寄生虫と言えば、知らない間に宿主の体表や体内にとりつく生き物です。
有名なところだと、最近急増しているアニサキスが思い当たる方もいるのではないしょうか?
胃や腸に侵入して激痛を与えるこの生物に苦しんだ人もいるでしょう。
こういった寄生虫とその宿主は、共に繁殖する中で奇妙な関係性が築かれていったことが過去の研究から分かってきました。
今回はそんな寄生虫と生物の関係についてのお話です。
2つのパートに分けて説明します。
今回はそのパート①です。
参考記事)
・Parasites May Be Hijacking Evolution on Planet Earth(2023/06/08)
参考研究)
・Parasites and the hygiene hypothesis(2004年)
寄生虫と“適応的宿主操作仮説”
私たちは太陽光をエネルギー源とすることができませんが、太陽の光を得て育つ食物をエネルギー源とすることはできます。
肉食動物は食物をうまく消化することができないため、他の動物が植物を食べるのを待ち、その動物を食べます。
このように、ある生物は他の生物のエネルギー処理能力を奪う形で命を連鎖させています。
つまり、私たちは何らかの形で他の生物に頼り切っているのです。
この考え方を究極にまで突き詰めた生物がいます。
寄生虫です。
寄生虫の成虫は宿主の体を乗っ取り、利益になるような行動を取らせます。
オーストラリア国立大学の寄生虫学者アレックス・マイヤー氏は、「科学文献によると、この仮説は適用的宿主操作仮説と呼ばれている」と述べ、寄生虫と宿主についての関係について説明しています。
マイヤー氏によると、寄生虫がより頻繁に広く分布し、より多くの宿主に寄生できるように宿主の性質を変化する可能性があるとされています。
トキソプラズマ・ゴンディは、ネコ科の動物の中でのみ繁殖することができます。
感染猫の糞便から排出されたトキソプラズマは、様々な経路で豚や鶏、牛などの人間が食べるような動物にも感染し、最終宿主である猫を目指して感染を連鎖させていきます。
中でも興味深いのは、トキソプラズマ・ゴンディが感染した生き物は猫に遭遇しやすいような行動をとり、生命に関わるような行動を取るほどの変化が見られることが研究で分かっています。
トキソプラズマ・ゴンディが、実際に宿の子を操作しているかどうかはまだ調査中ですが、この寄生虫の他にも多くの寄生虫が様々な方法で宿主を操作しています。
そして、今日でもその方法は分かっていません。
寄生虫は非常に複雑で、回りくどい方法で繁殖を試みようとしていますが、その効果は絶大なようです。
ライフサイクル全体を通して一つの宿主に固執する寄生虫もあれば、複数の宿主を必要とするものもいます。
ここでは、より複雑なライフサイクルの仕組みについて紹介します。
寄生虫は繁殖し、宿の人呼ばれる場所にオーシスト(寄生虫の卵のような状態)を産みつけます。
卵や幼虫はその後最初の中間宿主に取り込まれます。
そこで寄生虫は発育を続け、ここから成虫になるか、次の中間宿主に移動して成長を完了させます。
完全に成長し、繁殖する準備ができたら、最終的な宿主に戻る必要があります。
そこで登場するのが適応的宿主操作です。
寄生虫が宿主を操作する最も明白な方法は、宿主の体を何らかの方法で変化させることです。
リベイロイア(Ribeiroia ondatrae)は、カエルの変異性扁形動物で、文字通りカエルを変異させてしまう寄生虫です。
帰るの後は私をターゲットにしており、この寄生虫に感染したカエルは役に立たない手足を生やしてしまいます。
また、ロイコクロリディウム(Leucochloridium paradoxum)と呼ばれる扁形動物は、カタツムリの眼球に入り込み、膨張し、脈動し、他の動物に見つかりやすいような色と動きを作り出します。
※閲覧注意【ロイコクロリディウムに感染したカタツムリ】
この2種類の寄生虫の最終的なターゲットは、カエルでもカタツムリでもありません。
彼らは中間宿主を他の動物に食べさせ、最終宿主である鳥類や哺乳類の体内で繁殖することが目的です。
特にロイコクロリディウムに感染したカタツムリは、鳥に見つかりやすいような開けた場所に移動するなど、他のカタツムリでは取らないような行動をとります。
エビを中間宿主とする別の寄生虫も、エビの光に対する反応を逆転させ、最終宿主であるコイに捕食されやすく行動を変化させたりします。
こういった事例から、より多くの宿主に寄生できるように宿主の性質を変化させる“適応的宿主操作仮説”が説明できるのです。
(次回記事へ続く……)
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