになっていきます。

 

1921年、彼はジュネーブのジャン・ジャック・ルソー研究所の研究主任として雇われます。

 

ジャン・ジャック・ルソー研究所のピアジェ(最前列左の髭を生やした男性)と研究員

 

ジャン・ジャック・ルソーといえば、18世紀フランスで活躍した哲学者で、“社会契約論”を著して絶対王政や封建社会を批判したことで、後のフランス革命や市民革命に極めて大きな影響を与えた人物です。

 

著名な啓蒙思想家でもありながら、近代教育の父としても知られており、彼の著作“エミール”は「子どもにには子どもの教育が必要だ」という教育論を打ち立てたことも彼の大きな功績です。

 

ルソー著「エミール」

 

ルソーの名前に由来するこのジャン・ジャック・ルソー研究所も、そう言った子どもの教育に対する当時最先端の教育研究機関でした。

 

彼はそこで児童の年齢と発達に関する研究を行い、後に共同局長に就任するまでになります。

 

1923年、彼はバレンタイン・シャトネと結婚し、ジャクリーン、ルシエンヌ、ローランという3人の子どもに恵まれ、その成長過程を研究材料として使います。

 

その研究成果や自らの思想信条をもとに、ヌーシャテル大学やジュネーブ大学で、哲学、科学思想史、実験心理学で教鞭をとるなどの活躍をみせることになります。

 

ではそんな彼の心理学への影響はどのようなものだったのでしょうか。

 

以下に彼の貢献の一つである“発達心理学”についてまとめていきます。

 

 

ピアジェの発達心理学

ピアジェは、著書「判断と推理の発達心理学」において、子どもが乳幼児期うちから行動を観察し、成長するにつれて自分の欲求に対応するために行動や思考を用いるようになると評価しました。

そして、年齢が上がるにつれて、より社会的に受け入れられる反応をするようになると述べています。

 

それら行動の変化は、以下の4つの段階として、まとめまられています。

 

①感覚運動期(0~2歳)

運動を通して自分の世界と関わり、五感を通して周囲の環境を探索する段階。

自分の視点でしか、世界を認識できない。

  

②前操作段期(2〜7歳)

空想を用いて物事を考える段階。

互いを比べ、自分がどう違っているのかを知る。

この時期に、子どもは言語や形の意味を学び、自我が芽生えはじめ、運動能力が獲得される。

 

③具体的操作期(7〜11歳)

論理的思考身につける段階。

補助具を使って具体的な精神操作を行うことを学ぶ。

抽象的な思考を習得しはじめる。

 

④形式的運用期(思春期、11歳以降)

抽象的な思考ができるようになり、理性を使って理論的な問題を解決し、仮定のシナリオを考えることができるようになる段階。

この時期、子どもは社会中心主義となり、自己だけに焦点を当てるのではなく、より大きな社会世界に焦点を当てるようになる。

 

ピアジェが明らかにしたこの発達段階によって、適切な時期に適切な教育が必要であることが広く知られるようになりました。

 

ジャン・ジャック・ルソーも、子どもの成長に合わせて学ぶ対象や内容も変えるべきだと述べており、両者の考えが、近代教育において大きな礎となったことは確かと言えるでしょう。

 

 

まとめ

・ピアジェは、子どもたちに対して知能テストを行っているうちに、特定の間違いが同じ年齢の子たちに頻発することに気づいた

・彼の観察から、成長するにつれて自分の欲求に対応するために行動や思考を用いるようになることが受け入れられていった

・感覚運動期、前操作段期、具体的操作期、形式的運用期という四つの段階があることを説明した

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