心理学

【心理学の歴史⑭】フィクションを作る認知 ~ロフタスの虚偽記憶実験〜

心理学

【前回記事】

 

この記事は、著書“心理学をつくった実験30”を参考に、”パヴロフの犬”や”ミルグラム服従実験”など心理学の基礎となった実験について紹介します。

   

「あの心理学はこういった実験がもとになっているんだ!」という面白さや、実験を通して新たな知見を見つけてもらえるようまとめていこうと思います。

   

今回のテーマは、“ロフタスの虚偽記憶実験”です。

  

       

        

ロフタスの虚偽記憶実験

【本書より引用(要約)】

エリザベス・ロフタス(1944~)Wikipediaより

  

人間はコンピューターのように情報を処理し、性格に認知、処理できるわけではありません。

  

「人間誰しも間違いはある」と言われているように、本人に他意なく真剣に物事を判断したとしても、実際は“間違ってしまう”こともあります。

  

カリフォルニア大学の心理学者エリザベス・ロフタス氏は、認知心理学の観点から人の認知の誤りについて研究を行った人物です。

  

今回は彼女が行った実験についてフォーカスし、人の認知がいかに曖昧であるかを知っていこうと思います。

  

【実験】

・被験者:大学生150人

  

被験者はそれぞれ交通事故を描写した短い動画を見せられました。

 

動画は2台の車が衝突する4秒ほどの短い動画でした。(衝突は中程度の衝撃で、ガラスが飛び散るほどのものではない)

  

動画を見た後、被験者らは事故の様子を紙に書き出すよう指示されました。

  

その後、監督者は被験者に衝突時の“車のスピード”に関する質問をしました。

  

質問は合計で3パターンあり、50人ごとに質問を変えて行われました。

  

質問①「車が激突(Smashed)したときの速さはどれくらいでしたか」

・About how fast were the cars going when they smashed into each other?

  

質問②「車が当たった(Hit)ときの速さはどれくらいでしたか」

・About how fast were the cars going when they Hit into each other?

  

質問③は、車のスピードとは関係のない質問がされました。

  

それから一週間後、被験者らはさらに衝突の動画に関する質問を受けました。

  

被験者は「事故によってガラスが飛び散りましたか」という質問をされ、「はい」か「いいえ」で答えました。

  

その結果が以下の表です。

  

  

動画視聴の日に「激突(Smashed)」と聞かれた50人のうち16人が「はい」と答え、それ以外のグループで「はい」と答えたのは7人、6人という結果になりました。

  

つまり、「激突(Smashed)」という事実とは言えない追加情報を得た被験者は、一週間後にそれがあたかも事実のように受け止めたのです。

  

  

人の記憶は曖昧

前回の記事では、人間が何かを記憶する際、空き部屋に荷物を置くように記憶するのではなく紐付けなどの情報処理を行いながら後で思い出しやすいように保管しているということをまとめていきました。

  

今回の研究では、人間の情報処理には曖昧な部分があるということが明らかになりましたね。

  

犯罪捜査や裁判でも、目撃証言が逮捕や有罪の決め手となることが多くあります。

  

ロフタス氏のこの研究結果はそういった証言の信憑性に疑問を呈するものです。

  

記憶する間に何らかの印象が与えられることによって、脳内で勝手にフィクションが作られるということですね。

  

テレビやラジオ、新聞など、一方的に情報を受け取る際には、そういった変な印象を受けていないかを常に警戒する必要もあると感じます。

  

 

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