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【日本語の雑学⑦】経を「きょう」とも「けい」とも発音するワケ

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【前回記事】

 

この記事では、山口謠司氏が著した“面白くて眠れなくなる日本語学”より、個人的に興味深かった内容を紹介していきます。

   

著書内で語りきれていない点などもの補足も踏まえて説明し、より雑学チックに読めるようにまとめていく積もりです。

    

今回のテーマは“経を「きょう」とも「けい」とも発音するワケ”です。

 

  

  

経を「きょう」とも「けい」とも発音するワケ

 

以前の記事にて、漢字に音読みと訓読みがある歴史的な理由を説明しました。

 

古き日本から現在まで、元々文字がなかったところに漢字がもたらされ、それをもとにカタカナやひらがなが作られ、明治以降になると英語、ドイツ語、ポルトガル語など文化とともにたくさんの言葉が混在するようになってきました。

 

他の言語あるいは方言から借りて使う言葉を“借用語”と呼びます。

 

古くからあった“大和言葉(やまとことば)”で言い表わすことができない概念はどうしても他の言葉から借用して使用する必要が出てきます。

 

そのうち漢語は、日本語の借用語の中で最も量が多い言葉です。

 

1980年代の調査によると、新聞記事における借用語の比率はおよそ40%とされています。

 

おそらく現在の新聞においても、使用比率に関しては大きな違いはないでしょう。

 

そんな漢語の読み方の違いによって、同じ漢字なのに読み方が違うものがいくつもあります。

  

例えば「経」です。

 

「時を経る」、「経済」、「お経」など耳にしたことがある言葉かと思います。

 

訓読みだと「経(へ)る」と呼びますが、音読みだと「きょう」や「けい」などいくつか呼び方があります。

 

これは、漢語には呉音と漢音という言葉が生まれた場所による違いがあるからです。

 

 

「経」を「きょう」と読むのは呉音、「けい」と読むのは漢音となります。

  

呉は中国南方、揚子江流域の地方を指します。

 

南北朝500年頃に梁という王朝があり、そこで発展した仏教や儒教の言葉が日本に入ってきました。

 

法隆寺、薬師寺、東大寺など、奈良の有名なお寺で読むお経は、そのほとんどが呉音です。

 

一方、漢音は、唐の時代の都である長安で使われていた言葉です。

 

桓武天皇が奈良から京都へ都を遷都した際、「これから、漢字を学ぶ者は漢音を学べ」との勅り(みことのり)を出しました。

 

それ以降、日本では漢字は観音で学ぶことになります。

 

「経」は呉音である「きょう」から漢音の「けい」へ変わり、「文」は呉音の「もん」から漢音の「ぶん」に変わっていったのです。

 

日本語が時代によって変わっていったように、中国語も時代によって発音が変わっていきます。

 

呉音→漢音→宋音(もしくは唐宋音)→北京標準語と現在までにいくつかの変化があります。

 

餃子」を「こうし」ではなく「ぎょうざ」、「饅頭」を「まんとう」ではなく「まんじゅう」と発音するのは“宋音”が日本式に発音されて定着していったものなのです。

 

 

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