日常的にコーヒーや紅茶を飲むことが、口腔、喉、声帯などに影響を与える頭頸部がんのリスクを低減する可能性があるとする新たな研究結果が発表されました。
国際頭頸部癌疫学コンソーシアム(International Head and Neck Cancer Epidemiology Consortium)の研究者たちは、過去に実施されたコーヒー及び紅茶と咽頭がんの研究データを集約し、これらの飲み物が持つ潜在的な健康効果について分析しました。
その結果、1日4杯以上のコーヒー(カフェイン入り)を飲む人は、頭頸部がんを発症する確率が低いことが示されました。
以下に、研究の内容をまとめていきます。
参考記事)
・Drinking Tea or Coffee Each Day Could Reduce Mouth And Throat Cancer Risk(2024/12/23)
参考研究)
・Coffee and tea consumption and the risk of head and neck cancer: An updated pooled analysis in the International Head(2024/12/23)
頭頸部がんとは
頭頸部がんは、口腔、喉、声帯、鼻腔などの部位に発生するがんを指します。
これらのがんは、飲酒や喫煙といった生活習慣と強い関連があることで知られています。
また、ヒトパピローマウイルス(HPV)などの感染症も重要なリスク要因です。
HPV:皮膚や粘膜に感染するウイルスで、主に腟性交やオーラルセックスによって感染する
頭頸部がんは、世界的に見ると約90万人が毎年新たに診断されており、そのうち約半数が命を落としています。
さらに、生存者の多くは、後遺症として言語障害や食事摂取障害を抱えることがあります。
特に、医療へのアクセスが限られている国々では、この病気が大きな公衆衛生上の課題となっています。
コーヒーの効果:カフェインが鍵?
今回の研究では、14件の過去の研究データから25,000件以上の記録を収集し、統計的な分析を行いました。
その結果、1日4杯以上のカフェイン入りコーヒーを飲む人は、頭頸部がんを発症する確率が最大で17%低下することが示されました。
さらに、具体的な部位において以下のような効果が確認されています。
• 口腔がんのリスクが30%低下
• 喉がんのリスクが22%低下
• 喉の下部がんのリスクが約40%低下
興味深い点として、カフェインを含まないデカフェコーヒーでも効果が見られました。
デカフェコーヒーを飲むことで、口腔がんのリスクが25%減少することが分かっています。
これは、コーヒーに含まれる抗酸化物質や抗炎症物質が発がん物質の影響を軽減する可能性を示唆しています。
【研究データから得たフォレストプロット】
・Odds Ratio(1基準とした実線)を基準線とする
・1より高ければ頭頸部がんを発症する確率が高く、1より低ければ発症する確率は低い
・点線はOverall(全体)の結果を指す
紅茶の効果:適量が重要
紅茶にも抗がん作用があることがこれまでの研究で示されています。
今回の研究でも、喉の下部がんのリスクを約30%低下させる効果が確認されました。
しかし、1日に2杯以上飲むと、逆に声帯がんのリスクが38%増加する可能性があることも指摘されています。
この逆効果の理由は明確ではありませんが、飲み物の温度が関係している可能性があるとされています。
非常に熱い飲み物を頻繁に飲むことが、口腔や喉の細胞にダメージを与え、がん発生のリスクを高める可能性があると考えられています。
タバコやアルコールとの関連
頭頸部がんのリスクは、タバコやアルコールの摂取量とも深い関係があります。
タバコを使用する人は、非喫煙者に比べて頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)のリスクがおよそ10倍にもなるとされています。
また、アルコール摂取量が増えるほどリスクが高まることも知られています。
一方で、コーヒーや紅茶の摂取はこれらのリスクを軽減する可能性があると考えられています。
これらの飲み物には、多くの抗酸化物質や抗炎症物質が含まれており、発がん物質が細胞に与えるダメージを軽減する効果が期待されています。
今後の研究
今回の研究結果は、コーヒーや紅茶が頭頸部がんリスクを低減する可能性を示唆するものですが、これまでの研究の結果には一貫性がなく、さらなる研究が必要です。
ユタ大学の疫学者であるYuan-Chin Amy Lee氏は次のように述べています。
「コーヒーや紅茶の摂取ががんリスクを軽減するという研究は以前から存在するが、今回の研究では、それぞれの飲み物が特定の部位に与える影響が異なることが示された。また、デカフェコーヒーにも一定の効果があることが確認され、さらに詳細な研究が必要。」
コーヒーや紅茶ががんの予防に役立つ可能性がある一方で、飲み物の摂取量や温度など、他の要因も健康に影響を与えることを考慮しなければなりません。
まとめ
・1日4杯以上のカフェイン入りコーヒーは頭頸部がんのリスクを最大17%低減する可能性がある
・デカフェコーヒーや紅茶も効果的だが、飲みすぎや高温の摂取は逆効果になる可能性がある
・喫煙や飲酒などのリスク要因を軽減しつつ、抗酸化物質の効果を生かす生活習慣が重要
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