前回までの記事↑にて、カール・マルクスの一生についてまとめていきました。
若い内から社会の変革を目にし、ジャーナリストとして政府に意見した男は、母国を追われることになっても社会経済を研究し続けました。
激動の19世紀ヨーロッパを生きた彼が導き出した答えとは一体何だったのか…。
今回から彼が生涯を通してまとめた“資本論”に迫っていきます。
そもそも資本論とは
資本論を簡単にいうと、資本主義を徹底的に分析し問題点を洗い出した書物です。
もっと簡単にいうと“資本主義に対する批判本”です。
産業革命以降、人の働き方は大きく変わりました。
農作物から衣服まで生活に必要なものでさえ、より効率的に、そして大量に作ることができるようになりました。
しかし当時の人たちが皆豊かになったかというと、そうではありません。
そこでは資本を持っている一部の人間は富み、労働者は消耗品のように使い捨てられるという構図が出来上がっていました。
なぜ労働者が搾取されるのか、資本とは何なのか、価値とは何なのか…。
マルクスはそんな社会構造を徹底的に研究し、“資本論”としてまとめ上げたのです。
資本主義の本質は現代になっても変わっていません。
逆にいうと資本とは何なのか、価値とは何なのかを理解できれば、より良く生きるためのきっかけにもできます。
自分がこの“資本論”をまとめるにあたって、少しでも誰かの人生に役立ってくれればと思います。
それではいよいよ本題に入っていきます。
まずは資本論を語る上では欠かせない商品と価値についてです。
“使用価値”と“価値”
マルクスは、資本主義社会ではすべての商品に“使用価値”と“価値”が存在すると言っています。
【使用価値】
“使用価値”とは何らかの形で人の役に立つものです。
例えばお米は食料として食べることができ、使い方次第で様々なもの加工もできます。
これはお米に使用価値があると考えて良いです。
逆に、同じお米でも時間が経って腐ってしまったお米は、人にとって役に立たないことから使用価値がないと言えます。
【価値(交換価値)】
“価値”とはその商品が他のものと交換できるかどうかで決まります。
例えばお米と服が交換できるものとします。
服一着を手に入れるために10kgのお米が必要とすると、このお米10kg分には服一着分の“価値”があると考えることができます。
これが“使用価値”とは別に存在する“価値”です。
これを交換価値とも言います。
価値は不安定?
ここで価値の不安定さについて考えてみます。
ある人は一着の服を10kgのお米と交換してくれますが、ある人は同じ服でも20kgのお米がないと交換してくれないと言います。
このように人によって価値が変わる事も考えられますよね。
しかしマルクスは商品となるべきものには価値を決める確かなものがあると主張しました。
それは商品を生み出すのにかかった労働の量によって決められるといいます。
商品の価値=労働の量
例えば、一着の服を作るのに誰かが丁寧に手縫いした服と、誰かが機械を使って量産した服があるとします。
丁寧に手縫いした服に1万円は出せるとしても、機械で量産した同じ服に1万円は出せません。
これは服という商品を生み出すのに使った労働の量が違うことが分かっているからです。
そしてマルクスは、商品を生み出すのに使う労働には二つの性質があるとも言っています。
それは、その商品が“役に立ように作れるか”と“どれだけのエネルギーを使ったのか”です。
【役に立つように作れるか】
役に立つように作れるかを具体的有用労働と言います。
(具体的有用労働という言葉はそんなに気にしなくて大丈夫です。)
服でいうと、日や寒さから身を守れる、デザインがオシャレ…などの使用価値を生み出すため労働のことです。
服によっては、ただ作れば良いものだったり技術が必要になったりと、商品を生み出すための“質”が重要になります。
【どれだけのエネルギーを使ったか】
どれだけのエネルギーを使ったかを抽象的人間労働と言います。
(抽象的人間労働という言葉もそんなに気にしなくて大丈夫です。)
つまり人間がどれだけ頭を使ったか、どれだけ体を動かしたかです。
そしてその量は時間によって決められます。
これらのことからマルクスは、“商品の価値を決めるのは労働の量である”と結論付けています。
まとめ
・商品=使用価値+価値(交換価値)
・使用価値=役に立つ能力、価値=他のものと交換できる能力
・商品の価値=労働の量で決まる
・労働=役に立つように作れるか+どれだけのエネルギーを使ったか
ここまで資本論における商品と価値についてまとめました。
ちなみに使用価値があっても交換する価値がないものは商品になりません。
一生懸命自分の好きなキャラクターだけをプリントした服は、自分にとっての使用価値はありますが、他人にとっては必要のないものです。
使用価値と価値の両方があって初めて成立するのが商品なのです。
最後の補足として…、労働の量が価値を決めると言っていますが、ただダラダラと長い時間をかければ商品の価値が上がるのかというとそうではありません。
商品に必要な労働の平均(質・量・時間)によって変わります。
それは技術革新や分業によって変わってくる要素でもあるので、技術が進歩していく現代でも本質は変わらないとマルクスは言っています。
以上、商品と価値についてのまとめでした!
次回は貨幣の登場についてです。
商品と貨幣が結びつくことで起こる不思議な現象に迫ります。
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