科学

砂糖の摂取とがんの発生率・死亡率の関係;大規模研究から分かったこと

科学

現代の食生活では、清涼飲料水や加工食品を通じて多くの単糖が摂取されています。

 

バルセロナ大学の研究チームが主導した最新の研究から、果糖やブドウ糖などの糖類(単類糖)の摂取量が多いほど、がんの発生率およびがんによる死亡率が高くなる可能性があることが明らかになりました。

 

砂糖の過剰摂取がどのように健康へ影響を与えるのかについては未解明の部分も多いことも事実ですが、この成分との接し方について考える良いきっかけになればと思います。

 

今回のテーマは、そんな単糖の摂取ががんのリスクとの関係についての研究です。

 

参考研究)

Simple sugar intake and cancer incidence, cancer mortality and all-cause mortality: A cohort study from the PREDIMED trial(2021/08/10)

 

 

研究の目的と方法

 

本研究の目的は、生活の中で摂取するの単糖が、がんの発生率およびがんによる死亡率とどのような関係があるのかを明らかにすることです。

 

ここでの単糖とは、果糖やブドウ糖に加え、ショ糖(一般的な砂糖)などの精製された糖類を指します。(さらに詳しい定義はコチラ→Monosaccharide

 

甘いお菓子や甘みのある飲み物、そして加工食品などに多く含まれているものであり、私たちが手軽に手にできる食べ物が想定されました。

 

研究では、PREDIMED試験(Prevención con Dieta Mediterránea) のデータを用いました。(Prospective Cohort Studyより

 

PREDIMED試験は、スペインで行われた大規模なコホート研究で、地中海式食事と健康との関連を調査することを目的としています。

 

研究の対象となったのは、PREDIMED試験に参加した成人で、彼らの食事内容と健康状態を長期間にわたって追跡しました。

  

Simple sugar intake and cancer incidence, cancer mortality and all-cause mortality: A cohort study from the PREDIMED trialより

   

具体的には、食事アンケートを用いて各参加者の単糖の摂取量を評価し、がんの発生率および死亡率との関係を統計的に解析しました。

  

また、年齢、性別、BMI(体格指数)、喫煙歴、運動習慣、全体的な食事パターンなどの要因も考慮し、単糖の摂取が独立したリスク要因となるかどうかについても検証しました。

 

 

主な研究結果

研究の結果、以下のような知見が得られました。  

【単糖の摂取とがんおよび死亡リスクをハザードラインで示した表】

Simple sugar intake and cancer incidence, cancer mortality and all-cause mortality: A cohort study from the PREDIMED trialより

HR(ハザード比)=1.0を基準として、それより大きい場合は対象となるイベントの発生率が高いことを示す

 

【それぞれのイベント項目】

・がんの発生

・がんの死亡

・脳および心血管疾患

・全死因による死亡

   

【表のポイント】

・がんや死亡率において最もリスクが高かったのはフルーツジュースからの果糖の摂取

・小さじ1杯4~5gで全死因死亡率のリスクが1.0~1.1増加

  

1. 単糖の摂取が多いほど、がんの発生リスクが高まる

研究対象者を単糖の摂取量に応じてグループ分けしたところ、摂取量が最も多いグループは最も少ないグループに比べてがんの発生リスクが約30%高いことが分かりました。

特に、大腸がんや乳がんのリスクが高まる傾向が見られ、これは単糖の摂取が腸内環境やホルモンバランスに影響を及ぼす可能性を示唆しています。

  

2. がんによる死亡率も上昇

単糖の摂取量が多いグループでは、がんによる死亡率が約20%高いことが確認されました。

これは、単糖ががんの発症だけでなく、がんの進行や悪化にも影響を与える可能性があることを示唆しています。

  

3. 精製された砂糖の影響が特に顕著

果物などに自然に含まれる糖分と、加工食品や清涼飲料水に含まれる精製糖を区別して分析したところ、特に精製糖の摂取ががんリスクを高めることが示されました。 

この結果は、糖質の種類によって健康への影響が異なる可能性を示しており、加工食品の過剰摂取を控えることの重要性を強調しています。

  

  

単糖ががんリスクを高めるメカニズム

 

研究チームは、単糖の過剰摂取ががんリスクを高める可能性のあるメカニズムとして、以下の3つを指摘しています。

  

1. インスリン抵抗性の促進

過剰な糖分摂取によりインスリン分泌が増えると、インスリン抵抗性が生じ、体内の血糖コントロールが乱れます。

インスリンはがん細胞の成長を促す因子の一つとされており、高インスリン状態ががんの発生を助長する可能性があります。(HyperinsulinemiaおよびPostprandial Hyperglycemiaより

  

2. 慢性的な炎症の増加

糖分の過剰摂取は体内の炎症レベルを上昇させることが知られており、慢性的な炎症はがん細胞の発生・成長を促進する要因となります。

特に、単糖を多く含む加工食品を頻繁に摂取する食生活は、体内の炎症反応を悪化させる可能性があります。

  

3. 酸化ストレスの増加

糖の代謝過程では酸化ストレスが増加し、DNAの損傷や細胞の老化を促進することが知られています。

このプロセスは、がん細胞の発生リスクを高める要因の一つと考えられています。

  

  

結論と今後の課題

本研究の結果は、食生活における糖分の管理ががん予防に重要である可能性を示唆しています。

  

特に、精製された砂糖(清涼飲料水や加工食品に含まれる糖分)の摂取を控えることが推奨されます。

 

ただし、本研究は観察研究であるため、単糖の摂取が直接的にがんを引き起こすのか、それとも他の要因が影響しているのかについてはさらなる研究が必要です。

 

今後は、糖分の摂取とがんの関係をより詳細に検討するために、ランダム化比較試験(RCT)や動物実験を用いた研究が求められるでしょう。

 

とは言え、単糖を摂りすぎることや、習慣的な摂取が健康に良いという証拠はありません。

 

健康的な食生活を維持するためにも、糖分の摂取量を見直すことが重要なことであると言えます。

 

 

まとめ

・単糖の過剰摂取は、がんの発生率および死亡率を上昇させる可能性がある(特に、大腸がんや乳がんとの関連が示唆された)

・精製糖(砂糖)の摂取が特にリスクを高めるため、加工食品や清涼飲料水の摂取を控えることが重要

・インスリン抵抗性、慢性的な炎症、酸化ストレスの増加が、がんリスク上昇の主なメカニズムとして考えられる

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