今から約5億年前、カンブリア紀と言えば生物多様性の象徴として有名な時代です。
アノマロカリスなどの節足動物が海を支配し、既に弱肉強食の世界が広がっていたと考えられる時代です。
今回はそんな古代の生物についての記事です。
最近発見された新種の古生物は背中に手裏剣を背負っていたようです。
参考記事)
・500-Million-Year-Old Worm Named After Giant Sandworms in Dune(2023/08/09)
参考研究)
・Annelids from the Cambrian (Wuliuan Stage, Miaolingian) Spence Shale Lagerstätte of northern Utah, USA(2022/12/19)
シャイフルディア・シュリケニ
コロンビア大学をはじめとする米独の研究チームは、ユタ州北部とアイダホ州南部にまたがる地層(スペンス頁岩)から新種の古生物の化石を発見したことを発表しました。
化石はおよそ約5億500万年前のカンブリア紀のものとされており、アノマロカリスやオパビニアなどが生息していたのと同じ頃だとされています。
発見された生物は手のひらに収まる程度の大きさで、背中には星型の硬い剛毛が生えていたとされています。
映画「Dune 砂の惑星」に登場するシャイ・ヒューリッド・サンドワーム(Shai-Hulid sandworms)と手裏剣のような剛毛を名前の由来として、“シャイフルディア・シュリケニ(Shaihuludia shurikeni)”と名付けられました。
発見当初、岩石に放射状の刃のような形が残っていたため、専門家たちは自分たちが発見したものが一体何なのか確信が持てませんでした。
しかし、分析を進めた結果、研究者たちはその刃状のものが鉱物などではなく動物の一部であることに気づきました。
ドイツ国立自然史博物館の地生物学者ユリアン・キミッヒ氏は、「軟組織のほとんどが酸化鉄の塊として保存されていることから、この生物が死んで化石化するしばらくの間、腐敗していたことが推測される」と、化石になる経緯が特殊であることを述べています。
研究チームはこの発見をより明確にするために、走査型電子顕微鏡やエネルギー分散型X線光分析など様々な技術を駆使し、さらなる解明を試みています。
研究者たちが化石の宝庫と称するスペンス頁岩は、これはまで棘皮動物や有茎濾過食動物らさまざまな無脊椎動物が保存されています。
しかし、ミミズやヒルなどの環形動物の化石は、カナディア属に分類された一種のみが発見されるにとどまっていましたが、今回のシャイフルディア・シュリケニの発見によって、スペンス頁岩はこれまで考えられていた以上に多様性のある地層だと考えられるようになっています。
この研究によって、同じ地域で発掘された別の化石を再分類することができ、カンブリア紀のこの一帯の海洋生態系は、三葉虫や腕足類、軟体動物そして初期の節足動物によって支配されていただろうと予想されています。
この研究は、Taylor&Francis Onlineにて確認できます。
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