科学

パレオダイエットの誤解:古代人は植物もよく食べていた

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近年人気の「パレオダイエット」は、古代の人類が肉やナッツ、果物、生野菜といった食材を中心に摂取し、植物を複雑に加工することを避けていたという仮説に基づいています。

 

しかし、この主張を覆す新たな研究が発表されました。

 

現代のイスラエル地域に住んでいた更新世(新生代第四紀の前半)の人類は、実際には多種多様な植物からカロリーを得ていたことが明らかになりました。

 

ハイファ大学をはじめとする国際的な研究チームがヨルダン川沿いにあるゲシェル・ベノット・ヤアコブ遺跡で発掘したところ、約78万年前の堆積物に埋まった石器から、数百ものデンプン粒や植物片が発見されました。

 

この発見は、初期人類が意外にも複雑で多様な植物食品を摂取していたことを示しています。

 

今回のテーマは、この古代人の食べ物についての新発見についてです。

 

参考記事)

Paleo Diet Debunked: Ancient Humans Ate Plants, Study Shows(2025/01/20)

 

参考研究)

Starch-rich plant foods 780,000 y ago: Evidence from Acheulian percussive stone tools(2025/01/06)

  

 

古代人の植物摂取の証拠

今回発見されたデンプン粒は、考古学者によって発見された最古のものであるだけでなく、古代の食事が肉に偏ったものでなかったことを示す重要な証拠でもあります。

 

この粒は、以下のような植物に由来していることが明らかになりました。

 

• オークのドングリ

• 小麦と大麦

• マメ類

• 水生植物(黄色いスイレンやクログワイなど)

 

Starch-rich plant foods 780,000 y ago: Evidence from Acheulian percussive stone tools より

 

これらの植物の痕跡は、特にハンマーや金敷きといった加工道具に付着していました。

 

このことは、古代人がこれらの植物を選別し、特定の方法で加工していたことを示唆しています。

 

研究者によれば、植物を砕いたり、食べやすくしたりするための高度な技術がすでにこの時代に存在していたといいます。

 

イスラエルのバル=イラン大学の考古学者Hadar Ahituv氏は、「この発見は、植物食品が私たちの祖先の進化においていかに重要であったかを示している。初期の人類は年間を通して多様な植物を収集し、それを加工するために玄武岩製の道具を活用していた。この発見は、初期人類の食生活に関する研究に新たな知見をもたらした。」と述べています。

 

 

パレオダイエットの再考

 

パレオダイエットは、旧石器時代(約330万年前から11,700年前)に基づいた食事法で、「現代の人間の生理機能はこの時代の食生活に適応している」とする仮説に基づいています。

 

特に、肉食が人類の進化を促進した主因の一つとされることから、動物性タンパク質を重視する傾向にあります。

 

しかし、これまでの仮説では、植物性食品は「硬すぎる」「毒性がある」「美味しくない」といった理由からほとんど摂取されていなかったと考えられていました。

 

しかし、新たな研究は、この見解を覆す内容です。

 

発見された痕跡は、すでに数十万年前から人類が植物をエネルギー源として活用していたことを示しています。

 

さらに、この結果は、植物性食品が人間の脳の発達に大きく貢献してきたという過去の研究とも一致しています。

 

今回の発見は、初期人類の高度な認知能力を示している。これには、異なる距離から植物を収集し、さまざまな生息地からの植物を選別し、さらに加工する能力が含まれる」と研究者たちは述べています。

 

 

他の研究との一致

この研究は、他の類似した研究とも一致しています。

 

例えば、モロッコで発見された約15,000年前の骨や歯を分析した研究では、狩猟採集民の食事に「植物性食品が大部分を占めていた」ことが示されました。

 

また、古代の狩猟の痕跡(骨など)は保存されやすい一方で、植物の痕跡は劣化しやすいため、これまで注目される機会が少なかったのです。

 

しかし、技術の進歩により、ようやく植物の利用に関する新たな知見が得られるようになっています。

  

これらを鑑みて研究チームは、「今回の結果は、植物食品が私たちの進化の歴史において重要な役割を果たしていたことを確認すると同時に、古代人が食事に関連して非常に複雑な行動を発展させていたことを示している。」と述べています。

 

 

結論と今後の研究

今回の研究は、パレオダイエットの基盤となる仮説に疑問を投げかけるものです。

 

肉が進化において重要な役割を果たしたのは確かですが、植物性食品が同様に重要であったことも無視できません。

 

今回の発見により、古代人がいかに高度な認知能力を駆使して植物を利用していたかが、より明確になりました。

  

今後の研究では、植物性食品の加工技術やその具体的な栄養価についてさらなる解明が期待されます。

 

 

まとめ

・古代人は肉だけでなく、多種多様な植物を加工し、主食として利用していた

・植物食品は人類の進化において重要であり、脳の成長にも寄与していた

・高度な加工技術と認知能力を持っていた初期人類の食生活は、現代のパレオダイエットの考え方を再考する契機となる

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