デスクワーク(作業)は座ってするもの……。
先進国の人々は、デスクワークや勉強など1日平均9~10時間を座って過ごしていると言われています。
日本における学校教育でも、授業の多くは“座学”と呼ばれるだけあって、席に座りながら学ぶ場合がほとんどです。
座って授業を受けさせることは、立つことによって注意力が散漫になることを避けたり、安定した状態で字を丁寧に書く練習になるな、先生から見ると統制が取りやすいなどのメリットがあります。
しかし、この習慣は常に必要ではありません。
時には立って勉強することで、眠気を覚まして集中力をUPさせたり、座っているときよりも脳の認知機能が向上したりといった効果を得ることができます。
そして、健康的にも大きな効果があることも……。
今回はそんな作業の姿勢と健康についての研究のお話です。
参考記事)
・Years of Sitting Can Be Deadly. Here Is an Easy Way to Beat The Odds.(2023/10/26)
参考研究)
座りっぱなしによる健康面のデメリット
ノルウェー・トロムソ大学が行った調査によると、1日12時間以上座っている人の死亡リスクが最も高いという結果が示されました。
研究では、ノルウェー、スウェーデン、米国の50歳以上の成人およ12,000人を対象に、ウェアラブルデバイスを装着し、日常生活における活動量と座位時間を追跡しました。
参加者は、2003年から2020年の研究期間中、学歴、アルコール摂取量、喫煙状況、心臓病、がん、糖尿病の既往歴なども健康要因を考慮し、少なくとも2年間(中央値は5.2年)追跡されました。
そのうち、合計805人の参加者が追跡調査中に死亡しました。
研究者らによる分析によって、1日12時間以上座っている人の死亡リスクが最も高いことが発見されました。(8時間座っている人より38%高い)
また、1日の身体活動時間が長いほど、座っている時間の長短にかかわらず、死亡リスクは一貫して低いことが分かりました。
例えば、1日の座位時間が10.5時間の人の場合は、毎日10分だけでも中等度から強度の運動をすると、死亡リスクが最大15%低下すると報告されました。
また、1日10.5時間以上の場合でも、毎日10分の運動をすることで死亡リスクが最大35%低下することが分かりました。
しかし、この分析には限界もあります。
研究チームは、数カ月あるいは数年にわたる身体活動や座位時間の変化が死亡リスクにどのように影響するかを評価することができませんでした。
また、この研究は50歳以上の参加者のみを対象としており、若い年齢層ではどのような結果になるのかは未知数です。
さらに、国による文化や生活習慣の違いが、研究間のデータの測定・分析方法に影響を与えた可能性も考えられます。
結局のところ、この研究は観察研究であるため、因果関係について確実な結論を出すことはできません。
しかし、この研究結果は、身体活動、座ったままの時間、死亡の関係について新たな知見をもたらすものと言えます。
過去の研究においても、運動をすることは長時間座ることによる健康リスクを相殺する可能性が示唆されています。
また別の研究でも、短時間の運動でもこのようなプラスの効果が示されています。
今回の研究では、22分の運動が最もリスクを低減させるという結果も示されています。
この22分間というのは1度の連続した運動ではなく、1日の中で行った身体活動の合計です。
階段を上るなど、日常生活の一部である運動も含まれています。
また別の研究では、週末にだけ運動する場合でも、1週間を通して活動するのと同様の健康効果が得られることが分かっています。
これまでの研究を総合すると、昼食時のちょっとした早歩きでも、階段の上り下りでも、あるいは自宅での短時間の運動でも、1分1秒が大切であることが示されています。
この研究の詳細はにて確認することができます。
コメント