前回記事
この記事では以前概要をまとめた、【要約】行動経済学ってそういうことだったのか!【紹介】の内容をさらに深堀りながら復習していきます。
著書で紹介されている“プロスペクト理論”や“バイアス”などの用語を中心に1、2テーマずつまとめようと思います。
今回のテーマは“自信過剰バイアス”です。
前回までの記事では「未来の自分なら大丈夫だろう!」という憶測から、先延ばしにしてしまう心理をまとめました。
このような心理には、後の報酬よりも目先の利益を優先してしまう傾向があるのと同時に、根拠のない自信が関係しているといいます。
今回のテーマそんな自信による認識の歪みである“自信過剰バイアス”です。
自信過剰バイアス
自信過剰バイアスは、自らの能力を過大に評価してしまう心理状態を言います。
もしあなたがフィットネスクラブを利用するとして、「月7,000円で使い放題」か「10回で1万円の回数券」のどちらかお得な方を選択するとしたらどちらを選びますか?
イタリアの経済学者ステファノ・ディラヴィーニャ氏らによる研究調査によると、損をしていたケースが多いのは「月7,000円で使い放題」を選んだ場合だそうです。
参考)Paying Not to Go to the Gym
研究ではアメリカのフィットネスクラブの入会者7,752人を3年間に渡って調査しました。
その結果、月7,000円を選んだ人たちの平均利用回数は月4.3回ということが分かりました。
つまり1回の利用で1,700円分支払っていることになります。
10回で1万円の回数券を選んだ場合なら、1回の利用につき1,000円で済みますね。
これは人が「未来の自分なら大丈夫だろう」と先のこと軽く見る傾向にあると言えます。
つまり自分なら月7回以上なら運動できるだろうと自信過剰になっているわけです。
しかし実際は“今日”ジムに行くのがめんどくさくなってしまい、結局先送りにして損をするという結果に……。
誰しも似たような経験があるのではないでしょうか?
だから“今日だけでもできる範囲で頑張る”という小さなハードルを繰り返すことで、習慣化することが大切であることが分かりますね。
“男の子”は自信過剰
女性と男性では、男性の方が自信過剰の傾向が強いそうです。
これは株式を取引する中でも現れてくることが明らかになっています。
経済学者のブラッド・バーバー氏とテランス・オーディーン氏らは、アメリカの3万6,000世帯の株式取引データを6年間に渡り調査しました。
参考)
BOYS WILL BE BOYS: GENDER, OVERCONFIDENCE, AND COMMON STOCK INVESTMENT
及び
Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors
調査の結果分かったことは大きく分けて2つ。
・男性は女性より1.5倍ほど取引高が多いこと
・取引コストを含めた収益率は女性の方が0.94%ほど高いこと
男性の方が取引量が多いということは、自分の判断に自信があることを表しているそうです。
手数料を差し引いても儲かると考えたからこそ、売ったり買ったりと積極的な取引が見られると言っています。
では実際のところ売り買いした人たちは儲けの効率はというと。
研究の推計によると、男女ともに1年間放置していた方が儲かっていたそうです。
放置している方が儲かる……。
頑張って取引したのに、効率的ではないというのは興味深いです。
フィデリティ証券の投資背成績のデータにおいても、1位はすでに亡くなっている人、2位は運用していることを忘れている人ということが明らかなっていることも、データの面白さに拍車がかかりますね。
積極的に取引をするのは、自信過剰バイアスによって「儲かりそうだ」という過大評価からくるものと分かります。
まとめ
・自信過剰バイアス=自らの能力を過大評価してしまう心理状態
・未来の自分に頼ろうと考えると損をしているかもしれない
・自信過剰バイアスは男性の方が強い
以上、自信過剰バイアスについてのまとめでした!
ここまでの印象では自信過剰なことが悪いことのように聞こえてしまいますが、あくまで“”そんな傾向があるから気を付けた方がいいと注意するくらいで良いかと思います。
たとえ根拠の無い自信だったとしても、そう振る舞える男性は女性からも魅力的に見えるという研究結果もあります。
また自信過剰な人は、新しいプロジェクトなどにも積極的な傾向があり、イノベーションを生むきかっけにもなりえるとも言われます。
自信過剰が身を滅ぼさないよう上手く付き合っていけると、もっと生きやすくなるかもしれませんね!
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