人気の睡眠補助サプリメントであるメラトニンについて、長期使用が心不全リスクの上昇と関連する可能性が示されたという予備的研究が報告されました。
本研究は査読前の段階にあるものの、1年以上メラトニンを処方された人は、5年間で心不全リスクが89%高く、全死亡リスクも約2倍に上昇していたとされています。
現時点で因果関係は証明されていませんが、長期使用の安全性について再検討が必要である可能性が示唆されています。
以下に研究の内容をまとめます。
参考記事)
・Common Supplement Shows a Concerning Link to Heart Failure(2026/03/03)
参考研究)
研究の概要と発表の場
今回の研究は、2025年11月に開催されたAmerican Heart Association Scientific Sessionsにおいて発表されたものです。
研究を主導したのは、ニューヨークのサニー・ダウンステート医科大学およびキングス・カウンティ・プライマリケアに所属する医科学者Ekenedilichukwu Nnadi氏です。
なお、本研究はまだ査読を経ていない予備的な解析結果であり、現時点で医療ガイドラインを変更するものではありません。この点は非常に重要です。
研究の方法

研究チームは、米国および英国の成人13万人以上の電子健康記録(EHR)を解析しました。
対象は不眠症を有する成人です。
特筆すべき点として、英国ではメラトニンは処方薬としてのみ入手可能ですが、米国では市販(OTC)で購入可能です。(日本でも同様のメラトニンサプリを購入可能)
この制度差を背景に、研究では処方記録を基準としてメラトニン使用者を特定しました。
しかしながら、参加者本人へのアンケート調査は実施されていません。
そのため、米国において処方なしでメラトニンを購入・使用していた人が対照群(非使用群)に含まれていた可能性があります。
この点は研究の大きな制限とされています。
主な結果
解析の結果、以下のような関連が示されました。
• 1年以上メラトニンを処方された群は、5年間で心不全リスクが89%高かった
• 全死亡率は4.3%から7.8%へ上昇していた
• 心不全による入院リスクは約3.5倍に増加していた
これらの数値は統計的関連を示すものですが、メラトニンが直接的に心不全を引き起こしたと断定することはできません。
観察研究であるため、交絡因子(例:重度の不眠症自体が心血管リスクを高めている可能性など)を完全に排除することは困難です。
研究者の見解

Ekenedilichukwu Nnadi氏は発表時に次のように述べています。
「メラトニンサプリメントは一般に考えられているほど無害ではない可能性がある。もし本研究が確認されれば、医師が睡眠補助薬について患者に助言する方法に影響を与えるかもしれない。」
また、本研究には関与していないスペイン睡眠医学会連合の会長Carlos Egea氏もコメントを発表しています。
Egea氏は、本研究の方法論的限界を指摘しつつも、次のように述べています。
「これらの結果は、メラトニンを慢性的に使用しても安全であるという認識に疑問を投げかけている。安全性プロファイルを明確にするためには、対照群を設けた前向き試験が必要。」
メラトニンとは何か
メラトニンは、脳内で自然に分泌されるホルモンであり、体内時計(概日リズム)を調整する役割を担っています。
夜間に分泌が高まり、睡眠の開始と維持を助けます。
サプリメントとしてのメラトニンは、このホルモンを補充する形で作用します。
特に就寝前に摂取することで、入眠を促進する効果が期待されています。
米国では、メラトニンは成人が摂取する天然由来製品の中で4番目に人気が高い製品とされています。
しかし、この順位に関する具体的統計出典は本文中では明示されておらず、厳密な順位については確認が必要です。
長期使用の安全性について
一般的に、メラトニンは妊娠中および授乳中でない成人において、1〜2か月程度の短期使用であれば安全性が高いと考えられています。
しかし、それ以上の長期使用に関する大規模かつ包括的な研究は限られています。
人気の高まりに対して、科学的エビデンスが十分に追いついていない状況にあると指摘する研究者もいます。
さらに、短期使用であってもリスクが皆無ではありません。
例えば、オーストラリアでは子どもによる非致死的過量摂取事例が報告され、安全性への懸念が提起されています。
ただし、これらの事例の詳細な疫学データは本文中では示されていません。
研究の限界
本研究の最大の限界は、実際の摂取状況を直接確認していない点です。
• 処方記録のみで使用を判断している
• 市販購入者が対照群に混在している可能性
• 用量や服用遵守率が不明
• 不眠症の重症度や他の心血管リスク因子の影響を完全に除外できない
これらの要因により、観察されたリスク上昇がメラトニンそのものによるものかどうかは断定できません。
現時点での結論

今回の研究は、メラトニンの長期使用と心不全および死亡リスク上昇との統計的関連を示した予備的データです。
しかし、因果関係は確立されておらず、研究方法にも明確な制限があります。
したがって、現時点でメラトニンの使用を直ちに中止すべきであるという結論には至りません。
ただし、長期使用を自己判断で継続することには慎重さが求められる可能性があります。
今後は、無作為化比較試験(RCT)を含む前向き研究によって、安全性がより明確にされる必要があります。
まとめ
・1年以上のメラトニン処方は、心不全リスク89%増加および全死亡リスク上昇と関連していた
・本研究は査読前の観察研究であり、因果関係は証明されていない
・長期使用の安全性を明確にするためには前向き臨床試験が必要

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