私たちの日常生活において、コーヒーや紅茶、炭酸飲料、エナジードリンクなど、カフェインを含む飲み物は広く消費されています。
特にコーヒーはカフェインの最も一般的な供給源であり、朝の目覚めや仕事中の集中力向上のために欠かせない存在となっています。
しかし、近年の研究によると、コーヒー自体が抗炎症作用を持つ一方で、カフェインそのものは炎症を抑える場合もあれば、逆に促進する場合もある ことが示されています。
この複雑な作用は、飲料の種類や添加物の有無、さらに個人の体質など、さまざまな要因によって左右されると考えられています。
今回はそんなカフェインと炎症についてがテーマです。
以下に研究の内容をまとめます。
参考記事)
・How Coffee and Caffeine Really Affect Inflammation(2025/09/17)
参考研究)
・Consumption of coffee or caffeine and serum concentration of inflammatory markers: A systematic review(2025/11/03)
カフェインと炎症の関係

炎症とは、免疫系が有害な物質や病原体を排除するために化学物質を放出することで起こる体の反応です。
炎症は防御反応として必要なシステムですが、慢性的な炎症は喘息や心疾患、さらには一部のがんなどのリスクを高めることが知られています。
コーヒーの摂取は炎症マーカーを低下させる可能性があると報告されており、ある研究では、コーヒーの消費量が多い人ほど炎症マーカーが低い傾向にあることが示されました。(Associations of Coffee Drinking with Systemic Immune and Inflammatory Markersより)
また、1日4杯以上のコーヒーを飲む人は、C反応性タンパク質(CRP)を含む炎症マーカーが減少していたという報告もあります。
興味深いのは、カフェイン入りのコーヒーだけでなく、デカフェ(カフェインを取り除いたコーヒー)でも同様の結果が見られた点です。(Coffee consumption and plasma biomarkers of metabolic and inflammatory pathways in US health professionalsより)
一方で、別の研究ではコーヒーやカフェインが人によっては炎症を増加させる可能性があると指摘されています。
つまり、カフェイン単独では必ずしも抗炎症作用を持つとは限らず、むしろ炎症を助長する可能性もあるということです。(Coffee consumption modulates inflammatory processes in an individual fashionより)
炎症作用に影響する要因
カフェインの炎症に対する作用は一様ではなく、複数の要因に左右されます。(Coffee consumption modulates inflammatory processes in an individual fashionより)
• 抗酸化物質の含有量
緑茶と紅茶のように、同じカフェインを含む飲料であっても抗酸化成分の量は異なります。
研究では、緑茶は紅茶よりも強い抗炎症作用を持つ とされています。
• コーヒーの種類
コーヒーの抗炎症効果は、豆の加工方法や焙煎度合いによって変わります。
たとえば、焙煎前の生豆から作られる「グリーンコーヒー」は、焙煎後のコーヒーよりもクロロゲン酸という抗炎症成分を豊富に含んでいます。
• 添加物
コーヒーや紅茶に加えられる砂糖やクリーム、牛乳などは炎症を悪化させる要因になる可能性があります。
つまり、カフェインのはコーヒーやお茶の種類によって変わるが、いずれも添加物を含むかどうかが炎症作用に大きく影響する ということです。
カフェインが体に与えるその他の影響

カフェインは炎症への影響だけでなく、健康にさまざまな作用をもたらします。
• 覚醒作用
最もよく知られる作用は、中枢神経を刺激して眠気を抑え、集中力や覚醒度を高める点です。
ただし、過剰摂取は不眠、興奮、震えなどを引き起こす可能性があります。
(Caffeine as a Factor Influencing the Functioning of the Human Body—Friend or Foe?より)
• 運動能力の向上
研究では、筋持久力や筋力、運動速度、さらには有酸素運動能力の向上に役立つとされています。
スポーツの現場では、合法的なパフォーマンス向上手段として利用されることもあります。
(International society of sports nutrition position stand: caffeine and exercise performanceより)
• 消化の改善
カフェインは消化管の運動を活発化させ、排便を促す作用があります。
これにより便秘の予防に役立つ可能性があります。
• 酸化ストレスからの保護
カフェインは抗酸化作用を持ち、細胞をフリーラジカルによる酸化ダメージから守ります。
紫外線による皮膚ダメージの軽減にも寄与する可能性があると報告されています。
(Caffeine as a Factor Influencing the Functioning of the Human Body—Friend or Foe?より)
• 心血管系への影響
一部の研究では、コーヒー摂取量が多い人は心不全のリスクが低いとされる一方、カフェインは血圧上昇や不整脈リスクを高める可能性もあると報告されています。
この点については研究結果が一貫しておらず、明確な結論は出ていません。
さらに、カフェインはうつ病リスクの低下、痛みの耐性上昇、免疫機能や呼吸機能の改善にも関与しているとされます。(Caffeine as a Factor Influencing the Functioning of the Human Body—Friend or Foe?より)
過剰摂取による悪影響
カフェインを摂りすぎると、以下のような副作用も報告されています。
• 動悸や心拍数の増加
• 高血圧
• 不眠
• 不安感
• 手の震えや緊張
• 胃の不快感
• 頭痛
• 吐き気
• 不整脈
特にカフェインに敏感な人は、少量でも強い副作用を感じる場合があります。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、1日あたり400ミリグラム(コーヒー2〜3杯程度)のカフェイン摂取は安全であるとしています。

この範囲内であれば、健康への悪影響はほとんど報告されていません。
安全に摂取するためのポイントは以下の通りです。
• 製品ラベルの確認
プロテインバーやガム、医薬品など、意外な製品にもカフェインが含まれることがあります。
• エナジードリンクの注意
エナジードリンクのカフェイン量は1本あたり54〜328ミリグラムと幅広く、1本でほぼ1日の許容量に達する場合もあります。
• デカフェの活用
デカフェコーヒーやデカフェティーは通常よりカフェイン量が少ないため、摂取を控えたい人に適しています。
ただし、完全にゼロではなく、製品によって含有量は異なります。
(Chronic Inflammatory Diseases, Anti-Inflammatory Agents and Their Delivery Nanosystemsより)
炎症を抑えるための生活習慣
炎症はカフェインだけでなく、生活習慣や環境因子とも深く関わっています。
炎症リスクを下げるためには、以下のような対策が推奨されます。
• 加工食品やパッケージ食品の摂取を減らす
• ブルーベリー、リンゴ、ブロッコリーなどの抗炎症食品を増やす
• 喫煙を避ける
• アルコールを控える
• ストレスを軽減する
• 有害な化学物質への曝露を減らす
• 十分な睡眠をとる
• 定期的に運動を行う
本記事では、コーヒーとカフェインの炎症への影響について紹介しました。
研究の結果は一貫していない部分もあり、特にカフェイン単独での作用については今後の研究が待たれます。
しかし、コーヒーに含まれる抗酸化成分や生活習慣の工夫によって、炎症リスクを下げることは可能だと考えられます。
まとめ
・コーヒーは抗炎症作用を示すことが多いが、カフェイン単独では炎症を促進する可能性がある
・飲料の種類や添加物によって、炎症作用は大きく変化する
・安全な摂取量を守り、生活習慣全体で炎症を抑えることが重要である


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