科学

音楽は気分だけでなく認知症にも良い影響を与える(アングリア・ラスキン大学)

科学

音楽は私たちの日常生活に欠かせない存在です。

 

お気に入りの音楽を聴くことは、気分を高揚させたり、気持ちを落ち着かせたりと感情に対して様々な効果があることは経験的に知っている人も多いかと思います。

 

最新の研究によると、その力は気分的なものだけではく、認知症の治療にも有効であることが示されました。

 

認知症患者の不安や抑うつを和らげ、記憶や感情を刺激することで、生活の質を高める効果があるとされ、お気に入りの音楽を聴くことで脳の複数の領域が活性化し、神経接続の修復が促進される可能性が示されています。

 

音楽療法と薬物療法を併用することで、認知症の進行を遅らせ、患者の自己管理や全体的な健康を支える新しいアプローチとして注目されています。

 

今回の記事テーマとして以下にまとめていきます。

 

参考記事)

Music Has a Profound Effect on People With Dementia(2024/10/16)

 

参考研究)

Preferred music listening for people living with dementia: Two home-based case studies discussing compilation process, autobiographical and biophysical responses(2024/08/16)

Structural changes induced by daily music listening in the recovering brain after middle cerebral artery stroke: a voxel-based morphometry study(2014/04/17)

Large-scale brain networks emerge from dynamic processing of musical timbre, key and rhythm(2012/02/15)

 

 

音楽と脳

 

今からおよそ10年前、研究者たちは音楽を聴くと脳の複数の領域が関与することを発見しました。

 

これには、感情や記憶を処理する辺縁系、知覚や学習、反応に関わる認知領域、そして自発的な動作を司る運動領域が含まれていることが明らかになりました。

 

この発見により、音楽は脳内で一定の狭い範囲でのみ処理されているという従来の考えが覆され、音楽がもたらす神経学的影響に注目が集まるようになりました。

 

これ以降、音楽を使った医学的な療法は、がん治療慢性痛の管理、さらには脳卒中後のリハビリにおいても役立つことが証明されるようになりました。

 

さらに、音楽が脳やその接続を再生させる可能性があることが研究で示され、最近では認知症の患者に対しても効果が期待されています。

 

多くの認知症の原因が脳細胞の死滅に関係しているため、音楽が損傷した神経接続や細胞を修復・強化することで、認知症の患者を助ける可能性が模索されています。

 

 

お気に入りの音楽を聴く

脳に再生効果をもたらすのは、どんな音楽でもよいわけではありません。

 

特に、お気に入りの音楽を聞くことが最も大きな効果をもたらし、記憶や感情と密接に結びついていることが分かっています。

 

理由として、好きな曲を聴くことで快感をもたらすホルモンが分泌され、喜びを感じるからであろうとかんがえられています。

 

アルツハイマー病や他の認知症に関しても、お気に入りの音楽がもたらす効果が関連しています。

 

というのも、音楽に関連する記憶が保存される脳の部分は、他の脳の領域に比べてこれらの病気による影響を受けにくいことが研究によって明らかになっているからです。

 

 

音楽がもたらす治療効果

  

音楽療法の一環として、演奏する、歌う、あるいは音楽を聴くことで認知機能に良い影響があることが分かっています。

 

特に、認知症や記憶障害を持つ高齢者にとってこの方法は有効とされ、音楽療法をの一環としても取り入れられています。

 

今回の小規模な研究によると、認知症の人が繰り返し好きな音楽を聴くと、心拍数や体の動きが音楽のリズムやアレンジに合わせて変化することがわかりました。

 

また、音楽に合わせて歌ったり、曲を聴きながら過去の思い出を話したりすることでも心拍数に変化が見られました。

 

これらの変化は、音楽が運動、感情、記憶の想起にどのように影響するかを示しています。

 

音楽を聴くことで、患者の不安、攻撃性、混乱が軽減され、全体的な気分も向上することが報告されています。

 

さらに、定期的に音楽療法を受けている患者は、必要とされる薬の量が減るという研究結果もあります。

 

また、認知症の人々の認知機能を支えるために、音楽トレーニングプログラムの効果をテストする研究も始まっています。

 

これまでのところ、音楽トレーニングを受けた成人は、単なる身体運動だけに参加した成人に比べて、問題解決能力や感情の調整、注意力などの実行機能が向上しているという有望な結果が得られています。

 

したがって、音楽は認知症の人々にとって引き続き有用な医療手段となるでしょう。

 

これまでの研究から言えるのは、認知症の進行を遅らせるためには、音楽だけでなく、薬や生活習慣など他の医療技術と組み合わせて使用することが大切であるということです。

 

しかし、認知症患者の自己管理や生活の質の向上に役立つ可能性は高く、今後も研究の発展が期待される分野と言えるでしょう。

 

 

まとめ

・音楽は認知症患者の不安を和らげ、記憶や感情を刺激し、生活の質を向上させる

・研究により、音楽が脳を活性化し、薬の使用を減らす効果が示されている

・薬と音楽療法の併用が、認知症患者の自己管理と生活の質向上に役立つ

コメント

タイトルとURLをコピーしました