17世紀、ベーコンやロックなど同世代の人物に、経験論や大陸論とは少し違った思想を持つ人物たちがいました。
トマス・ホッブズとジャン・ジャック・ルソーです。
絶対王政やフランス革命などに大きな影響を与えることになる“社会契約説”の提唱者です。
今回はそんな二人の内、ホッブズの社会契約説について触れていきます。
トマス・ホッブズの社会契約説
ホッブスは、人が自然のままに生きていた頃は常に闘争状態だったと主張しました。
獲物の動物を取り合うことから始まり恋人を巡る争いなど、いつも争いの中にあったと言います。
この状態を彼は“万人の万人に対する戦い(the war of all against all)”と表現し、自然状態の中では人間や自然法は不完全であると考えました。
では人間が平和に暮らすにはどうすれば良いのでしょうか?
ホッブズは生まれながらに持っている自然権を、“コモンウェルス(common wealth)”に渡すべきであると主張しました。
つまり社会契約説です。
コモンウェルスという言葉は、連邦や国家という意味を持ちます。
人間の上位に個々の主張を力ずくで抑え込む権力を持つ者がいれば、殴り合いは収まり平和な状態をつくることができると考えたのです。
この考えには、人間の個人の能力には大差がないことから闘争が続いてしまうという思想が根底にあります。
リヴァイアサン
この闘争を押さえつける強大な権力(コモンウェルス)を、聖書に登場する海の怪物になぞらえ“リヴァイアサン”と名付けました。
そして、神を持ち出さず如何に社会契約が可能かを主題とした書物が、トマス・ホッブズの主著である“リヴァイアサン”なのです。
リヴァイアサンと王権神授説
ところがこの考え方は、王の支配権は神から授けられた絶対の力であるという“王権神授説”を論理付ける結果になってしまいます。
リヴァイアサンが著される前、イングランドとスコットランドの連合体制であるストゥアート朝を開いたジェームズ1世(在位1603~1625年)は、王権神授説の信奉者でした。
彼を継ぎジェームズ1世の思想のもとで育ったチャールズ1世(在位1625年~1649年)は、議会の同意を得ない課税や弾圧によって国民の強い反感を募らせていきます。
1642年、結果その暴政によって三国戦争(ピューリタン革命)を引き起こしてしまい、終いには処刑されてしまうのです。
リヴァイアサンはこの騒乱の最中に発刊されたため、チャールズ1世の絶対王政に論理的な根拠を与えたとして批判されてしまったのです。
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