食事を抜くと血糖値はどう変化するのか

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食事を抜くことは、仕事や家事に追われて時間が足りないときに仕方なく起こる場合もあれば、健康や減量を目的にあえて行われる場合もあります。

しかし、実際のところ、食事を抜くと血糖値はどのように変化するのでしょうか。

特に近年は、断続的断食(intermittent fasting)が注目される一方で、単純に「食事を抜く」ことの健康影響は複雑であり、その評価には慎重さが求められています。

 

以下に研究の内容をまとめます。

参考記事)

What Happens to Your Blood Sugar When You Skip a Meal?(2025/11/26)

参考研究)

Association between breakfast skipping and postprandial hyperglycaemia after lunch in healthy young individuals(2019/09/15) 

・他、記事内にて随時リンク

 

食事を抜いた場合の血糖値

 

これまでの研究では、食事を抜くことは血糖値の調節機能を乱し、特に朝食を抜く場合に大きな影響が出ることが指摘されています。

 

2019年に実施された、健康な若年男性を対象とした研究では、朝食を抜いた群は朝食を摂った場合と比べて、昼食後の血糖値が有意に高くなることが示されました。

   

また、他の複数の研究でも、朝食を抜くことは糖代謝の乱れ血糖値の異常変動につながり、結果として前糖尿病や二型糖尿病のリスクを高める可能性が示されています。

朝食を6日間抜いた若い日本人男性のエネルギー代謝と血糖値の日中のリズムに及ぼす影響 より

日本の思春期の朝食抜きと前糖尿病との関連 より

    

2020年の研究では、二型糖尿病の患者において朝食欠食が血糖コントロールの悪化と関連するという結果も示されました。

   

また、昼食や夕食を抜いた場合も血糖値へ影響は及びますが、朝食欠食と比べると変動は大きくないとされています。

  

これは、夜間の絶食状態から回復する朝の食事が、血糖や代謝リズムにとって重要であることを示唆しています。

   

  

食事欠食と断続的断食(Intermittent Fasting)は同じではない

しばしば混同されますが、研究分野では 「食事を抜くこと」=「断続的断食」ではない と明確に区別されています。

 

断続的断食は、一定の時間枠で計画的にカロリー摂取をコントロールする明確な方法論であり、単なる欠食とは異なります。

 

特に、早期時間制限給餌(early time-restricted feeding:eTRF)という方法では、1日の早い時間帯に集中して食事を摂り、それ以外の時間は断食するというパターンを取ります。

  

この方法についての研究では、血糖値の改善が示唆されており、代謝への良い影響が期待できるとされていますが、長期的に見てこれが良い影響を与え続けるのかは謎です。

  

断続的断食全体の効果については研究間で結果が分かれており、

• 標準的な食事制限より血糖改善効果が大きいとする研究

• 標準的な食事療法と同程度であるとする研究

の両方が存在しているため、科学的結論はまだ一貫していないと考えられています。

 

そのため、どの断食法が最も効果的か、また個人差がどの程度影響するかについては、今後さらなる研究が必要です。

 

 

血糖値を安定させるために推奨される生活習慣

もし血糖値管理に不安がある場合、最も良い方法は医療機関に相談することです。

 

特に糖尿病や前糖尿病の人は、欠食による影響が大きくなる可能性があるため、自己判断での欠食は推奨されません。

 

以下は、血糖値の安定を支えるために専門家が推奨しているポイントです。

  

1. 高タンパク質・高食物繊維の朝食をとること

消化吸収が緩やかになり、血糖値の急上昇を防ぐ働きがあります。

朝食にたんぱく質・食物繊維を含めることで、1日の血糖コントロールが安定しやすくなるとされています。

   

2. 炭水化物はたんぱく質・食物繊維と組み合わせること

単独で炭水化物を摂取すると吸収が速く血糖値が上がりやすいため、他の栄養素と組み合わせて血糖上昇を抑えることが推奨されます。

  

3. 毎日一定の食事タイミングを保つこと

研究によれば、1日の食事時間幅(食べ始めてから食べ終わるまで)が12時間以内であるほうが、全体的な健康指標が良い傾向があるとされています。

   

4. 夜遅くの飲食を避けること

就寝前の食事は、血糖値の乱れや糖尿病リスクの上昇と関連していると報告されています。

これは生体リズムとの関係が大きく、夜間はインスリンの働きが弱まるためと考えられています。

  

  

低血糖・高血糖に気付くための症状

 

血糖調整が乱れると、低血糖(hypoglycemia)、高血糖(hyperglycemia)の両方が起こり得ます。

 

特に低血糖は急激に進行することがあり、重篤化すると危険です。代表的な症状は以下の通りです。

• ふるえ・脱力感

• 動悸

• 冷汗・多汗

• 強い空腹感

• 不安・緊張

• 混乱・異常行動

• 頭痛・めまい

• かすみ目

• ろれつが回らない

• 眠気

• 強い喉の渇きや頻尿

  

極端な例ではありますが、極度の低血糖は、けいれん・意識喪失・昏睡・死亡につながることがあり、 瞬間的には高血糖よりも注意が必要です。

   

 

まとめ

・朝食を抜くことは、他の食事よりも血糖値への悪影響が大きく、日中の血糖変動を増やすことが報告されている

・断続的断食は欠食とは異なり、計画的に行うことで血糖改善の可能性があるが、研究結果は一致しておらず、今後の検証が必要

・血糖を安定させるためには、規則的な食事、たんぱく質と食物繊維を含む朝食、そして夜遅い食事の回避が推奨される

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