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【研究】加工肉の摂取量を30%減らした場合の病気の予防効果(エディンバラ大学、他)【要約】

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加工済みのベーコンソーセージは、朝の忙しい時間でもごきげんな朝食を用意できる便利な食品です。

 

卵と一緒にさっと焼いて、ご飯と一緒に盛り付けているという家庭もあるでしょう。

 

そんな加工肉に含まれる保存料や添加物が発がん性に関係するということは、メディアで取り上げられることはあれど、さほど強く認識されていません。

  

国立がん研究センターによると、加工肉は、ヒトに対して発がん性があるとされる“Group1”に分類され、赤身肉は、おそらく発がん性があるとされるGroup2A”に分類されています。

 

国立がん研究センター より

 

WHOCancer: Carcinogenicity of the consumption of red meat and processed mea)においても、「加工肉を毎日50g(ハム2枚程度)食べるごとに結腸直腸がんのリスクが約18%増加する」とし、摂取を控えるよう推奨しています。

 

その主たる原因は、保存料なのどの添加物に由来します。

 

代表的な添加物として亜硝酸塩がありますが、この物質が体内のメチルグアニンと反応するとニトロソアミンなどの化合物が生成されます。

 

ニトロソアミンはかねてから発がん性が指摘されており、大腸がんなどの原因と考えられています。

 

また、加工肉を高温調理することで発がん性の複素環式アミンと多環芳香族炭化水素などの生成が促されるなど、摂取しないに越したことがない製品です。

 

前置きが長くなりましたが、今回はそんな加工肉や赤身肉と病気についての研究がテーマです。

 

参考記事)

Eating 30% Less of One Type of Meat Could Prevent Future Type 2 Diabetes(2024/07/11)

 

参考研究)

Estimated effects of reductions in processed meat consumption and unprocessed red meat consumption on occurrences of type 2 diabetes, cardiovascular disease, colorectal cancer, and mortality in the USA: a microsimulation study(2024/07)

 

 

加工肉を減らすことで病気のリスクも減少する

 

エディンバラ大学とノースカロライナ大学の研究から、加工肉の摂取を減らすとがんや2型糖尿病などのリスクが低減するという結果が示唆されました。

 

本研究では、加工肉のみならず、赤身の肉とその両方を摂取した場合の、がんや生活習慣病に関連する死亡率の分析が行われました。

 

今後10年間のシミュレーションでは、加工肉の摂取量を30%減らし、週に約61グラム程度まで消費を抑えることで、352,900人の2型糖尿病、92,500人の心血管疾患、53,300人の大腸がん、その他あらゆる原因による16,700人の死亡を防ぐことができることが示唆されています。

  

牛ひき肉やサーロインなどの未加工の赤身肉と比較しても、加工肉は、心血管疾患、2型糖尿病、大腸がんなどの一部の癌のリスク増加とより明確に結びついていることも報告されています。

 

しかし、未加工の赤身肉でさえも、長期的に摂取すること健康的でない可能性があるという研究もあるため、加工肉を赤身肉に切りかえるというのもリスクが伴うことにも注意が必要です。

 

また、研究者は、米国での加工肉の消費量が1日約29グラムであるのに対し、加工されていない赤身肉が1日約46.7グラムで消費されることを発見しました。

 

このデータと8,665人の公衆衛生と栄養データを使用して、米国2億4200万人以上の成人の「マイクロシミュレーション」を作成しました。

 

(下図:マイクロシミュレーションの結果)

左から2型糖尿病、新血管疾患、大腸がん

(薄い緑=未加工の赤身肉を30%減、緑=加工肉30%減、濃い緑=その両方を30%減削減)

 

このグラフは、両方の肉(合計8.7グラムの加工肉と14グラムの加工赤肉)を30%削減すると、10年間で2型糖尿病の症例が100万件以上減少し、心血管疾患の症例が382,400症例が減少し、大腸がんの発生が84,400件減少し、全死因死亡が62,200人減少する可能性があることを示唆しています。

 

前置きで述べたWHOの報告や欧州疫学ジャーナルに掲載された2021年のメタアナリシスでは、毎日50グラムの加工肉を食べると、大腸がんのリスクが18%増加することが分かっており、アメリカ心臓協会は、加工肉を週に約100グラム、または1日約14グラムに制限することを推奨しています。

 

しかし、消費と慢性的な健康への影響に関連する多くの調査結果が現れてきたにもかかわらず、米国の加工肉の全国摂取量は過去20年間で減少していません。

 

糖尿病が今日の米国の人口のおよそ12%、65歳以上の人のおよそ30%であることを考えると、加工肉の消費を抑えることは、何百万人もの人々が今より健康的な生活を送るのに役立つ可能性があります。

 

ホットドッグやハンバーガーなどによく使われる加工肉は、アメリカの食文化を象徴する食べ物でもある一方、米国と比べると日本人の加工肉の摂取量は比較的低い傾向にあります。

 

一部の人にとってはこういった食べ物の制限に抵抗があるかもしれませんが、将来の健康を考えると、手にとるお肉について一度考えてから購入するようしたほうがいいかもしれません。

 

この研究はThe Lancet Planetary Healthにて詳細を確認することができます。

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