科学

コーヒーが腸内環境に与える影響

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コーヒーが健康に良いとする研究結果は年々増えてきています。

 

その健康効果は、リラックス効果や血圧のみならず、腸内細菌にまで及ぶことが示唆されており、コーヒーという飲み物がますます注目を浴びる存在となっています。

 

トレント大学をはじめとする各研究機関からの研究によると、コーヒーを飲むことが腸内マイクロバイオーム(腸内細菌叢)の構成に影響を与える可能性があることがわかりました。

 

腸内マイクロバイオームは、私たちの腸内に存在する細菌やその他の微生物の集合体であり、健康の維持に重要な役割を果たしています。

 

本研究では、コーヒー摂取者に特定の種類の細菌であるLawsonibacter asaccharolyticusが高い割合で見られることが明らかになりました。

 

この発見は、コーヒーが心臓や脳などの健康を支える可能性を示唆していますが、専門家は腸内環境を整えるためには食物繊維を含む植物性の食品を中心とした食事が最も効果的であると述べています。

 

今回のテーマとして以下にまとめていきます。

 

参考記事)

How Coffee Might Change Your Gut, According to New Research(2024/12/10)

 

参考研究)

Coffee consumption is associated with intestinal Lawsonibacter asaccharolyticus abundance and prevalence across multiple cohorts(2024/11/18)

 

 

腸内マイクロバイオームとは

There’s a link between coffee and the microbiome より

腸内マイクロバイオーム(腸内細菌叢)は、私たちの腸内に生息する何兆もの微生物の集合体を指します。 

 

この微生物群は、食物の消化や栄養の吸収だけでなく、免疫系の調整や精神的健康に至るまで、身体の多くの機能に関与しています。

 

最近の研究では、腸内マイクロバイオームの状態が慢性疾患や肥満、さらには精神疾患といったさまざまな健康問題と関連していることが示されています。

 

 

コーヒーと腸内細菌の関係を調べる研究

 

この研究は、栄養研究会社ZOEが主導し、「Nature Microbiology」誌に発表されました。

 

過去の研究では、150種類以上の食品や飲料の中で、コーヒーが腸内マイクロバイオームに最も強い影響を与える食品であることが判明していました。

 

今回の研究では、その具体的なメカニズムに焦点を当て、コーヒー摂取が腸内環境にどのように影響するかをより詳細に調査しました。

 

 

研究の詳細と結果

この研究には、米国と英国の23,115人の参加者が含まれました。参加者は、次の3つのグループに分類されました。

1. コーヒーを飲まないグループ:月に3杯未満のコーヒー摂取

2. 中程度の摂取グループ:月に3杯以上、1日3杯未満の摂取

3. 高摂取グループ:1日3杯以上の摂取

 

研究では、参加者から便のサンプルを収集し、腸内細菌の構成を分析しました。

 

その結果、コーヒー摂取者にはLawsonibacter asaccharolyticusという細菌が高い割合で存在することが判明しました。

 

この細菌は、コーヒーを飲まない人と比較して、「高摂取グループ」で4.5~8倍、「中程度グループ」で3.4~6.4倍多く検出されました。

 

 

コーヒーと細菌の直接的な影響

 

研究チームは、試験管内での実験を行い、コーヒーがこの細菌の成長を促進するかを確認しました。

 

その結果、カフェインの有無にかかわらず、コーヒーがL. asaccharolyticusの成長を促進することが確認されました。

 

これは、コーヒーに含まれる特定の化学成分がこの細菌の増殖を助けている可能性を示唆しています。

 

さらに、コーヒーに含まれるクロロゲン酸というポリフェノールが注目されています。

 

この成分は、腸内で代謝されると、他の有益な細菌を増やすことが知られています。

 

研究では、クロロゲン酸の代謝産物であるキナ酸が、コーヒー摂取者の血中で高濃度で検出されました。

 

このことから、クロロゲン酸がL. asaccharolyticusの成長を間接的に支えている可能性が考えられています。

 

 

さらなる研究が必要な点

この研究は重要な発見を示しましたが、未解明の部分も多く残されています。

 

例えば、L. asaccharolyticusは酪酸(butyrate)の産生に寄与することが分かっていますが、人間の健康に与える具体的な影響はまだ不明です。

 

【酪酸】

酪酸は腸内細菌が短鎖脂肪酸(SCFAs)として生成する重要な代謝産物の1つで、以下のような役割があります:

• 腸内の健康維持: 結腸上皮細胞のエネルギー源となる。

• 抗炎症作用: 炎症性疾患のリスクを軽減する可能性がある。

• 腸内環境の調整: 腸内のpHを下げて有害菌の増殖を抑える。

 

また、Lasaccharolyticus は糖を分解しない特徴があるため、主に他の発酵産物やアミノ酸から酪酸を生成していると推測されています。

 

腸内環境の健康維持に寄与している可能性がありますが、まだ詳細な研究は進行中であり、コーヒーの成分がこの細菌とどのように化学的に相互作用しているか、他の腸内細菌にどのような影響を与えているかについてもさらなる研究が必要です。

 

 

腸内環境を整えるための推奨

コーヒーが腸内環境にポジティブな影響を与える可能性がある一方で、専門家は健康な腸内環境を維持するためには以下のようなライフスタイルが重要だと指摘しています。

 

1. 繊維が豊富な食事

腸内細菌が栄養源とする繊維を豊富に含む食品を摂取することが推奨されます。

 

参考記事では、特に以下の食品が効果的として紹介されています。

• にんにく、玉ねぎ、アスパラガス、アーティチョーク

• バナナ、リンゴ、オート麦

• 豆類、亜麻仁

 

2. ライフスタイルの改善

• 質の良い睡眠を確保する

• ストレスを管理する

• 定期的な運動を行う

 

 

3. コーヒーを取り入れる際の注意点

コーヒーを新たに取り入れる場合は、少量から始め、自分の体に合うか確認することが重要です。

 

特に下痢や過敏性腸症候群(IBS)を持つ人は、コーヒーの摂取量を控えるか、医師と相談するのが良いでしょう。

 

 

まとめ

・コーヒーは特定の腸内細菌を増やし、健康に寄与する可能性がある

・コーヒーの効果をさらに理解するには、追加の研究が必要であるが、腸内環境への影響が注目されている

・これに加え、健康な腸内環境を維持するためには、繊維豊富な植物性食品を摂ることが最善策である

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