以前の記事にて、オートファジーについての研究結果をまとめました。
空腹時のストレスによって寿命を伸ばす遺伝子(サーチュイン遺伝子)が活性化され、老化防止などのエイジングケアにも良い影響を与えると考えられています。
さて今回は、健康と長寿に関する最新の研究についての話題です。
とある酵素がアンチエイジングに深く関わっているかもしれません。
NEW ATLASに2023年3月14日付けで掲載された記事からまとめていきます。
参考記事)
Wonder enzyme may hold the key to longer, healthier lives
参考研究)
Increased alcohol dehydrogenase 1 activity promotes longevity
アルコール脱水酵素が長寿に関係
バージニア大学の研究者は、アルコール脱水素酵素が体に有害なグリセロールとグリセルアルデヒドを除去することで、寿命を伸ばすだけでなく、アンチエイジングに繋がるメカニズムを発見しました。
これまでの研究では、ワーム、マウス、ヒトにおいて、寿命を延ばすための一要因として“オートファジー”が考えられてきました。
オートファジーは、一種の飢餓状態に用いることによって細胞が活性し、壊れた古い細胞を新しく更新することができる仕組みです。
今回の研究では、オートファジーを全く増加させることなく、ワームを健康的な状態で寿命を50%伸ばすことに成功しました。
AMAR
彼らが発見したメカニズムはAMAR(Alcohol and aldehyde dehydrogenase Mediated Anti-aging Response)と名付けられています。
アルコールとアルデヒド脱水酵素を介したアンチエイジング応答と名付けられたこの反応は、adh-1と呼ばれる特定の遺伝子の反応を促し、老化防止を促進できるというものです。
遺伝子の反応によって、アルコールデヒドロゲナーゼを多く生成し、グリセロールとグリセルアルデヒドによって引き起こされる毒性を防ぐことができました。
その結果、adh-1が活性化されたワームは、より長くより健康的に生きることができました。
これに続く研究では、酵母に対しても同様に寿命を長くする効果があることが分かりました。
また、カロリー制限をされたマウス、ブタ、アカゲザル、及びヒトの遺伝子活動を調べた際においても、adh-1が活性化されていることが確認できました。
研究者の見解
科学者たちは、脂肪の副産物であるグリセロールとグリセルアルデヒドが年齢を重ねるにつれて蓄積し、時間の経過とともに多くの健康被害を引き起こす可能性があると考えています。
AMARは、有害な副産物の蓄積に対抗して分解し、健康寿命を延ばす効果があることを示しています。
また、体重増加に対抗して減量を促進する能力があることも分かりました。
研究の第一人者であるO’Rourkeは「実際この反応は酵母から高等植物、人間まで種を超えて見られます。adh-1を活性化すると、動物が好きなだけ食べている場合でも、痩せ型になっていきます」と述べています。
チームは現在、酵素の遺伝的活性化がマウスの寿命を延ばすかどうかをテストし、次にヒト培養細胞を用いたin vitroを実施して、adh-1の活性が老化の細胞のアクアの減少や遅延をさせるかどうかについて研究を進めています。
※in vitro=試験管や培養器などの中で生体の体内と同様の環境を人工的に作り、その中にある細胞に対して薬物の作用を調べる試験のこと
まとめ
・AMARは、長寿とアンチエイジングに影響を及ぼす
・AMARは、グリセロールを代謝することによって、少なくとも部分的な寿命を延ばすことが明らかになっている
・AMARは、マウスとヒトの老化防止に良い影響を与える可能性がある
AMARは、遺伝子を調整することで人為的に発現させることが可能なようですね。
また、酵素によって活性化した遺伝子が、寿命の延長だけでなく、肥満や筋肉の喪失、神経変質など華麗に伴う病気に対しても良い影響があると考えられ、今後の健康医学の大きな進歩になるとして期待が持たれています。
今後、作用を発現させる仕組みが実用化された場合、人生100年時代どころか、“人生一と半世紀!”などと呼ばれる日が来るかもしれませんね。
現在の私たちがこの作用の恩恵を受けるためには、やはりオートファジーが手っ取り早そうです。
日常でオートファジーをコントロールしやすい方法は関連記事(オートファジーで空腹を幸福に!)にて紹介しているので、気になった方は覗いてみてください。
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