【前回記事】
この記事では、著書“図鑑心理学”と自分が学んできた内容を参考に、歴史に影響を与えた心理学についてまとめていきます。
心理学が生まれる以前、心や精神とはどのようなものだったのかに始まり、近代の心理学までをテーマとして、本書から興味深かった内容を取り上げていきます。
今回のテーマは、「10の認知バイアス」についてです。
10の認知バイアス
前回、思考は私たちが考えるよりもいい加減で、合理的でない判断を下してしまうという旨の記事を書きました。
その中で、「アンカリング」、「利用可能性ヒューリスティック」、「自信過剰バイアス」、「バンドワゴン効果」の4つのバイアス(偏見、傾向)を紹介していきました。
今回は、その4つのバイアスの復習に加え、残り6つのバイアスについても紹介していこうと思います。
【①アンカリング】
アンカリングとは、はじめに認識した情報によって結論が左右されてします傾向のことです。
「50パーセントオフ」と書かれた値札を見ると、元の価値を知らなくても、なんとなく安く感じてしまうのがそれです。
他にも、本来あと1時間で終わる仕事において、「あと30分ぐらいで終わります」と言いながら、実際には1時間かかるとかなり印象が悪いです。
しかし、「あと1時間半で終わります」と言いながら1時間で終えると、同じ1時間で終えたはずなのにかなり良い印象を持ってもらえたりします。
そういった印象でコントロールできるのも、アンカリングの良いところです。
【②利用可能性ヒューリスティック】
利用可能性ヒューリスティックとは、自分の入手しやすい情報や、簡単に頭に浮かぶことから判断してしまうという傾向のことです。
「A」で始まる単語と「A」が3番目に来る単語では、どちらの数が多いでしょうか?
こう聞かれると、3番目に「A」が来る単語より、最初に「A」が来る単語の方が頭に浮かびやすいので、Aの回答をする人が多くなります(正解はAが3番目に来る単語です)。
ショッピングで買うものに迷った際、CMでよく見かける会社の製品や、知り合いが使っているブランドなどに手が伸びてしまうのもこのバイアスの影響とされています。
【③バンドワゴン効果】
バンドワゴン効果とは、大勢の人が支持している物や事に同調し、いっそう支持が大きくなるという傾向のことです。
周りの人が人気のスイーツを買っているとき、別に好きでもないのに自分も欲しく感じてしまうのはこういった心理効果によるものです。
【④確証バイアス】
確証バイアスとは、自分のもっている考えや仮説を正当化するために、肯定的な(都合の良い)情報を受け入れようとする傾向のことです。
逆に、反対の意見や都合の悪い情報は受け入れず、無視したり疑ってかかることも同じバイアスになります。
新しく購入したガジェットが総合的に他のものより劣る性能だったとしても、無理矢理にでも良いところを探そうとするのはこのためです。
別の見方では、信念を貫いて行動できるというメリットあるため、必ずしも悪い傾向とは言えません。
【⑤クラスター錯覚】
クラスター錯覚とは、ランダムな現象に一定の法則があるように錯覚してしまう傾向のことです。
コインの裏表を当てる際、【表、裏、表、裏、表、表、表】ときたら、次は表と裏のどちらを選ぶ人が高いでしょうか。
おそらく【裏を選択する人】が多いと思いと感じるはずです。
サンプル数の少ないランダムデータの中で、何か法則があると思ってしまうことがクラスター錯覚です。
丁半博打のようなギャンブルにおける“流れ”というのもこの類いと言えます。
【⑥情報バイアス】
情報バイアスとは、必要以上に情報があるために、判断を誤ってしまう傾向のことです。
医療統計の用語で、“盲検(blind)”という言葉があります。
これは、どのような治療が行われているのかを知らない状態で治験などに参加することをさします。
例えば、患者に「これは頭痛薬です」といって飲んでもらうと、その薬が偽ものだったとしても本当に頭痛が治ってしまうことが当たり前にあります。
一種のプラシーボ効果ですが、情報があることで脳がエラーを起こした例でもあります。
患者に対して治療や薬の効果を伝えずに飲んでもらい、本来の治療効果・有効性を確かめることをシングルブラインドテスト(単盲検試験)と言います。
【⑦ダチョウ効果(オストリッチ効果)】
ダチョウ効果とは、都合の悪い状況に遭遇した際、それを存在しないものとみなして避ける傾向のことです。
英語のことわざ「危険を避けるために、ダチョウは砂の中に頭を隠す(He is hiding his head like an ostrich.)」が由来です。
砂の中に頭を埋めることで、とりあえず目の前の危険を回避しようとする行動から来ているそうですが、実際のダチョウはそんなことはしないそうです。
ダチョウ効果の例としては、後払い系の支払い通知や年金の支払いなどの督促状の中身を見ず、とりあえず次の催促を待つといったものが挙げられます。
【⑧ステレオタイプ】
ステレオタイプとは、一般的に浸透している先入観や思い込みのことです。
血液型占いなどはそのいい例で、「O型はおおざっぱ」、「A型は几帳面」、「AB型は天才肌」などを信じて行動してしまうこともステレオタイプの一つです。
経験則や世間の風潮として正しい場合もありますが、差別や偏見を生む可能性があるというデメリットもあります。
【⑨結果バイアス】
結果バイアスとは、過程を考えず、結果のみで成果の良し悪しを判断してしまう傾向のことです。
常に営業成績がトップのAさんがいるとします。
彼は今月、出張や接待が重なり、営業としての成績が落ち込んでしまいました。
果たしてAさんは能力が低いもしくは能力が衰えてでしまったと言えるでしょうか。
むしろ、自分の時間を削って会社に貢献したとも言えますが、結果バイアスの前では、Aさんの成績は前ほど良くないと判断されてしまいます。
【⑩自信過剰バイアス】
自信過剰バイアスとは、自分の知識や経験が正しいと思い込み、正常な判断ができなくなる傾向のことです。
投資で言うと、過去に投資で成功した経験からむやみに取引を行ってしまい、結果的に手数料などで投資成績が落ちてしまったり、ハイリスクな投資に対し、「自分なら大丈夫」と根拠なく判断してしまったりする例が挙げられます。
その自信から、新しいことにチャレンジしたりというメリットもありますが、誤った判断を下してしまう可能性もあるため注意が必要です。
世の中を見渡してみると、コマーシャルやあらゆるところにこういったバイアスが隠れています。
マーケティングやビジネスシーンにおいては特に顕著で、スーパーマーケットの棚や商品一つ一つお手にとっても感心するほどたくさんの仕掛けが施されています。
時には、身を滅ぼしかねないバイアスや意図して悪い方向に導こうとする言い回しも存在します。
少しおかしいなと感じたら、直感で動くのではなく、理性を働かせてみるとそのリスクに気付けるかもしれません。
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