生物科学

【研究】地球上で最初の捕食者に関する研究【要約】

生物

 

我々の祖先である真核生物は、およそ8億年前の紅藻類(水生生物)の増殖がきっかけとなり、トニアン期(約10億〜7億2000万年前)を境に現れ始めたと考えられています。

 

その後のいわゆるカンブリア爆発を期に、生物が多様性を獲得し始めたとされ、大量絶滅を繰り返しながら各生物が進化してきました。

 

今回はそんな生物の根本に迫る研究の紹介です。

 

生物界で最も古い捕食者を見つける手がかりが発見されたかもしれません。

 

参考記事)

These Primordial Organisms May Have Been The First Predators on Earth(2023/06/09)

 

参考研究)

Lost world of complex life and the late rise of the eukaryotic crown(2023/06/07)

 

 

世界最古のプレデター(捕食者)

Artistic interpretation of a group of early eukaryotes hanging out over a microbial mat. (Orchestrated in MidJourney by TA 2023)

 

古代の岩で見つかった分子の痕跡は、10億年以上前の海で繁栄した初期の生命体を明らかする手がかりになります。

 

近年見つかったおよそ16億4000万年前の岩石からは、植物、動物、菌類の出現前の低酸素の世界における地球上の支配者のサインが残されていました。

 

オーストラリア国立大学の古生物学者ヨッヘン・ブロックス氏とベンジャミン・ネッターハイムス氏らは、この岩石に含まれる生物のグループ“プロトステロール生物相”と名付けました。

 

彼らは世界最高の捕食者であり、当時の海で繁殖していた豊富な微生物を食べていた可能性があります。

 

そして彼らは地球上の全ての真核生物の祖先であるように見受けられます。

 

ネッターハイムス氏は、「16億年前の岩で検出されたプロトステロール生物相の痕跡は、これまで見つかっていた12億年前の真核生物の祖先より前に繁栄してきたことを示しています」と述べ、私たち人間の生物の祖先の中でも極めて古いグループであることを説明しています。

 

これらの古代の生物は、世界中の海洋生態系に豊富に存在し、おそらく生物の歴史でも長い生態系を作ってきたと考えられています。

 

古生物学者たちは、長い間これらの初期の真核生物に注目してきましたが、古代の生物の同定は困難を極めます。

 

彼らが生きてから10億年以上経っているので、彼らが残した劣化した痕跡からでは正確な年代を判定することが難しいからです。

 

今回発見された16億年前の岩から、1994年にノーベル賞受賞者の生物学者コンラート・ブロッホによって発表された、真核生物のバイオマーカーであるステロイドを探しました。

 

ほぼ全ての真核生物がコレステロールなどのステロイドを構成することができます。

 

ブロッホが予測したステロイドを伴った原子化合物は、その構造が現代のステロール生合成経路の初期の中間体を表すため、これまで何十年もの間見落とされていました。

 

今回の研究では、10億年前の水路から採取された他の数十の岩から、同様の化石分子でにじみ出ていることを発見しました。

 

面白いことに、これらの生き物が残した痕跡は、8億年前頃から化石の記録として現れなくなりました。

 

藻類や真菌が現れ始めるのと同時期です。

 

最初の生物は約7億年から6億年前に出現したと考えられています。

 

プロトステロール生物相の衰退と他の生物の出現はトニアン変換として知られており、地球の生態系が受けた最も深刻な変化の一つです。

 

ドイツの地球科学センターの古生物化学者クリスチャン・ホールマンは言います。

 

この発見は、真核生物の現在の分子記録の拡張だけではありません。私たち人間を含むすべての現代の神格生物の共通の祖先が、現代と同じステロールを生産できる可能性が高いことが考えられます」と述べ、私達人間を始めとする生物の祖先をより詳細に明らかにする可能性を示唆しています。

 

 

まとめ

・16億年前の化石から、真核生物が構成するコレステロールが検出された

・これまで最古とされた12億年前の真核生物の痕跡よりもさらに古いものになる

・世界最初の捕食者の記録を更新する可能性が高い

 

生き残るために捕食するもの、生き残るために捕食されないようにするもの、それぞれの多様性が混ざりあって現代に繋がっているわけですが、この発見はその根本を解き明かすきっかけになるかもしれませんね。

 

古生物の時代区分にカンブリア紀があります。

 

光を利用するために目が発達したことで、その時代を境に爆発的な生物多様性が生まれたと考えられる時代区分です。

 

その時代の生物が化石化したものが発見されたため、数多くの種類の生物がいた事が明らかになっていますが。

 

現在の見解では、カンブリア“爆発”のようにいきなり多様性を獲得したというのは少し違うのでないかと考えられています。

 

実際は先カンブリア紀(冥王代、太古代、原生代をまとめた自体)とそれより前の時代の生物がじわりじわりと進化していったことされています。

 

今回の発見もそんな生物の進化の糸口を見つける大きな一歩になるかもしれません。

 

私人間が今後どのように進化するかは定かではありませんが、過去の生物の進化や絶滅を知ることは、今後私たちがどのような多様性を失い、獲得するのかを知るきっかけになると思います。

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