近年、米国では甘いコーヒー飲料の健康影響をめぐる議論が再び注目を集めています。
米国保健福祉省(HHS)の長官である ロバート・F・ケネディjr(Robert F. Kennedy Jr.)は、米国で人気のコーヒーチェーンが販売する甘いコーヒー飲料について、特に若者に対する安全性の観点から疑問を投げかけました。
ケネディ氏は演説の中で、一部のコーヒー製品には100グラム以上の砂糖が含まれる可能性があり、それが本当に安全なのかを企業に示すよう求めるべきだと主張しました。
この発言は、食品成分の安全性を企業が自主的に判断できる GRAS(Generally Recognized as Safe)制度の議論と結びついており、米国の食品政策のあり方にも関係しています。
一方で、栄養学の専門家の多くは、砂糖の過剰摂取は健康問題につながる可能性があるものの、適度な量であれば必ずしも危険とは言えないと指摘しています。
つまり問題は「存在」ではなく「量」であるという見方です。
本記事では、ケネディ氏の発言の背景、コーヒーチェーン店の飲料に含まれる砂糖の量、そして専門家が示す健康への影響についてまとめていきます
参考記事)
・RFK Jr. Just Called Out Sugary Coffee Drinks—How Much Do They Really Affect Your Health?(2026/03/06)
甘いコーヒー飲料をめぐる政治的議論

米国の食品政策を巡る議論の中で、ケネディ氏は人気コーヒーチェーン点である スターバックスとダンキンの飲料に含まれる砂糖量について強い疑問を示しました。
テキサス州オースティンで開催された「Eat Real Food」集会で ケネディ氏は、「10代の少女が115グラムの砂糖を含むアイスコーヒーを飲んでも安全だというデータを示せるのか、企業に問いただすべきだ」と発言しました。
この発言の背景にあるのが、米国の食品成分の安全性評価制度である GRAS(Generally Recognized as Safe)です。
【用語】
・GRAS
アメリカ食品医薬品局(FDA)が定義する「一般に安全とみなされている」食品成分の評価制度
GRAS制度では、食品企業が成分の安全性を自ら評価し、必ずしも政府機関に詳細データを提出しなくても市場に投入できる場合があります。
この仕組みは「GRAS loophole(GRASの抜け穴)」と批判されることもあります。
ケネディ氏は、この制度が食品企業に過度な裁量を与えている可能性があると指摘しました。
実際に米国保健福祉省では、すでにいくつかの食品添加物、特に人工着色料の規制を検討しており、将来的には高果糖コーンシロップなどの精製炭水化物も議論の対象になる可能性があると示唆されています。
ただし、この議論は単一の飲料に含まれる砂糖量の問題というよりも、食品成分の安全性評価制度そのものに関する政策問題である点は重要です。
実際にどれほど砂糖が含まれているのか
甘いコーヒー飲料の砂糖量は、メニューによって大きく異なります。
例えば スターバックスのメニューの中でも糖分が多い飲み物の一つである「Ventiサイズのホワイトモカ」には、約56グラムの砂糖が含まれています。(スターバックス 飲料栄養表(米)より)
一方、ダンキンの飲料はさらに糖分が多い傾向にあります。

特に「Largeサイズのキャラメルクリーム・フローズンコーヒー」には、最大で172グラムの砂糖が含まれるとされています。(ダンキン栄養ガイドより)
この数字を理解するためには、推奨摂取量と比較することが重要です。
米国心臓協会(AHA)は、次のような目安を示しています。
• 女性・子ども:1日 25グラム以下
• 男性:1日 36グラム以下
つまり、甘いコーヒー飲料を1杯飲むだけで、推奨摂取量の数倍の砂糖を摂取してしまう可能性があるのです。
さらに米国の食事ガイドライン(2025〜2030)では、添加糖はできる限り少なくするべきであり、1食あたり10グラム程度に抑えることが望ましいとされています。

ただし、ここで注意が必要なのは、Kennedy が指摘した「砂糖量の多さ」と、GRAS制度で議論される「成分の安全性」は本来別の問題であるという点です。
例えば ダンキンの飲料には、高果糖コーンシロップやデキストロースなどの加工甘味料が含まれる傾向があります。
一方 スターバックスは2016年に高果糖コーンシロップの使用を削減する方針を発表しており、主に通常の砂糖を使用しています。
専門家はどのように考えているのか
栄養学の専門家の多くは、砂糖の過剰摂取は確かに健康リスクを高める可能性があると認めています。
ニューヨークの栄養専門家 Lisa Moskovitz氏は、甘い飲料を安全性の問題として扱うことについて、やや慎重な姿勢を示しています。
Moskovitz氏は次のように説明しています。
「甘い飲料を“安全性のリスク”と呼ぶのはやや極端。砂糖の影響は、個人の食生活や健康状態によって大きく異なる。」
確かに、砂糖を大量に摂取し続けると、以下のような慢性疾患のリスクが高まる可能性があります。
• 二型糖尿病
• 心血管疾患
• 肥満
しかし Moskovitz氏は、忙しい日常の中で少量の砂糖とカフェインを摂取すること自体は、必ずしも有害とは言えないと指摘しています。
一方、米国栄養士会(Academy of Nutrition and Dietetics)のスポークスパーソンである Sue-Ellen Anderson-Haynes氏は、米国人の砂糖摂取量が過剰である現状に警鐘を鳴らしています。
彼女によれば、米国人が摂取する添加糖の最大の供給源は「砂糖入り飲料」です。(Get the Facts: Added Sugarsより)
そのため Anderson-Haynes氏は、「砂糖入り飲料は、少なければ少ないほど健康にとって良いと考えられる。」と述べています。
健康的なコーヒーの頼み方

甘いコーヒー飲料を完全にやめる必要はないものの、健康を意識するなら注文方法を工夫することが有効です。
Moskovitz氏は、メニューのまま注文するのではなく、カスタマイズを利用することを勧めています。
例えば次のような方法があります。
• シロップの数を減らす
• 無糖を選ぶ
• 小さいサイズを選択する
また、砂糖摂取量を徐々に減らしていくことも効果的です。
Moskovitz氏は次のように説明しています。
「砂糖の摂取量が減ると、味覚はより甘味に敏感になる。まずは半分の砂糖にするなど、徐々に減らしていくと良い。」
研究・情報の解釈に関する注意点
今回の議論は、厳密な医学研究というよりも政策的な発言と栄養学の一般的な知見をもとにしています。
そのため、以下の点には注意が必要です。
• 甘いコーヒー飲料そのものの「安全性」を直接検証した研究が提示されたわけではない
• GRAS制度の議論は食品成分の安全性に関する制度問題である
• 健康リスクは「飲料単体」ではなく、長期的な食生活全体に依存する
つまり、甘いコーヒー飲料がすぐに規制されるという確定的な証拠は現時点ではなく、今後の政策議論の行方を見守る必要があります。
まとめ
・甘いコーヒー飲料には1杯で推奨摂取量を大きく超える砂糖が含まれる場合が多い
・専門家は過剰摂取による健康リスクを認めつつも、適度な摂取であれば必ずしも危険ではないと指摘
・健康を意識する場合は、シロップ量を減らすなど注文方法を工夫することが有効

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