以前の記事にて“韓非子”について紹介しました。
直近の人気記事の中でも割りかし好評なことが見えてきたので、今後も韓非子について書いていこうと思います。
韓非子は、君主論や帝王学のみならず、当時の社会矛盾なども含んだ逸話の宝庫です。
自分が読んだ韓非子の中から、ためになりそうだったり面白いかったものを記事としてシェアしていきます。
今回は、君主の道で有る“主道”から一つ紹介して次の記事へ繋げようと思います。
君は其の欲する所を見(しめ)す無かれ
【本文】
道者万物の始にして、是非の紀なり。
是を以て名君は始を守りて万物の源を知り、紀を治めて以て善敗の端を知る。
故に虚静を以て待ち、名をして自ら命(なの)らしめ、事をして自ら定めしむ。
虚ならば則(すなわ)ち実の情を知り、静ならば則ち動の正を知らん。
言有る者は自から名を為し、事有る者は自ら形を為す。
形と名と賛同せば、君則ち事なく、之を其の情に帰せん。
故に曰く、君は其の欲する所を見す無かれ、君其の欲する所を見すときは、臣将に自ら彫琢せんとす、君其の意を見す無かれ、君其の意を見すときは、臣将に自ら異を表せんとすと。
故に曰く、好を去り悪を去らば臣乃(すなわ)ち素を表し、賢を去り知を去らば臣乃ち自ら備えん、と。
【解釈】
“道(理想や主義)”というものが組織における万物の根源となり、組織における善い悪いの基本となる。
賢者は何事にも根本を求め、根本において物事の性質を理解する。
賢者は心に虚と静を持って、臣下を見定めることが大切である。
臣下を実地で仕事を自由にさせ成績を示させるたとき、虚を持つことで臣下の能力を先入観なく評価できる。
静を持つことで、相手が何をしようとしているか、何を欲しているかの動きが分かる。
芯のある志を持って言葉を発する人や、実力があって仕事をする人を先入観を持たずに目を向けることで、君主は苦労せずに臣下の性質を捉えることができるだろう。
故に故人は言った。
君主は己の欲望を知られていはいけない。
臣下がそれを察して自分を着飾ろとするからである。
君主は己の意志を知られてはいけない。
臣下はそれを知って自分を変えてみせようとするからである。
君主が好みと悪(にくし)みを隠せば、臣下は始めて正体を見せる。
君主が賢さや知恵を隠せば、臣下は始めて正直に振る舞う。
組織を良くしたいなら欲望を振りかざさない
欲におぼれて政治が腐敗していくということは、どんな時代にもあります。
組織のトップの意向に逆らえなかったり、忖度によってあらぬ方向に方針が進んだりすることなど日常茶飯事です。
最近でも、あるアイドルグループの代表によって公序良俗に反する行為が日常的に行われていたことが、後々明らかになったりしました。
その後については言及しませんが、健全な組織体系を維持しようとするなら、理念は高く、トップが権威を振り回さず、欲望を表に出さずに謙虚な姿勢で有ることが必要なことが、韓非子から読み取れます。
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