【前回記事】
この記事は、書籍「世界はラテン語でできている」を読んで興味深かった内容について抜粋して紹介する記事です。
この本は、古代ローマから用いられてきた言語が現代にどのように残っているのかについて書かれています。
政治、宗教、科学だけでなく、美術やゲームなど幅いジャンルに浸透している言葉について知ることで、世の中の解像度が上がって世界が少し楽しくなるかもしれません。
今回のテーマは、“ギリシャ語とつながるラテン語、アラビア語”についてです。
ギリシャ語とつながるラテン語、アラビア語
〜引用&要約〜
世界史において、ヨーロッパ諸国を脅かした強国オスマン帝国など、 ヨーロッパに隣接するイスラムの地域についても見ていきます
ヨーロッパがイスラムの世界と密接に関わってきた名残は、言葉の中にも見ることができます。
日本語では似た語源に勘違いされやすいリズムとアルゴリズムという言葉。
“リズム(rhythm)”、“アルゴリズム(algorism)”という綴りをよくよく見れば、それぞれ種類が異なっているということは納得しやすいかと思います。
この二つのうち、「リズム」はギリシャ語由来、「アルゴリズム」 はアラビア語由来の語です。
「リズム」は古典ギリシャ語 rhuthmós「リズム、拍子」が元で、rhéō「流れる」という動詞と関連付けられています。
古典ギリシャ語における「 r 」の音は、音声学の専門用語で言うと「有声歯茎ふるえ音」という音なのですが、そのでも語頭に立つ場合は「無声歯茎ふるえ音」になります。
この無声歯茎ふるえ音を、ローマ人は古典ギリシャ語をラテン文字で表す際にrhと綴るようになりました。
この語頭のrh-が英語のリズム(rhythm)、リウマチ(rheumatism)、狂詩曲(rhapsody)、レトリック(rhetoric) 、サイ(rhino)、ひし形(rhombus)、押韻(rhyme) などの綴 りに残っています。
rh-で始まる英単語を見つけたら、ほぼ古典ギリシャ語からラテン語を経由した単語と考えていいでしょう。
次に、「アルゴリズム」の元をたどってみます。
アルゴリズムという言葉は、中世ラテン語でアラビア式の記数法を表す「algorismus」にたどり着きます。
このalgorismusをさらにさかのぼると、al-Khwarizmi (アル・フワーリズミー)という人名に行きつきます。
アル・フワーリズミーの記念切手(ソビエト連邦時代のもの)
この人物はアラビアの数学者・天文学者で、アル・フワーリズミーは通称です。
(一説によればアブー・アブドゥッラー・ムハンマド・イブン・ムーサー・アル・フワーリズミーとされている)
「アル・フワーリズミー」という通称は「ホラズム出身の人」という意味で、ホラズムというのは現在のウズベキスタンやトルクメニスタンと部分的に重なる地域です。
このアル・フワーリズミーが関連する英単語に、algebra「代数学」があります。
この語源はアラビア語のal-jabr「復元すること」です。
この語を彼は、方程式を解く際の「移項」の意味で使っていたようです。
彼の著作に「移項と、両辺から同等の項を引くことによる計算についての簡潔な書 (al-kitab al-mukhtaşar ft hisab al-jabr wal-muqabalah)」 というものがあります。
フワーリズミー著「al-kitab al-mukhtaşar ft hisab al-jabr wal-muqabalah」
このタイトルにあるal-jabrという用語がラテン語を通じて、現在もヨーロッパの様々な言語において“algebra(代数)”やそれに類する単語が「代数学」という意味で用いられています。 (例:フランス語algèbre、スペイン語álgebra、イタリア語algebra)。
〜引用&要約ここまで〜
自分も日本語で「リズム」と聞くと、アルゴリズムと同じ語源だと勘違いしていました。
それぞれの言葉が異なる歴史を辿ってきたのですね。
上記に登場した“al”という言葉はアラビア語の定冠詞で、英語では“the”のようなものです。
この“al(アル)”は、アルコールやアルカリ、アルケミーなど様々な言葉に使われており、アラビア語からラテン語を経て英語に置き換わった言葉とされています。
こう言ったアラビア語から中世ラテン語を通じてヨーロッパで使われるようになった言葉はたくさんあります。
次回の記事にて、このテーマについても紹介しようと思いますのでお楽しみに!
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