食品保存料の摂取ががんや糖尿病リスクを高める可能性──フランス人10万人規模の分析より

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日常的に口にしている加工食品に含まれる保存料が、将来的ながんや糖尿病のリスクをわずかに高める可能性がある──そのような結果を示す2本の大規模研究が、今週フランスの研究チームによって発表されました。

 

これらの研究は、いずれも10万人を超えるフランス国民を対象とした長期的な食事調査データに基づくものであり、食品添加物、とりわけ保存料と健康リスクとの関連性を詳細に分析しています。

 

ただし、専門家からは「観察研究である以上、因果関係を直接示すものではない」との慎重な意見も示されています。

 

以下に研究の内容をまとめます。

 

参考記事)

Major Studies Link Food Preservatives to Higher Risk of Cancer And Diabetes(2026/01/09)

 

参考研究)

Intake of food additive preservatives and incidence of cancer: results from the NutriNet-Santé prospective cohort(2026/01/07)

Associations between preservative food additives and type 2 diabetes incidence in the NutriNet-Santé prospective cohort(2026/01/07)

 

 

フランスで行われた2つの大規模観察研究

今回注目された2つの疫学研究は、いずれもフランス国立保健医学研究機構を中心とした研究グループが進めている長期追跡研究「NutriNet-Santé研究」のデータを基盤としています。

  

この研究では、10万人以上のフランス人成人が、定期的に食事内容や生活習慣について詳細な質問票に回答しており、栄養と健康の関連性を解析するための貴重なデータベースとなっています。

 

両研究を統括したのは、フランスの疫学者である Mathilde Touvier氏氏であり、所属機関としては ソルボンヌ・パリ北大学 や インサーム が研究の中核を担っています。

 

 

保存料とがん発症リスクの関連

 

最初の研究は、英国の医学誌 BMJ に掲載されました。

 

この研究では、ヨーロッパ市場で広く使用されている食品保存料と、がんの発症率との関連性が解析されています。

 

研究チームは、亜硝酸塩(nitrites)、および硝酸塩(nitrates)に注目しました。

 

これらは、ハム、ベーコン、ソーセージなどの加工肉製品に色味や保存性を与える目的で広く使用されている保存料です。

 

分析の結果、これらの保存料を多く摂取している人ほど、全体的ながん、乳がん、前立腺がんの発症率が高い傾向が見られたと報告されています。

 

特に顕著だったのは、亜硝酸ナトリウム(sodium nitrite)と前立腺がんとの関連であり、摂取量が多いグループでは、前立腺がんのリスクが約3割高くなることが示されました。

 

ただし、このリスク上昇は「中程度」にとどまるものであり、研究者らは比較のために、重度の喫煙が肺がんリスクを15倍以上に高めることを挙げ、過度な恐怖を抱く必要はないとしています。

 

 

保存料と二型糖尿病

2本目の研究では、一部の食品添加物と二型糖尿病の発症リスクとの関連が調査されています。

 

その中で特に注目されたのが、ソルビン酸カリウム(potassium sorbate)です。

 

この物質は、食品や飲料においてカビや細菌の増殖を防ぐために使用される保存料であり、パン類、チーズ、清涼飲料など、非常に幅広い加工食品に含まれています。

 

研究結果によると、ソルビン酸カリウムの摂取量が多い人では、二型糖尿病を発症するリスクが約2倍に高まる関連性が示されました。

 

もっとも、この結果についても、直接的な原因であるかどうかは断定できないと研究者自身が明言しています。

 

 

研究責任者が強調する「誤解してはいけない点」

 

これら2つの研究を監督した Mathilde Touvier氏は、AFP通信の取材に対し、次のように述べています。

 

保存料を含む食品を食べたからといって、すぐにがんや糖尿病になるわけではない。問題は長期的な摂取にある。

  

そのうえで彼女は、一般市民に向けたメッセージとして、「スーパーで買い物をする際には、できるだけ加工度の低い食品を選ぶことが重要」と強調しています。

 

研究に直接関与していない外部の専門家たちは、研究手法の堅牢性を評価しつつも、解釈には注意が必要だと指摘しています。

 

キングス・カレッジ・ロンドン の栄養学専門家である Tom Sanders氏は、今回の結果について次のように警鐘を鳴らしました。

 

これらの関連性は、すでにリスク要因として知られている他の因子を完全に補正しきれていない可能性によるものかもしれない

 

たとえば、加工肉の摂取やアルコール摂取自体が、すでにがんリスクを高めることは確立されています

 

そのため、ワインの製造過程で使用される ピロ亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulfite) ががんの原因なのではなく、実際にはアルコール摂取そのものが影響している可能性も考えられると指摘しています。

 

 

食品表示や政策への影響の可能性

一方Sanders氏は、硝酸塩や亜硝酸塩を使用している食品について、健康警告表示を行うことは一つの選択肢になり得るとも述べています。

 

今回の研究発表は、イギリス政府が高脂肪・高塩分・高糖分の不健康な食品や飲料について、日中のテレビ・ラジオ・オンライン広告を禁止した直後に行われました。

 

このタイミングも相まって、超加工食品や食品添加物に対する規制強化の議論が、今後さらに活発化する可能性があります。

 

本記事で紹介した研究結果は、いずれも観察研究に基づくものであり、保存料が直接がんや糖尿病を引き起こすことを証明したものではない点に注意が必要です。

 

食生活全体、運動習慣、喫煙、飲酒、社会経済的要因など、多くの交絡因子が影響している可能性がある点については、現時点では完全に排除できないことが明記されていますが、摂取を減らす意識は持っておいて損はないかと思います。

 

 

まとめ

・フランスの大規模観察研究により、一部の食品保存料とがん、二型糖尿病リスクとの関連性が示された

・因果関係は証明されていないものの、亜硝酸塩や硝酸塩といった保存料を摂取する食生活の影響が懸念されている

・専門家は、加工度の低い食品を選ぶ食習慣を勧めている

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