スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤは、近代絵画の第一人者として名を轟かせた人物のひとりです。
遅咲きの彼は、宮廷画家として絵を描くようになった43歳ごろから注目を集めるようになりました。
病気によって聴力を失ったことやスペイン独立戦争の経験からか、彼は暗く畏怖の念を孕んだ絵を描くようになります。
そのひとつが1797〜98年にマリア・ホセファ・ピメンテル女公爵に依頼され描いた“魔女の夜宴”です。
悪魔の化身であるヤギを前に、魔女たちが供物を差し出すシーンを描いています。
供物である赤子は痩せ細り、悪魔に捧げられた赤子の末路は月下に晒されています。
一方肉付きの良い赤子とその母は、悪魔からの加護があるかのように化身から手が差し伸べられています。
死よりも過酷な仕打ちを受けた子どもを生贄に、命の選別をしているように見えますね。
当時、魔女の夜宴はバスク地方のアケラレの山で行われていると伝えられていました。
ゴヤはその魔女の迷信に惹かれ、人の道を外した異端的な儀式を連想したことが分かります。
ゴヤの絵のモデルのひとりが、魔女かどうかを見定める異端尋問にかけられたこともあり、異端尋問に対する思いを風刺的に表していると言われています。
そしてこの魔女の夜宴は、後のゴヤ晩年の大作“黒い絵”シリーズに繋がっていきます。
黒い絵シリーズ
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