降霊術と言えば世界中にその歴史が見られ、日本でもイタコが有名です。
その役割は占いや神事、お祓いなど多岐に渡りますが、祖霊や死者との交信することができるという噂も耳にします。
実際にそれが本当かどうかは別問題として、今回はそんな死者との会話をAIによって再現しようという試みについてのお話です。
AI技術の発達によって人間の様々な反応をプログラム化でき、ある一定以上のパターンを超えるとAIにも感情のようなものが出てくるのではないかとも言われています。
そういった亡き人の会話をAIによってプログラムすることで、あたかも生前のその人と会話しているようにみせる……。
そんな技術について、倫理的な視点から切り込んだ記事をまとめていきます。
参考記事)
・‘Digital necromancy’: why bringing people back from the dead with AI is just an extension of our grieving practices(2023/09/19)
デジタルネクロマンシー
デジタルネクロマンシーは、死者の顔や表情、会話パターンをAI技術によってプログラムする技術のことです。
この技術を巡る議論は、ブルース・リー、マイケル・ジャクソンなどを蘇らせたビデオ・プロジェクション(ディープ・フェイク)の進歩によって広く認知されました。
当初は資金力のある映画会社や音楽制作会社が独占していましたが、生成AIの出現によって誰でもこれらの技術へのアクセスができるようになりました。
ChatGPTが世間に知られるようになる以前から、あるユーザーはOpenAIのLLM(大規模言語モデル)を使って、死んだ婚約者のメールやテキストをもとに会話をしていました。
その可能性を見て、Here AfterやReplikaのようなスタートアップ企業が、遺族向けに生成AIを利用したサービスを開始しました。
人々は長い間、死者を手元に残す手段として肖像画や遺品に感情的な価値を置いてきました。
偉人の肖像や作品、遺骨は、歴史が記録や保存のためにも流通しており、文化圏を超えた宗教的遺物もその一例でと言えます。
19世紀に写真が普及すると、故人を保存するための代替手段として急速に普及しました。
今日でも、私たちの多くは過去の愛する人の写真やビデオを持っており、思い出や慰めとして見返すことができます。
21世紀に入り、AIによって保存された故人を見返すことができる時代になりました。
この分野のAIスタートアップ企業も現れ、ソーシャルメディアや電子メールに書かれた文章、音声記録、写真、顧客から提出された愛する人のビデオを使い、故人と対話することを可能にするAIモデルを訓練しています。
デジタルアフターライフを広く研究しているデブラ・バセット氏は、「このAIの使用に反対する人たちの中には、生き返った死者が生きているときには言わなかったことを言わされ、代わりに誰かの台本を演じているのではないかと心配している人もいる」と、故人のゾンビ化を懸念しています。
記事を編集したジョー・アデトゥンジ氏は、そういったこともケースバイケースで考えることが必要だと述べており、自らが危機に瀕したとき、故人がかけてくれた言葉や、彼らの生き様を思い返すことなど、死者と会話することは常に私達が行っていることであるとしています。
個人的にはこういった技術の発達は良いことだと考えます。
エスカレートすると、かつてAIによって生成された故人の言葉に寄りすぎて正常な判断ができなかったり、日常生活に支障をきたす場合があります。
歴史的に見れば、リバイバル運動のように悪用されてしまうことや、降霊術的なことを利用した詐欺師も現れるでしょう。
故人の言葉はあるときは助けになり、あるときは自分を縛る鎖にもなります。
そのとき最終的にどう判断するかは、現世に残された自分自身です。
技術を使うにはそれなりの学びや思考力が必要だと考えながら、新時代の技術と付き合っていくと良いかもしれませんね。
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