【前回記事】
この記事は、著書“心理学をつくった実験30”を参考に、”パヴロフの犬”や”ミルグラム服従実験”など心理学の基礎となった実験について紹介します。
「あの心理学はこういった実験がもとになっているんだ!」という面白さや、実験を通して新たな知見を見つけてもらえるようまとめていこうと思います。
今回のテーマは、“記憶の処理水準モデル”です。
記憶の処理水準モデル
【本書より引用(要約)】
前回の記事では、ブランスフォード氏らの実験によって、文脈によって記憶の定着度や理解の度合いが変わることが示された実験を紹介しました。
人が情報を記憶する時には、思い出す手がかりになるような紐付けを行い、複雑な情報処理を行っていることが分かりました。
今回の記事では、記憶の処理について一歩踏み込んだ研究を紹介します。
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トロント大学で認知心理学に関する研究を行っていたクレイク氏ら研究チームは、記憶と情報処理の間には、ごく表面的なものから深く意味を考えるものまで何段階かのレベルがあることを主張しました。
彼らは24名の男女の大学生を被験者とし、記憶に関する実験を行ないました。
まず、実験室に入室した彼らは、この実験が近くと反応時間に関するものであることが知らされました。
実験は、60個の単語を一つずつスクリーン上にごく短時間提示するものでした。
その後、単語の提示に先立ち、簡単な質問が行われました。(下図参照)
「基礎から学ぶ認知心理学」補足資料より
①これから提示される単語は大文字ですか
②これから提示される単語は○○○○という韻を踏んでいますか
③これから提示される単語は、文章に当てはめると意味が通るようになりますか
というそれぞれの質問の後で単語が提示され、被験者は、「はい」、「いいえ」で答えることになります。
質問を読んでみるとわかりますが①、②、③の順に情報処理の水準が高くなっています。
処理水準ごとの記憶テストの正解率は、以下のグラフのようになりました。
「はい」が正解になる場合と「いいえ」が正解になる場合があり、それぞれ正解率が分かれています。
この結果を見ると、情報処理の水準が高い③の質問に答えた場合が、最も単語の記憶の定着が良いことが分かります。
つまり、単語一つ覚えるにしても、簡単な設問より少し考えて答える問題の方が覚えやすいということがこれらの実験結果から分かります。
一問一答よりも思考を大切にする
いかがでしたでしょうか、記憶な水準モデルの実験。
この記事を読んでいる方の中には、資格勉強や受験勉強において、一問一答形式で勉強をしてテストに臨だことがある人も少なくないはずです。
自分もテストなどの直前は、一問一答形式の勉強法をよく使っていました。
今になって思うのは、あまり効率的ではなかったなということです。
翌日にテストがあるときなど“点を取るため”には良いかもしれませんが、テストが終わるとほとんど忘れていることが多いです。
しかし、化学における周期表とイオン化の原理を知ったり、歴史の背景や人物像などを知ると、丸暗記するよりはるかに記憶に定着している場合がほとんどです。
英単語などの勉強も、単語を一つ一つ覚えるより、その単語を使って文章を作ったり、長文の日本語訳を英文に変えてみたりした方が明らかに覚えは良いです。
個人的には、この意味水準で学んだ効果の他に、学校で習わないことを自分なりに探求したことによって興味・関心が高まった点など他の要素もある気がします。
何かを記憶すると言っても、色んなきっかけで覚えられるということですね。
特に覚えなければいけないことに関しては、一問一答や○✕で覚えるのではなく、なぜそうなるのかを説明できるレベルで覚えると良いということは確実に言えると感じています。
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