哲学

永劫回帰とルサンチマン~ニーチェ⑤~

哲学

の続き…。

 

前回の記事では末人ニヒリズムについてまとめていきました。

  

末人とは、何もかも受動的になり仕方なく現状をただ生きている状態

  

ニヒリズムとは、どうせ何をやっても意味がないと世の中を諦める状態

  

ニーチェはこの状態になってはいけないと警鐘を鳴らしていました。

  

もしあなたが末人であったとして、人生を繰り返すとしたらどう感じますか?

  

今回の記事では、人生は繰り返すというニーチェの思想“永劫回帰”についてまとめていきます。

  

 

  

永劫回帰(永遠回帰)

もう一度問います。

  

もし人生が繰り返すとしたらどう感じますか?

  

輪廻転生のように別の何かに生まれ変わるのではなく、そっくりそのまま“今と同じあなた”として人生をリスタートし続けるのです。

  

誰かの前で恥をかいたこと、勇気を出して告白したのに実らなかったこと、むりやり嫌なことをさせられたこと…。

  

その全てが繰り返される。

  

それがニーチェが導きだした永劫回帰の思想です。

 

  

永劫回帰=前向きに生きるための考え方

  

上では少し脅しのような書き方をしてしまいましたが、本来ニーチェが伝えている永劫回帰は、前向きに生きるための考え方です。

  

彼は永劫回帰についてこんな言葉を残しています。

  

「たった一度でも魂の震える経験をしたならば、その人生は生きるに値するだろう。」

  

自分の人生を後悔し続けるよりも、胸を張って「最高だ!」といえる瞬間を経験したならば、また同じ人生を歩んでも良いと感じるのではないか。

  

今この瞬間にでも人生を肯定してしまえば、未来永劫に続く人生だって前向きに考えることができる…。

  

そんな考え方がニーチェの永劫回帰なのです。

 

この永劫回帰を受け入れる上で、持ってはならない思考があります。

 

それがルサンチマンです。

 

  

ルサンチマン=強者への嫉妬

  

ルサンチマンとは、“弱者が強者に持つ恨みや妬み、復讐心”と意味づけされています。

 

フランス語のressentimentが語源で、英語ではre-sentimentとなります。

  

re=繰り返す
sentiment=感情

  

つまり、強者対して繰り返し沸き起こる感情のことを指しています。

  

お金持ちの人物を見ると、「羨ましい!」、「自分だって金さえあれば…」などの感情を持つ状態がそれです。

  

成功した同僚を見ると、「なんであいつなんかが…」、「自分の方が能力があるはずだ!」という感情を持つ状態もそれです。

 

永劫回帰を受け入れる上では、ルサンチマンになってはいけないとされています。

  

ルサンチマンになると何がダメなのか。

  

それは“自分が人生の主役と考えられなくなる”からだと彼は言います。

  

「どうせ自分はダメだから…。」とこの世のから目を背けてしまうニヒリズムに陥ってしまうことで、自分から何かやってみようという考えすら持てなくなってしまうのです。

 

  

ルサンチマンにならないために…

とは言っても、人生の中でルサンチマン的な思考になってしまうことってありますよね

 

ルサンチマンはだめと分かっていても、感情を持つ人間である以上仕方がないことです。

 

そして時間が経つにつれてその感情も薄れ、「これで良かったんだ。」と自己解決していきます。

  

それが普通の人間です。

 

しかしニーチェそれさえも否定しています。

  

彼は「これで良い」ではなく「これが良い」と言えるように行動するべきだと言っています。

  

「その経験があったから今の自分がいるのだ。むしろその苦しみが悦(よろこ)びをつくり出すきっかけになっている。」

  

…と肯定することがルサンチマンにならないための考え方になります。

  

そしてこの“悦び”があなたに生きる意味を教えてくれると彼は伝えています。

 

  

悦び=人生の方位磁針

 

ニーチェはこう言いました。

  

「悦びはあなた自身で決めるしかない。」

 

“神は死んだ”という彼の言葉に表されるように、唯一絶対の価値観なんてこの世にないという考えからきたものです。

  

唯一正しい生き方も、唯一正しい悦びもない…、だからこそあなた自身で決めるしかないと言ったのです。

  

彼はその悦びの見つけ方も伝えてくれています。

  

・私が求めているものは何なのか

・今の私をつくっていものは何だろうか

・私が大切にしてきたものは何だったのか

・私が悦びを感じたのはどのようなときだろうか

 

これらについて静かに自分に問いかけることで、つらい経験の中にあったはずの悦びを見つけられるし、その経験からこれからの悦びの見つけ方も分かってくる…。

  

自分がどう生きるべきなのかを見出し、前向きに生きていけるようになると彼は考えたのです。

 

続く…。

 

  

【次回】時代背景と考察

ここまで永劫回帰とルサンチマンについてまとめさせてもらいました。

  

どうせ同じ人生を永遠に繰り返すなら、今の自分を肯定してしまえという考えでした。

  

永劫回帰は少し怖いものがありますが、個人的には好きな考え方です。

 

次の記事では自分の考察も含めて、ニーチェ思想についてまとめていきたいと思います。

  

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