科学

【研究】10代での大麻の使用によって精神障害のリスクが11倍に増加(マクマスター大学)【要約】

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2023年12月6日、日本において大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案が国会で可決・成立しました。

 

この法律案によって、大麻から抽出した成分を含む医薬品等が使用可能になるとともに、医薬品としての大麻草の栽培が認められるなど、規制緩和が進んでいます。

 

緩和前でもCBD(カンナビジオール)を含む大麻由来の製品の販売、購入は可能でしたが、強い精神活性作用を持つTHC(テトラヒドロカンナビノール)が含まれる製品の販売は依然として許可されていません。

 

今後の日本においても、THCが含まれるような嗜好品としての大麻の規制が緩和されることはしばらくないと考えられます。

 

一方海外の一部地域にて大麻が解禁されていますが、2000年代以前の昔と比べると、大麻の成分が強力になっていることが問題視されています。

 

その議論の一つが、若者への影響です。

今回紹介する研究テーマとして、以下にまとめていきます。

 

参考記事)

Teen Cannabis Use Dramatically Raises Risk of Psychotic Disorders(2024/06/25)

 

参考研究)

Age-dependent association of cannabis use with risk of psychotic disorder(2024/05/22)

 

 

若者の大麻使用による精神への影響

 

カナダ・マクマスター大学の研究から、大麻の使用した10代の若者は、使用を報告しなかった若者と比較し、精神障害を発症するリスクが11倍高まることが発見されました。

  

これは、これまでの研究で報告されたものよりもはるかに強い関連性が指摘されています。

 

過去の異なる研究機関(キングス・カレッジ・ロンドン)が示した2016年のデータでは、大麻を多く使用する人は、非使用者よりも統合失調症またはその他の精神疾患と診断される可能性が約4倍高まることが示されています。

  

にもかかわらず、過去の研究ではそれほど注目されてきませんでした。

 

その理由のひとつは、「現在の大麻に含まれる成分が、過去のものよりも強力になっているからだ」と研究チームは考えています。

 

地域や品種によって見積もりはさまざまですが、1970年代から80年代以降、大麻の主な有効成分であるTHCの濃度は、2017年から2018年現在、14〜19%ほど上昇しています。

 

また、今年初めにブリストル大学によって発表された、1,560人の英国の成人を対象とした研究では、大麻を使用しているほど精神病の発生率も高いということに関連しており、特に10代でより強い効果をもつ大麻を使用すると、精神病を示す体験談が2倍になったことが報告されています。

  

これらを踏まえ、マクマスター大学の疫学者アンドレ・マクドナルドら研究チームは、急性精神病のエピソードや精神病の症状ではなく、統合失調症などの精神病性障害の正式な診断との関係を調査しました。

 

 

調査では、2009年から2012年の間に収集された10代および若年成人の大麻使用に関する調査データを、2018年までのカナダのオンタリオ州の公衆衛生記録とリンクさせて相関性を確認しました。

 

これによると、約11,363人の大麻使用者において、その後数年の間に、統合失調症などの精神病障害が記録された診断を追跡することができました。

 

診断で大麻を使用したと述べた12〜19歳の若者は、大麻を使用していない10代の若者と比較すると、精神障害の発症率が11倍高いことが分かりました。

 

マクドナルド氏は、「脳が発達段階にある10代の若者は、大麻の影響に対して特に脆弱であるという神経発達理論と一致している」と述べています。

 

しかし、この研究のより前に、こういった見解を裏付ける疫学的証拠はほとんどなかった」とチームは論文に記しています。

 

ほとんどの精神病障害は、思春期後期と成人期初期に最初に発症し始めますが、それが大麻を使用しているからなのか、遺伝的な要素なのか、過去のトラウマが原因なのか、はたまたそれらの複合的な要素なのかを断定することは困難です。

 

マクドナルド氏と同僚の健康記録と調査データの分析には、そういった遺伝的要因やトラウマの経験などは含まれていないため、大麻使用のみが精神病障害を引き起こしたと明確に言い切ることはできません。

 

しかし、オンタリオ州で精神病性障害のために入院した10代の6人に5人が大麻の使用を報告していたことも、カナダの国民健康調査によって発見されています。

 

カナダは2018年10月17日に大麻の所持と使用が一部解禁されました。

 

これらの政策変更によって、将来、大麻が思春期の健康にどのような影響を与えたかが明らかになる可能性があります。

 

大麻には、てんかんや喘息の発作の緩和、鎮痛や抗がん作用など様々な効果が確認されていますが、それはあくまで医療用としての使用に限られます。

 

必要がないなら使わなくても良い。

 

個人的にはそんな気がしていますが、周りに使用者がいるわけでもなく、自分が使用したことがない以上は、こういった論文や研究が頼りです。

 

この論文はPsychological Medicineにて詳細を確認することができます。

 

また、大麻に関する歴史や産業的な価値をまとめた記事もあるので、気になる方はそちらもぜひ!

【記事まとめ】大麻の歴史から産業まで

 

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